「ソ連映画:北満ホテル」:2回見てやっと理解できたソ連映画の朝鮮語版 (2015年12月28日 「朝鮮中央TV」)
28日、「朝鮮中央TV」で「ソ連映画・北満ホテル」が放映された。「朝鮮中央TV」では、時々ソ連映画を放映しているが、韓国・統一部のデータベース上ではこの映画は初めて放映されたようだ。しかも、第二次大戦を描いたソ連映画は対独戦争ばかりで、日本が登場するものは「朝鮮中央TV」で放映されるものに限ってもとても珍しい。ソ連が対日参戦をしたタイミングからすれば、映画になるようなストーリーもないのかも知れない。そのようなこともあり、ソ連映画とはいうものの、登場人物全て日本人役。ロシア人役は一人も登場しない。オリジナルはロシア語であるが、その上に朝鮮語の音声がかぶせてある。
背景にある建物がこの映画の舞台となる「北満ホテル」。日本軍高級将校のホテルという設定。

Source: KCTV, 2015/12/28
主人公は、「北満ホテル」の主人の「イシジマさん」。この人物は日本人とされているが、ソ連のスパイである。

Source: KCTV, 2015/12/28
北朝鮮の日本人が登場する映画は、善悪がはっきりしており、とても分かりやすいのであるが、この映画は複雑で1度見ただけではよく理解できなかった。主人公の「イシジマさん」はソ連に内通しているが、日本人を救おうとしているスパイというのがこの映画の難しいところである。というのは、この映画の時代背景が、ナチスドイツ敗戦後、広島・長崎に原爆が投下され、日本の敗戦が決定的になった時期で、沖縄戦での集団自決に代表されるような、一般人を巻き込んだ集団自決が発生していた時期であるからである。映画でも、当時の映像と思われる目を覆いたくなるような痛ましい映像が次のような解説と共に使われている。
「マリアナ群島のサイパン島。島を頑強に防御したすえ、大日本帝国の天皇に対する愛と忠誠の示しとして、生き残った全ての人は、どこでも自害しなければならないという命令が日本人に下された。このような運命が多くの日本人を待っていた」(ロシア語を翻訳したと思われる朝鮮語からの訳出)
絶壁から海に飛び降りる人々

Source: KCTV, 2015/12/28
溺れる女性

Source: KCTV, 2015/12/28
子供を抱いて溺れる女性

Source: KCTV, 2015/12/28
満州においても集団自決が発生しそうになり、それを「イシジマさん」がソ連と手を組んで阻止するというストーリーである。
映画では、民間人(日本人)の食料を略奪したり、日本人女性(ヨシコさん)をを強姦するなど、日本軍の軍紀が乱れていたという設定になっている。ちなみに、「ヨシコさん」は、「イシジマさん」の愛人で、「イシジマさん」の子を妊っている。「イシジマさん」が列車で逃がそうとするが、途中の駅で降りて彼の元に戻ろうとする途中、森の中で日本軍兵士に強姦され、神社のような建物の中で「天照大神」云々と言いながら焼身自殺をする。
神社のような建物に入る「ヨシコさん」

Source: KCTV, 2015/12/28
社の中の「ヨシコさん」。社に火を付けて焼け死ぬ。

Source: KCTV, 2015/12/28
この映画の中では、日本人が3人自殺する。順序からすると、上の「ヨシコさん」の自殺は3番目で、まず初めに自殺をするのは「オオモリ大将」。敗戦の責任を取り、割腹自殺をする。介錯をするのは「イシジマさん」

Source: KCTV, 2015/12/28
介錯をするのは「イシジマさん」

Source: KCTV, 2015/12/28
この映画には、「侯爵」(右)と「男爵」(左)が登場する。「侯爵」は軍人を見下し、人の命を何とも思わない。一方、若い男爵の方は人の命を重んじ、偶然、ソ連兵を殺してしまったことに対する呵責から首つり自殺をする。

Source: KCTV, 2015/12/28
「侯爵」と「男爵」を瀋陽から東京に運ぶための飛行機は、ソ連軍の攻撃を受けて「北満ホテル」敷地内に不時着する。「男爵」は、「陛下」に対するメッセージを東京に運ぶ命を受けたようで、手首に手錠で繋いだ箱をいつも抱えている。自分も箱の中身は分からなかったのだが、飛行機が爆発して軍人が死んだことにショックを受け、箱を開けて中を見る。

