朴槿恵中国を軟らかく非難、米オバマ北朝鮮に触れず、中露、韓国に自制を要求 (2016年1月13日 「朴槿恵国民向け談話」、「オバマの一般教書演説」「中国外交部定例記者会見」「TASS」)
コメントでも少し触れたが、13日、韓国大統領が「国民向け談話」とそれに続く記者とのやりとりがあった。同時並行してオバマが一般教書演説をしており、うっかりそちらの生中継をみていたので、韓国大統領の演説部分は聞き逃してしまった。しかし、事前にテキストが公開されていたので、この部分については、それを読めばよかったので問題なかった。
オバマの演説を見ていたのは、北朝鮮の「水素弾」実験に何らかの言及があるのではないかと思ったからだが、直接的な言及は全くなかった。敢えて関連付けるなら、米国は最大の国防予算を計上する地球上で最強の国であるとした上で「如何なる国も米国とその同盟国を攻撃しないであろう。それは、それが彼らにとっての破滅の道であるということを知っているからである」と強調したことであるが、これに続く部分で「彼ら」を「中東(特にISIL)、中国、ロシア」としており、北朝鮮は含まれていない。北朝鮮の核実験についてオバマが一般教書演説で触れたのは北朝鮮の2012年の核実験を受けての2013年の演説が最後である。2014年と2015年は実験がなかったので触れなかったとしても、「보란듯이(これ見よがしに)」演説直前に実験をやられたにもかかわらず触れなかったのは、「戦略的忍耐」で無視を装いつつ、「核なき世界」を訴えたにもかかわらず、自分の在任期間に3回も核実験をやられたことに対する無策を米国内で突かれたくなかったからであろう。
The White House HP, Remarks of President Barack Obama – State of the Union Address As Delivered, https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2016/01/12/remarks-president-barack-obama-%E2%80%93-prepared-delivery-state-union-address
朴槿恵演説はというと、冒頭で北朝鮮の「水素弾」実験に触れ、中国に対して以下のように訴えている。
***********
北朝鮮の態度を変えさせることができるレベルの新たな制裁が含まれた最も強力な対北制裁決議案が採択されるようあらゆる外交的努力をしていくつもりです。
북한의 태도 변화를 가져올 수 있을 정도의
새로운 제재가 포함된 가장 강력한 대북 제재 결의안이
도출될 수 있도록 모든 외교적 노력을 다해 나갈 것입니다.
この過程で中国の役割が重要です。
이 과정에서 중국의 역할이 중요합니다.
中国は、これまで何回も北朝鮮の核を容認しないという意志を公言してきました。そうした強力な意志が実際に必要な措置に繋がらなければ、今後、5回目、6回目の追加核実験を防ぐことができず、朝鮮半島の真の平和と安定も保証することができないという点を中国もよく分かっていると思います。
중국은 그동안 누차에 걸쳐 북핵 불용의지를 공언해왔습니다.
그런 강력한 의지가 실제 필요한 조치로 연결되지 않는다면,
앞으로 5번째, 6번째 추가 핵실험도 막을 수 없고,
한반도의 진정한 평화와 안정도 담보될 수 없다는 점을
중국도 잘 알고 있을 것으로 봅니다.
その間、北朝鮮の核問題と関連し我々と緊密に連絡を取り合ってきたので、中国政府が朝鮮半島の緊張状況をさらに悪化させることはしないと思います。
그동안 북핵 문제와 관련해 우리와 긴밀히 소통해 온 만큼
중국 정부가 한반도의 긴장상황을
더욱 악화되도록 하지는 않을 것이라 생각합니다.
困難で大変なときに手を握ってくれるのが最上のパートナーです。今後、中国が安保理常任理事国として必要な役割を演じてくれるものと信じています。
어렵고 힘들 때 손을 잡아 주는 것이 최상의 파트너입니다.
앞으로 중국이 안보리 상임이사국으로서
필요한 역할을 해줄 것으로 믿습니다.
