「敬愛する金正恩同志が様々な部門を現地指導 2015.11」他:「魚大風」、『無菌化・国産化」、謎の女性、壊れた蛍光灯、「万景台学生少年宮殿」に自動車教習コース (2015年12月4日 「朝鮮中央TV」)
12月4日、11月に「元帥様」が行った民間部門の「現地指導」の様子を伝える「朝鮮記録映画」が放送された。
前日の12月3日には、軍事部門の「現地指導」を紹介する「朝鮮記録映画」が放送されたが、純粋な軍事指導は「高射ロケット発射訓練」と部隊訪問ぐらいで、その他の大部分は軍が運営する「水産事業所」に充てられていた。
この「朝鮮記録映画」からも分かるように、11月末辺りから、北朝鮮では「魚大風」が吹いている。
2105年11月28日に放送された「祝賀放送」。「決死貫徹の精神で魚大風をもたらしている人民軍隊水産部門の漁労戦士を熱烈に祝賀する」と字幕。「元帥様」が11月23日(報道)に「現地指導」した「朝鮮人民軍第313軍部隊管下8月25日水産事業所」と11月25日(報道)の「朝鮮人民軍第549部隊管下15号水産事業所」で計画を上回る漁獲量を実現したことがその背景にある。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
魚の冷凍庫で「大満足」する「元帥様」。「(「元帥様」が)数日間で数千トンの魚を捕り、我が党の水産政策の正当性と生活力を再び誇示しただけではなく、党の領導的権威を擁護、保衛した彼らの偉勲を高く評価してくださりました」とナレーション。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
興味深い点は、2014年1月と11月に「現地指導」した「朝鮮人民軍第534軍部隊」に水産物加工工場建設を指示し、「(元帥様は)本当の父親のような情を込め、水産事業所の名前まで付けてくださりました。私たちの元帥様は、1月8日という名称を付けてくださるのは、ここが初めてでした。世の中であったこともないような愛の命名を受け、人民部隊の強力な建設部隊が駆けつけてきました」と2014年9月25日に「朝鮮中央TV」で放送された「朝鮮記録映画」の中で述べているにもかかわらず、その後、この工場のフォローアップが全くないことだ。「1月8日」という名称が引っかかり中断されたのか、そうでなければ非公開となっているのだろうか。
「朝鮮中央TV」では、続けて「黄金の海に向かう航路は変わらない-東海漁場にて-」というドキュメンタリー番組を放送している。この番組では、民間部門の漁船が「嵐が来るから帰港せよ」という指揮所からの指示に反して「漁労戦闘」を展開し、多くの魚を捕ったというエピソードである。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
発想としては、大洪水の中、命がけで「大元帥様達」の肖像画を守る(拙ブログには書かなかったが、8月の羅先の大洪水で「尊厳徽章(「大元帥様のバッジ)」を握りしめて命を落とした女性の話がある番組で紹介されていた)という人命軽視(「決死擁護」)の発想に近い部分があるが、現実的な経済的損失という点からすれば、バッジと漁船は比べものにならない。貴重な漁船を沈没させてまで、「決死貫徹」せよというのが「我が党の水産政策」であるならば、経済的な「正当性」は全くない(人道的な「正当性」の欠如についてはいうまでもないが)。
もちろん、これらはあくまでも宣伝であり、現場では現実的な対応が行われているはずであるが、この番組に続くスローガン番組を見ると、下の写真にあるように「人民軍隊水産部門幹部と漁労工の決死貫徹の闘争気風を見習おう」ということを伝えたいのであろう。このスローガン番組は、なかなかおもしろいので、追って日本語字幕を付けてYouTubeにアップしようと思う。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
<追記>
YouTube, dprknow channel, https://youtu.be/yD3CUIiwuKI
タイトルの「朝鮮記録映画」から話題がそれてしまったので、話を戻す。この「記録映画」は、まず「平壌子供食料工場」での「現地指導」の様子が紹介される。「無菌化」という大きな看板が出ているにもかかわらず、「元帥様」をはじめとした一行は、土足のまま生産現場へと足を踏み入れる。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
下は、乳児用の粉ミルクを缶詰にする工程を眺める「元帥様」であるが、この工程はカバーで覆われているので、「無菌化」とはこういうことなのかもしれない。「設備の標準化における国産化水準を高めるという党の意図が完璧に実現された工場・・・人の物ばかり見ている人がこの工場を見れば、輸入病がさっと治るだろう」と「元帥様」。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
次に紹介されるのが「移動式金網養魚場」である。「移動式」というのは、河川や海に設置し、揚水設備などを備えることなく、自然水を利用しながら養魚ができるということで、「元帥様」は「経済的効果性が大変大きいので、世界的な養魚趨勢となっている」と述べたとナレーション。この橋はかなりたわんでいるが、設計上、これだけ多くの人の体重に耐えられるものだったのだろうか。「元帥様」を大同江に落としでもしたら、大変なことになる(英雄と処刑者が出る)。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
