「朝鮮中央通信報道 我々に対するいかなる挑発も宣戦布告とみなすであろう」(2012年3月22日「労働新聞」)
「朝鮮中央通信」は、このように題する記事を昨日配信していたが、それが今朝の「労働新聞」に掲載された。この記事も基本的に李明博政権を攻撃する形式を取っている。
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0005&chAction=L
この記事では「今回の会議の主要議題が核物質の使用最少化と安全管理および不法取引防止」にあり、「我々は既に原則的立場を鮮明にし、核物質保有および管理において国際的規範が徹底的に遵守されていることを明白にしている」と主張している。
そして、「朝鮮半島の非核化は、朝鮮半島での非核化を実現するための問題」であるから、「『北核問題』など事実上存在せず、会議の議題とされる何の名分もない」としている。
光明星3号発射との関連では、衛星発射発表後に「さらにうるさく騒ぎ立てる(李明博)逆賊一味の醜態がそれを実証している」とし、今回の会議を契機に「(北朝鮮の)平和的宇宙利用の権利さえ否定し、自主権を侵害」しようと企てていると非難している。
そして、李明博「逆賊一味」が朝鮮半島情勢を「統制不能な極限状態に至らせ」、「今後、事態がどのように展開(悪化)するのかについては、誰も予測できない」としている。そして、「ソウル会議で『北核問題』と関連した『声明発表』のようなことがあれば、それは朝鮮半島の非核化を遺訓とされた白頭山絶世の偉人たちの念願に対する極悪無礼な冒涜であ」ると主張している。
最後に、「李明博傀儡一味を少しでもかばおうとするならば、反逆一味を埋葬するための、我々の無差別的打撃圏に共に置かれることになるであろう」とし、「いかなる挑発も我々に対する宣戦布告となり、その結果、朝鮮半島非核化論議大きな障害となるであろう」と結んでいる。
上に書いたとおり、この記事は李明博政権を攻撃しつつ、米、中、露、日、EU諸国など、各国の首脳が参加する国際会議がソウルで開催されることへのいらだち、特に北朝鮮がいない場所で北朝鮮問題について、個別国間での協議であれ、行われることへの苛立ちを表しているのであろう。
最後の「その結果、朝鮮半島非核化論議大きな障害となるであろう」というのは、何を表しているのであろうか。この会議を受けて、2月29日の米朝協議合意事項であるIAEAの査察受け入れも蹴ることを予告しているのであろうか。過去記事にも書いたとおり、米国は依然として北朝鮮に対して明確な態度を表明し切れていない。それは、「弾道ミサイル」と「核」を切り離すのかリンクされるのかで悩んでいるからであろう。北朝鮮は、当面、中国などからの説得に応じることなく、「弾道ミサイル」と「核」の切り離しを米国に迫るであろう。ただし、一方的に迫るのであれば、初めから米朝合意などする必要はなかった。そうであるとすれば、どこかで引くオプションも持ち合わせているはずである。国際社会は、この「引き」オプションをうまく北朝鮮に選択させるよう誘導していく必要がある。それが、北朝鮮も含む国際社会にとって、少なくとも「当面」の最良の結果をもたらすことは間違いないからである。
ところで、「朝鮮中央通信」は光明星打ち上げ関連の記事をこの他にも昨日2つ配信した。
「選択の権利は誰にでもある」
「中国新聞:朝鮮が発射するものが衛星ではないという根拠はない」
上の記事では、科学者の言を引用しながら「全地球的な大気と海洋、陸地の気候変化過程を研究、予測する実用衛星は、気象水門部門に必ずや必要である」などとしながら、北朝鮮による衛星発射と宇宙空間の「科学的」利用の正当性を主張している。
下の記事は、中国の3月20日の「環球時報」の記事を引用「した」としながら、北朝鮮の主張を展開している。「環球時報」の英語サイト、「Global Times」(http://www.globaltimes.cn/OPED/tabid/64/lapg-448/3/Default.aspx)で、この記事を検索してみたが、出てこなかった。「労働新聞」もそうだが、朝鮮語の記事を全て英語に翻訳して配信しているわけではないので、「環球時報」でも同じことが言えるのかもしれないが、私は中国語を解さないのでこれ以上の確認はできない。ただし、3月19日に「Why China can't persuade N.Korea alone 」(http://www.globaltimes.cn/NEWS/tabid/99/ID/700891/Why-China-cant-persuade-NKorea-alone.aspx)という記事は配信されており、「朝鮮中央通信」の記事と一部の点で類似している。もしかすると、「朝鮮中央通信」は、この記事を拡大解釈しながら、独自の見解で脚色していったのかもしれない。