************************************
この部分を読むと、朴槿恵は「中国が北朝鮮の核開発を阻止するための必要な措置を講じていないじゃない」、「朝鮮半島情勢を悪化させたくないと中国は考えていると思っていたら、実際には悪化させているわよ」、「北京の戦勝記念日に『手を握った』のに、『困難で大変なとき』に握ってくれないの」、「安保理で強力な制裁決議を議論するときに、協力しないんでしょ」と言いたいのであろう。
確かに、戦勝記念日では崔龍海が邪険にされ、朴槿恵が厚遇を受けたが、あの扱いは中国経済に対する貢献度の序列でこそあれ、政治外交的なものではなかったのかもしれない。また、韓国は北朝鮮を中国が締め付ければ核開発を放棄するであろうと考えているようであるが、中国は核よりも北朝鮮の混乱、暴発を懸念しているのであろう。過去記事にも書いた(コメントだったかも)とおり、韓国は東北アジアの核ドミノと米国の核持ち込みで中国を揺すろうとしたが、今のところ効いていないようだ。
しかし、朴槿恵さん、北朝鮮、内政、経済問題を抱えて、随分疲れた顔をしていた。記者の経済関連の質問に対する答弁の中で「はぁっ」という感じでため息をついていたのがとても印象的で、「あと少しだから、頑張って下さいな」と声を掛けたくなった。
青瓦台、「대국민 담화 전문」、http://www1.president.go.kr/news/newsList2.php?srh[view_mode]=detail&srh[seq]=13956
さて、中国であるが、13日の「外交部定例記者会見」で朴槿恵演説を受けての質問が出されたが、中国が核拡散に反対し、北朝鮮の核実験に反対するという立場を繰り返した上で、中韓外相が電話会談をしたことを挙げながら、「中国は韓国やその他の関係国と共に、六者会談を通じて朝鮮半島の非核化を実現していく準備ができている」とだけ答えている。
一方、韓国にサードミサイルを配備することについては、「それぞれの国は自国の安全保障を追求する過程で、他国の安全保障上の利益も考えなければならず」、その意味において「朝鮮半島の状況は大変センシティブである」と述べている。
中国は、一貫して「六者会談」を強調しているが、その裏を読むと安保理制裁強化でこれ以上北朝鮮を圧迫するべきではないし、中国はこれまで通り(business as usual: against John Kerry's request)に北朝鮮と付き合っていくという意志の表れなのかもしれない。
Ministry of Foreign Affairs of the PRC, Regular Press Conference, http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/t1331350.shtml
ロシアであるが、韓露外務大臣間の電話会談で「北朝鮮による水爆実験に銃隊な懸念を表明する」が、「東北アジアの緊張を煽るような行動は自制すべきである」と述べたという。
ロシアも中国同様、北朝鮮の核実験には反対するが、北朝鮮を強く圧迫することで、不安定化させることは望んでいないようである。ウクライナとシリアでロシアは忙しいので、北朝鮮にはあまり関わりたくないということと、2015年、朝露関係が経済面で強化されたこともその背景にあるのだろう。
TASS, Lavrov asks Seoul to display restraint, avoid fanning tensions in Northeast Asia, http://tass.ru/en/politics/849165
オバマの演説を見ていたのは、北朝鮮の「水素弾」実験に何らかの言及があるのではないかと思ったからだが、直接的な言及は全くなかった。敢えて関連付けるなら、米国は最大の国防予算を計上する地球上で最強の国であるとした上で「如何なる国も米国とその同盟国を攻撃しないであろう。それは、それが彼らにとっての破滅の道であるということを知っているからである」と強調したことであるが、これに続く部分で「彼ら」を「中東(特にISIL)、中国、ロシア」としており、北朝鮮は含まれていない。北朝鮮の核実験についてオバマが一般教書演説で触れたのは北朝鮮の2012年の核実験を受けての2013年の演説が最後である。2014年と2015年は実験がなかったので触れなかったとしても、「보란듯이(これ見よがしに)」演説直前に実験をやられたにもかかわらず触れなかったのは、「戦略的忍耐」で無視を装いつつ、「核なき世界」を訴えたにもかかわらず、自分の在任期間に3回も核実験をやられたことに対する無策を米国内で突かれたくなかったからであろう。
The White House HP, Remarks of President Barack Obama – State of the Union Address As Delivered, https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2016/01/12/remarks-president-barack-obama-%E2%80%93-prepared-delivery-state-union-address
朴槿恵演説はというと、冒頭で北朝鮮の「水素弾」実験に触れ、中国に対して以下のように訴えている。
***********
北朝鮮の態度を変えさせることができるレベルの新たな制裁が含まれた最も強力な対北制裁決議案が採択されるようあらゆる外交的努力をしていくつもりです。
북한의 태도 변화를 가져올 수 있을 정도의
새로운 제재가 포함된 가장 강력한 대북 제재 결의안이
도출될 수 있도록 모든 외교적 노력을 다해 나갈 것입니다.
この過程で中国の役割が重要です。
이 과정에서 중국의 역할이 중요합니다.