Source: KCTV, 2015/12/28
箱の中に入っていた手紙には「大日本帝国、天皇陛下に奉じます。我々、百万の関東軍兵士と満州に居住している600万の日本人住民は、投降しろという敵の要求を拒絶し、先祖の遺訓に従い最後の一人まで犠牲となる覚悟があることを申し上げます。我々の死は、大和精神の勝利として終わることでしょう。忠臣が捧げる」
上に書いた「男爵」の自殺は、この手紙を読んだことと、ソ連兵を誤って殺害したことによると言った方が正確かもしれない。
この辺りまでは、分かりやすいのだが、「東郷機関」なるものが暗躍しており、秘密の漏洩を防止するために、将校を逮捕するなどしている。ストーリーからは、上に書いた「全員自決」も秘密保持を目的とするものであることが分かる。「侯爵」と「東郷機関」は通じている。真ん中にいるのが「東郷機関」の頭目。両横にいるのが子分。

Source: KCTV, 2015/12/28
「イシジマさん」は、「侯爵」と関東軍の極秘情報を握っている「ハンダ中将」をソ連軍に手渡すことを任務としている。これと、「日本人を救う」ことがどう結びついているのかは、今一つ分からないが、ソ連軍に「ハンダ中将」が持っている情報を知らせることでソ連軍の満州侵攻を早め、集団自決を止めさせようということのようだ。映画では全く語られていないが、集団自決こそしなかったが、シベリア抑留で日本人はソ連に酷い目に遭わされている。アイマスクをしているのが「ハンダ中将」。

Source: KCTV, 2015/12/28
ソ連軍は、「イシジマさん」の要請で日本軍機を偽装した軍用機を「北満ホテル」に飛来させ、「ハンダ中将」と「侯爵」を連れ去る。「イシジマさん」は、偽装機に乗っていたソ連兵と共に離陸を阻止しようとする日本軍と銃撃戦になり戦死するところで映画は終わる。
写真は日の丸を付けた偽装軍用機。

Source: KCTV, 2015/12/28
全て書き切れないが、他にも二重スパイや協力者が多数登場する。とにかく、ドロドロとした感じの映画で理解するのに苦しんだ。
それにしても、このタイミングでなんでこんな映画を放映したのだろうか。「朝鮮中央通信」は、日本の「軍国主義復活」に反対する報道をここ数日間で数件伝えていたが、内容こそきちんと読んでいないものの、それとは直接的な関係はないと思う。
しかも、北朝鮮では「党中央死守」のために人民に「銃爆弾」、「肉弾」になるよう求めているのだから、ある意味、集団自決にも通じるのではないだろうか。いくら「日帝」を批判する映画だとしても、北朝鮮では自己矛盾に繋がりかねない体制にとっては危ない映画のような気がしてならない。
背景にある建物がこの映画の舞台となる「北満ホテル」。日本軍高級将校のホテルという設定。

Source: KCTV, 2015/12/28
主人公は、「北満ホテル」の主人の「イシジマさん」。この人物は日本人とされているが、ソ連のスパイである。

Source: KCTV, 2015/12/28
北朝鮮の日本人が登場する映画は、善悪がはっきりしており、とても分かりやすいのであるが、この映画は複雑で1度見ただけではよく理解できなかった。主人公の「イシジマさん」はソ連に内通しているが、日本人を救おうとしているスパイというのがこの映画の難しいところである。というのは、この映画の時代背景が、ナチスドイツ敗戦後、広島・長崎に原爆が投下され、日本の敗戦が決定的になった時期で、沖縄戦での集団自決に代表されるような、一般人を巻き込んだ集団自決が発生していた時期であるからである。映画でも、当時の映像と思われる目を覆いたくなるような痛ましい映像が次のような解説と共に使われている。
「マリアナ群島のサイパン島。島を頑強に防御したすえ、大日本帝国の天皇に対する愛と忠誠の示しとして、生き残った全ての人は、どこでも自害しなければならないという命令が日本人に下された。このような運命が多くの日本人を待っていた」(ロシア語を翻訳したと思われる朝鮮語からの訳出)
絶壁から海に飛び降りる人々

Source: KCTV, 2015/12/28
溺れる女性

Source: KCTV, 2015/12/28
子供を抱いて溺れる女性

Source: KCTV, 2015/12/28
満州においても集団自決が発生しそうになり、それを「イシジマさん」がソ連と手を組んで阻止するというストーリーである。
映画では、民間人(日本人)の食料を略奪したり、日本人女性(ヨシコさん)をを強姦するなど、日本軍の軍紀が乱れていたという設定になっている。ちなみに、「ヨシコさん」は、「イシジマさん」の愛人で、「イシジマさん」の子を妊っている。「イシジマさん」が列車で逃がそうとするが、途中の駅で降りて彼の元に戻ろうとする途中、森の中で日本軍兵士に強姦され、神社のような建物の中で「天照大神」云々と言いながら焼身自殺をする。
神社のような建物に入る「ヨシコさん」