「環球時報」の記事は、国際社会が北朝鮮を説得するという役割を中国に対して過度に期待してはならないという内容である。つまり、中国が北朝鮮を説得できないのは、中国がソウル、東京、ワシントンを説得できないのと同じであるからで、北朝鮮はソウル、東京、ワシントンに「反応している」だけであるとしている。
「朝鮮中央通信」の記事との共通点は、北朝鮮が「核・ミサイル」を開発する理由として、「不安感」を言い回しは違えど上げている点である。「環球時報」では「insecure」という言葉を使い、「朝鮮中央通信」では「万が一、朝鮮が明らかに大陸間弾道ミサイルを発射しようとするのであれば、それは遠方からの威嚇を防ぎ、生存のためのものであり、それは、周辺国が朝鮮の安全を共同で高め、朝鮮が大陸間弾道ミサイルを発射しないようにすることが求められる」としている。
これら2つの「朝鮮中央通信」の記事は、いずれも「労働新聞」には転載されていない。理由は、「引きオプション」を選択するに際して、それが「外圧による」ということを朝鮮人民に悟られ、最高司令官が弱腰であると思われないようにするためであろう。しかし、「弱腰」は悪いことなのであろうか。
上記の「環球時報」の記事は、最後をこう締めくくっている。
「China needs to tell North Korea the truth. Pyongyang and its people will suffer the most if the impasse persists.」
(中国は、北朝鮮に事実を語る必要がある。この袋小路に固執するのであれば、北朝鮮政府と人民は最も苦しむことになる、と。)
袋小路から抜け出すためには、時には「弱腰」になることも必要である。
ところで、金正恩さんの動向に関する報道は、3月15日を最後にない。これまでも1週間程度、動向報道がなかったことはあったが、もうそろそろ何か出てこないと心配である。
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-22-0005&chAction=L
この記事では「今回の会議の主要議題が核物質の使用最少化と安全管理および不法取引防止」にあり、「我々は既に原則的立場を鮮明にし、核物質保有および管理において国際的規範が徹底的に遵守されていることを明白にしている」と主張している。
そして、「朝鮮半島の非核化は、朝鮮半島での非核化を実現するための問題」であるから、「『北核問題』など事実上存在せず、会議の議題とされる何の名分もない」としている。
光明星3号発射との関連では、衛星発射発表後に「さらにうるさく騒ぎ立てる(李明博)逆賊一味の醜態がそれを実証している」とし、今回の会議を契機に「(北朝鮮の)平和的宇宙利用の権利さえ否定し、自主権を侵害」しようと企てていると非難している。
そして、李明博「逆賊一味」が朝鮮半島情勢を「統制不能な極限状態に至らせ」、「今後、事態がどのように展開(悪化)するのかについては、誰も予測できない」としている。そして、「ソウル会議で『北核問題』と関連した『声明発表』のようなことがあれば、それは朝鮮半島の非核化を遺訓とされた白頭山絶世の偉人たちの念願に対する極悪無礼な冒涜であ」ると主張している。
最後に、「李明博傀儡一味を少しでもかばおうとするならば、反逆一味を埋葬するための、我々の無差別的打撃圏に共に置かれることになるであろう」とし、「いかなる挑発も我々に対する宣戦布告となり、その結果、朝鮮半島非核化論議大きな障害となるであろう」と結んでいる。
上に書いたとおり、この記事は李明博政権を攻撃しつつ、米、中、露、日、EU諸国など、各国の首脳が参加する国際会議がソウルで開催されることへのいらだち、特に北朝鮮がいない場所で北朝鮮問題について、個別国間での協議であれ、行われることへの苛立ちを表しているのであろう。
