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    モランボン楽団帰国:中国側観覧者の格の問題説 (2015年12月15日 

    北朝鮮側が習近平の観覧を希望し、中郷側が政治局員でと取り決めておきながら、「水素弾」発言を受けて書記クラスに格下げ、「元帥様」が満足せず撤収させたという説があるが、以下のとおり。

    そもそも、たかが楽団の演奏を中国のトップ集団に見てもらおうなどというのが愚かな考えではないだろうか。さらにいうと、本当に北朝鮮がそんなことを要求したのかすら分からない。政治局員といっても人口2500万の中の政治局員と10億の中の政治局員では全く意味が違うことぐらい、「元帥様」でも十分に分かるはず。

    大体、訪中当時ナンバー2の崔龍海があのざま。関心のない中国人(政治家)にとってみれば、モランボンだの功勲国家だのお笑いバンド。もっといえば、ニューヨークフィルだろうがベルリンフィルだろうが、AKB48だろうが、楽団を派遣するから党のトップクラスが参観しろなどというのは、でたらめな話でであろう。モスクワの青峰・功勲国家を見た人は、せいぜいロシアの楽団の代表者と、極東では極東の開発局長クラスだった。

    ということで、観覧者の格が下げられた問題で帰国させたという説には懐疑的である。

    あるとすれば、崔龍海で「元帥様」に恥をかかせたから、今度は恥をかかせないように、というような約束が有り、それを反故にされて北朝鮮が怒った可能性。ただし、どのレベルで楽団を「丁重に扱う」という話になっていたのかは分からない。

    一つ気になるのは、ロシアと異なり、ギリギリのところであれだけPVなどで宣伝したのは、なにか理由があったはず。

    「功勲国家合唱団とモランボン楽団」公演キャンセルも問題であるが、在北京北朝鮮大使を召還したまま、北朝鮮大使が不在の状態が続くというのは、本来の外交関係ではさらに注目することであるはず。現状では、「モランボン楽団」と共に帰国した以降のことは分からない。

    韓国・情報関係組織は、「(金正恩の)個人崇拝をする歌詞とミサイル発射シーンを中国が問題視した」という説を伝えているが、前者については、北朝鮮の指導者称賛ソングを望ましくないとするのであれば、そもそも北朝鮮楽団の公演は成り立たないはず。中国人民解放軍が「パルコルム」を歌っている時点でアウトである。ミサイルについては微妙であるが、過去記事にも書いてきたように、ロケット発射までは中国は認ているとすれば、それほど大きな問題とはしないはず。

    中国では、モランボン関係の書き込みを中国版ツイッターだけではなく、『環球時報』の記事も一部削除されているという。中国外交部のスポークスパーソンは、『人民網』に出たとおりに「北朝鮮との文化交流は重視する」と述べているというが、削除がその意味から事件の影響の拡散を抑えるためのものなのか、北朝鮮との関係をある意味抹消するためのものなのかは現時点では分からない。

    北朝鮮側もuriminzokkiriの特別コーナーこそなくなったが、その他の記事についてはそのまま残されている。ただ、「中国」、「モランボン楽団」、「功勲国家合唱団」などの語句が入った記事は配信されていないようである。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
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