ところで、この「養魚場」が「録画報道(静止画)」で紹介されたとき、謎があった。「女子力」を重視するならば記事にすべきだったのかもしれないが、偶然なのかと思い記事にはしなかった。下は『労働新聞』HPから持って来た写真(静止画報道も同様の写真)であるが、「元帥様」の横に「養魚場」紹介には全く登場していなかった草履のようなものを履いた女性が立っている。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 대동강에 새로 설치한 이동식그물우리양어장을
현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-18-0001_photo
「元帥様」を迎えるのに草履はまずいと思ったのだが、この女性は「総合調整室」でPCを操作している女性であった。「女子力」を発揮できたからなのか、「元帥様」の横に立たせてもらっている。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
次は、別の記事にもした地下鉄新型車両の試運転「現地指導」である。「元帥様」は、長いエスカレーターで、駅構内に降りていくが、「元帥様」が乗っているエスカレーターの右側にあるエスカレーターの蛍光灯が一部消えているだけではなく、蛍光管が古くなり点滅している。最悪のタイミングでそうなってしまったのか、事前検査をしなかったのかは分からないが、体面に拘る北朝鮮が、「朝鮮記録映画」の中にみっともないシーンを出してしまったのは、普通のことと思ったのか、それとも検閲漏れなのか。昨日紹介した『平壌ゴルフ場」の動画に出てくる英単語のスペルミスもそうであるが、検閲体制が甘い。蛍光灯が点滅している部分も含め、地下鉄「試験乗車」部分は、追ってYouTubeに日本語字幕を付けてアップする予定である。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
一部にだけつり革がある車内。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
ドアもさして大きくなかった。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
<追記>
YouTubeに地下鉄試運転部分を日本語字幕を付けてアップロードしておいた。

Source: YouTube, dprknow channel, https://youtu.be/uIXV73WMy98
続いて、「元山靴工場」の「現地指導」の様子が紹介されており、「元帥様」は、「我々の力と技術で国産化された接着剤を開発することに関する問題」を解決するよう「強調」しており、接着剤は依然として輸入品に依存していることが分かる。
靴のデザインをチェックする「元帥様」。前に置かれているボトルに入っているのが、国産接着剤のプロトタイプなのかもしれない。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
最後は、「新たに改築された万景台学生少年宮殿」の「現地指導」の様子である。下の地図には済州島だけではなく、鬱陵島と「独島」もしっかりと含まれている。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
「2000人を収容できる劇場」を視察する「元帥様」。背景では「少年大将」の新作と思われる映画が流されている。こういう芸は細かいのに、地下鉄エスカレータはいただけない。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
駐車場と思いきや・・・

Source: KCTV, 2015/12/04放送
「自動車運転実習場も、学生が運転実習をしやすくするよううまく作った」と「元帥様」。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
プロの運転手養成用ではないと思うが、マイカー時代はまだ先の話ではないだろうか。
前日の12月3日には、軍事部門の「現地指導」を紹介する「朝鮮記録映画」が放送されたが、純粋な軍事指導は「高射ロケット発射訓練」と部隊訪問ぐらいで、その他の大部分は軍が運営する「水産事業所」に充てられていた。
この「朝鮮記録映画」からも分かるように、11月末辺りから、北朝鮮では「魚大風」が吹いている。
2105年11月28日に放送された「祝賀放送」。「決死貫徹の精神で魚大風をもたらしている人民軍隊水産部門の漁労戦士を熱烈に祝賀する」と字幕。「元帥様」が11月23日(報道)に「現地指導」した「朝鮮人民軍第313軍部隊管下8月25日水産事業所」と11月25日(報道)の「朝鮮人民軍第549部隊管下15号水産事業所」で計画を上回る漁獲量を実現したことがその背景にある。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
魚の冷凍庫で「大満足」する「元帥様」。「(「元帥様」が)数日間で数千トンの魚を捕り、我が党の水産政策の正当性と生活力を再び誇示しただけではなく、党の領導的権威を擁護、保衛した彼らの偉勲を高く評価してくださりました」とナレーション。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