Source: KCTV, 2015/12/28
社の中の「ヨシコさん」。社に火を付けて焼け死ぬ。

Source: KCTV, 2015/12/28
この映画の中では、日本人が3人自殺する。順序からすると、上の「ヨシコさん」の自殺は3番目で、まず初めに自殺をするのは「オオモリ大将」。敗戦の責任を取り、割腹自殺をする。介錯をするのは「イシジマさん」

Source: KCTV, 2015/12/28
介錯をするのは「イシジマさん」

Source: KCTV, 2015/12/28
この映画には、「侯爵」(右)と「男爵」(左)が登場する。「侯爵」は軍人を見下し、人の命を何とも思わない。一方、若い男爵の方は人の命を重んじ、偶然、ソ連兵を殺してしまったことに対する呵責から首つり自殺をする。

Source: KCTV, 2015/12/28
「侯爵」と「男爵」を瀋陽から東京に運ぶための飛行機は、ソ連軍の攻撃を受けて「北満ホテル」敷地内に不時着する。「男爵」は、「陛下」に対するメッセージを東京に運ぶ命を受けたようで、手首に手錠で繋いだ箱をいつも抱えている。自分も箱の中身は分からなかったのだが、飛行機が爆発して軍人が死んだことにショックを受け、箱を開けて中を見る。

Source: KCTV, 2015/12/28
箱の中に入っていた手紙には「大日本帝国、天皇陛下に奉じます。我々、百万の関東軍兵士と満州に居住している600万の日本人住民は、投降しろという敵の要求を拒絶し、先祖の遺訓に従い最後の一人まで犠牲となる覚悟があることを申し上げます。我々の死は、大和精神の勝利として終わることでしょう。忠臣が捧げる」
上に書いた「男爵」の自殺は、この手紙を読んだことと、ソ連兵を誤って殺害したことによると言った方が正確かもしれない。
この辺りまでは、分かりやすいのだが、「東郷機関」なるものが暗躍しており、秘密の漏洩を防止するために、将校を逮捕するなどしている。ストーリーからは、上に書いた「全員自決」も秘密保持を目的とするものであることが分かる。「侯爵」と「東郷機関」は通じている。真ん中にいるのが「東郷機関」の頭目。両横にいるのが子分。

Source: KCTV, 2015/12/28
「イシジマさん」は、「侯爵」と関東軍の極秘情報を握っている「ハンダ中将」をソ連軍に手渡すことを任務としている。これと、「日本人を救う」ことがどう結びついているのかは、今一つ分からないが、ソ連軍に「ハンダ中将」が持っている情報を知らせることでソ連軍の満州侵攻を早め、集団自決を止めさせようということのようだ。映画では全く語られていないが、集団自決こそしなかったが、シベリア抑留で日本人はソ連に酷い目に遭わされている。アイマスクをしているのが「ハンダ中将」。

Source: KCTV, 2015/12/28
ソ連軍は、「イシジマさん」の要請で日本軍機を偽装した軍用機を「北満ホテル」に飛来させ、「ハンダ中将」と「侯爵」を連れ去る。「イシジマさん」は、偽装機に乗っていたソ連兵と共に離陸を阻止しようとする日本軍と銃撃戦になり戦死するところで映画は終わる。
写真は日の丸を付けた偽装軍用機。

Source: KCTV, 2015/12/28
全て書き切れないが、他にも二重スパイや協力者が多数登場する。とにかく、ドロドロとした感じの映画で理解するのに苦しんだ。
それにしても、このタイミングでなんでこんな映画を放映したのだろうか。「朝鮮中央通信」は、日本の「軍国主義復活」に反対する報道をここ数日間で数件伝えていたが、内容こそきちんと読んでいないものの、それとは直接的な関係はないと思う。
しかも、北朝鮮では「党中央死守」のために人民に「銃爆弾」、「肉弾」になるよう求めているのだから、ある意味、集団自決にも通じるのではないだろうか。いくら「日帝」を批判する映画だとしても、北朝鮮では自己矛盾に繋がりかねない体制にとっては危ない映画のような気がしてならない。