最後の「その結果、朝鮮半島非核化論議大きな障害となるであろう」というのは、何を表しているのであろうか。この会議を受けて、2月29日の米朝協議合意事項であるIAEAの査察受け入れも蹴ることを予告しているのであろうか。過去記事にも書いたとおり、米国は依然として北朝鮮に対して明確な態度を表明し切れていない。それは、「弾道ミサイル」と「核」を切り離すのかリンクされるのかで悩んでいるからであろう。北朝鮮は、当面、中国などからの説得に応じることなく、「弾道ミサイル」と「核」の切り離しを米国に迫るであろう。ただし、一方的に迫るのであれば、初めから米朝合意などする必要はなかった。そうであるとすれば、どこかで引くオプションも持ち合わせているはずである。国際社会は、この「引き」オプションをうまく北朝鮮に選択させるよう誘導していく必要がある。それが、北朝鮮も含む国際社会にとって、少なくとも「当面」の最良の結果をもたらすことは間違いないからである。
ところで、「朝鮮中央通信」は光明星打ち上げ関連の記事をこの他にも昨日2つ配信した。
「選択の権利は誰にでもある」
「中国新聞:朝鮮が発射するものが衛星ではないという根拠はない」
上の記事では、科学者の言を引用しながら「全地球的な大気と海洋、陸地の気候変化過程を研究、予測する実用衛星は、気象水門部門に必ずや必要である」などとしながら、北朝鮮による衛星発射と宇宙空間の「科学的」利用の正当性を主張している。
下の記事は、中国の3月20日の「環球時報」の記事を引用「した」としながら、北朝鮮の主張を展開している。「環球時報」の英語サイト、「Global Times」(http://www.globaltimes.cn/OPED/tabid/64/lapg-448/3/Default.aspx)で、この記事を検索してみたが、出てこなかった。「労働新聞」もそうだが、朝鮮語の記事を全て英語に翻訳して配信しているわけではないので、「環球時報」でも同じことが言えるのかもしれないが、私は中国語を解さないのでこれ以上の確認はできない。ただし、3月19日に「Why China can't persuade N.Korea alone 」(http://www.globaltimes.cn/NEWS/tabid/99/ID/700891/Why-China-cant-persuade-NKorea-alone.aspx)という記事は配信されており、「朝鮮中央通信」の記事と一部の点で類似している。もしかすると、「朝鮮中央通信」は、この記事を拡大解釈しながら、独自の見解で脚色していったのかもしれない。
「環球時報」の記事は、国際社会が北朝鮮を説得するという役割を中国に対して過度に期待してはならないという内容である。つまり、中国が北朝鮮を説得できないのは、中国がソウル、東京、ワシントンを説得できないのと同じであるからで、北朝鮮はソウル、東京、ワシントンに「反応している」だけであるとしている。
「朝鮮中央通信」の記事との共通点は、北朝鮮が「核・ミサイル」を開発する理由として、「不安感」を言い回しは違えど上げている点である。「環球時報」では「insecure」という言葉を使い、「朝鮮中央通信」では「万が一、朝鮮が明らかに大陸間弾道ミサイルを発射しようとするのであれば、それは遠方からの威嚇を防ぎ、生存のためのものであり、それは、周辺国が朝鮮の安全を共同で高め、朝鮮が大陸間弾道ミサイルを発射しないようにすることが求められる」としている。
これら2つの「朝鮮中央通信」の記事は、いずれも「労働新聞」には転載されていない。理由は、「引きオプション」を選択するに際して、それが「外圧による」ということを朝鮮人民に悟られ、最高司令官が弱腰であると思われないようにするためであろう。しかし、「弱腰」は悪いことなのであろうか。
上記の「環球時報」の記事は、最後をこう締めくくっている。
「China needs to tell North Korea the truth. Pyongyang and its people will suffer the most if the impasse persists.」
(中国は、北朝鮮に事実を語る必要がある。この袋小路に固執するのであれば、北朝鮮政府と人民は最も苦しむことになる、と。)
袋小路から抜け出すためには、時には「弱腰」になることも必要である。
ところで、金正恩さんの動向に関する報道は、3月15日を最後にない。これまでも1週間程度、動向報道がなかったことはあったが、もうそろそろ何か出てこないと心配である。