中国は、これまで何回も北朝鮮の核を容認しないという意志を公言してきました。そうした強力な意志が実際に必要な措置に繋がらなければ、今後、5回目、6回目の追加核実験を防ぐことができず、朝鮮半島の真の平和と安定も保証することができないという点を中国もよく分かっていると思います。
중국은 그동안 누차에 걸쳐 북핵 불용의지를 공언해왔습니다.
그런 강력한 의지가 실제 필요한 조치로 연결되지 않는다면,
앞으로 5번째, 6번째 추가 핵실험도 막을 수 없고,
한반도의 진정한 평화와 안정도 담보될 수 없다는 점을
중국도 잘 알고 있을 것으로 봅니다.
その間、北朝鮮の核問題と関連し我々と緊密に連絡を取り合ってきたので、中国政府が朝鮮半島の緊張状況をさらに悪化させることはしないと思います。
그동안 북핵 문제와 관련해 우리와 긴밀히 소통해 온 만큼
중국 정부가 한반도의 긴장상황을
더욱 악화되도록 하지는 않을 것이라 생각합니다.
困難で大変なときに手を握ってくれるのが最上のパートナーです。今後、中国が安保理常任理事国として必要な役割を演じてくれるものと信じています。
어렵고 힘들 때 손을 잡아 주는 것이 최상의 파트너입니다.
앞으로 중국이 안보리 상임이사국으로서
필요한 역할을 해줄 것으로 믿습니다.
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この部分を読むと、朴槿恵は「中国が北朝鮮の核開発を阻止するための必要な措置を講じていないじゃない」、「朝鮮半島情勢を悪化させたくないと中国は考えていると思っていたら、実際には悪化させているわよ」、「北京の戦勝記念日に『手を握った』のに、『困難で大変なとき』に握ってくれないの」、「安保理で強力な制裁決議を議論するときに、協力しないんでしょ」と言いたいのであろう。
確かに、戦勝記念日では崔龍海が邪険にされ、朴槿恵が厚遇を受けたが、あの扱いは中国経済に対する貢献度の序列でこそあれ、政治外交的なものではなかったのかもしれない。また、韓国は北朝鮮を中国が締め付ければ核開発を放棄するであろうと考えているようであるが、中国は核よりも北朝鮮の混乱、暴発を懸念しているのであろう。過去記事にも書いた(コメントだったかも)とおり、韓国は東北アジアの核ドミノと米国の核持ち込みで中国を揺すろうとしたが、今のところ効いていないようだ。
しかし、朴槿恵さん、北朝鮮、内政、経済問題を抱えて、随分疲れた顔をしていた。記者の経済関連の質問に対する答弁の中で「はぁっ」という感じでため息をついていたのがとても印象的で、「あと少しだから、頑張って下さいな」と声を掛けたくなった。
青瓦台、「대국민 담화 전문」、http://www1.president.go.kr/news/newsList2.php?srh[view_mode]=detail&srh[seq]=13956
さて、中国であるが、13日の「外交部定例記者会見」で朴槿恵演説を受けての質問が出されたが、中国が核拡散に反対し、北朝鮮の核実験に反対するという立場を繰り返した上で、中韓外相が電話会談をしたことを挙げながら、「中国は韓国やその他の関係国と共に、六者会談を通じて朝鮮半島の非核化を実現していく準備ができている」とだけ答えている。
一方、韓国にサードミサイルを配備することについては、「それぞれの国は自国の安全保障を追求する過程で、他国の安全保障上の利益も考えなければならず」、その意味において「朝鮮半島の状況は大変センシティブである」と述べている。
中国は、一貫して「六者会談」を強調しているが、その裏を読むと安保理制裁強化でこれ以上北朝鮮を圧迫するべきではないし、中国はこれまで通り(business as usual: against John Kerry's request)に北朝鮮と付き合っていくという意志の表れなのかもしれない。
Ministry of Foreign Affairs of the PRC, Regular Press Conference, http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/t1331350.shtml
ロシアであるが、韓露外務大臣間の電話会談で「北朝鮮による水爆実験に銃隊な懸念を表明する」が、「東北アジアの緊張を煽るような行動は自制すべきである」と述べたという。
ロシアも中国同様、北朝鮮の核実験には反対するが、北朝鮮を強く圧迫することで、不安定化させることは望んでいないようである。ウクライナとシリアでロシアは忙しいので、北朝鮮にはあまり関わりたくないということと、2015年、朝露関係が経済面で強化されたこともその背景にあるのだろう。
TASS, Lavrov asks Seoul to display restraint, avoid fanning tensions in Northeast Asia, http://tass.ru/en/politics/849165