興味深い点は、2014年1月と11月に「現地指導」した「朝鮮人民軍第534軍部隊」に水産物加工工場建設を指示し、「(元帥様は)本当の父親のような情を込め、水産事業所の名前まで付けてくださりました。私たちの元帥様は、1月8日という名称を付けてくださるのは、ここが初めてでした。世の中であったこともないような愛の命名を受け、人民部隊の強力な建設部隊が駆けつけてきました」と2014年9月25日に「朝鮮中央TV」で放送された「朝鮮記録映画」の中で述べているにもかかわらず、その後、この工場のフォローアップが全くないことだ。「1月8日」という名称が引っかかり中断されたのか、そうでなければ非公開となっているのだろうか。
「朝鮮中央TV」では、続けて「黄金の海に向かう航路は変わらない-東海漁場にて-」というドキュメンタリー番組を放送している。この番組では、民間部門の漁船が「嵐が来るから帰港せよ」という指揮所からの指示に反して「漁労戦闘」を展開し、多くの魚を捕ったというエピソードである。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
発想としては、大洪水の中、命がけで「大元帥様達」の肖像画を守る(拙ブログには書かなかったが、8月の羅先の大洪水で「尊厳徽章(「大元帥様のバッジ)」を握りしめて命を落とした女性の話がある番組で紹介されていた)という人命軽視(「決死擁護」)の発想に近い部分があるが、現実的な経済的損失という点からすれば、バッジと漁船は比べものにならない。貴重な漁船を沈没させてまで、「決死貫徹」せよというのが「我が党の水産政策」であるならば、経済的な「正当性」は全くない(人道的な「正当性」の欠如についてはいうまでもないが)。
もちろん、これらはあくまでも宣伝であり、現場では現実的な対応が行われているはずであるが、この番組に続くスローガン番組を見ると、下の写真にあるように「人民軍隊水産部門幹部と漁労工の決死貫徹の闘争気風を見習おう」ということを伝えたいのであろう。このスローガン番組は、なかなかおもしろいので、追って日本語字幕を付けてYouTubeにアップしようと思う。

Source: KCTV, 2015/11/28放送
<追記>
YouTube, dprknow channel, https://youtu.be/yD3CUIiwuKI
タイトルの「朝鮮記録映画」から話題がそれてしまったので、話を戻す。この「記録映画」は、まず「平壌子供食料工場」での「現地指導」の様子が紹介される。「無菌化」という大きな看板が出ているにもかかわらず、「元帥様」をはじめとした一行は、土足のまま生産現場へと足を踏み入れる。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
下は、乳児用の粉ミルクを缶詰にする工程を眺める「元帥様」であるが、この工程はカバーで覆われているので、「無菌化」とはこういうことなのかもしれない。「設備の標準化における国産化水準を高めるという党の意図が完璧に実現された工場・・・人の物ばかり見ている人がこの工場を見れば、輸入病がさっと治るだろう」と「元帥様」。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
次に紹介されるのが「移動式金網養魚場」である。「移動式」というのは、河川や海に設置し、揚水設備などを備えることなく、自然水を利用しながら養魚ができるということで、「元帥様」は「経済的効果性が大変大きいので、世界的な養魚趨勢となっている」と述べたとナレーション。この橋はかなりたわんでいるが、設計上、これだけ多くの人の体重に耐えられるものだったのだろうか。「元帥様」を大同江に落としでもしたら、大変なことになる(英雄と処刑者が出る)。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
ところで、この「養魚場」が「録画報道(静止画)」で紹介されたとき、謎があった。「女子力」を重視するならば記事にすべきだったのかもしれないが、偶然なのかと思い記事にはしなかった。下は『労働新聞』HPから持って来た写真(静止画報道も同様の写真)であるが、「元帥様」の横に「養魚場」紹介には全く登場していなかった草履のようなものを履いた女性が立っている。

Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지께서 대동강에 새로 설치한 이동식그물우리양어장을
현지지도하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-18-0001_photo
「元帥様」を迎えるのに草履はまずいと思ったのだが、この女性は「総合調整室」でPCを操作している女性であった。「女子力」を発揮できたからなのか、「元帥様」の横に立たせてもらっている。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
次は、別の記事にもした地下鉄新型車両の試運転「現地指導」である。「元帥様」は、長いエスカレーターで、駅構内に降りていくが、「元帥様」が乗っているエスカレーターの右側にあるエスカレーターの蛍光灯が一部消えているだけではなく、蛍光管が古くなり点滅している。最悪のタイミングでそうなってしまったのか、事前検査をしなかったのかは分からないが、体面に拘る北朝鮮が、「朝鮮記録映画」の中にみっともないシーンを出してしまったのは、普通のことと思ったのか、それとも検閲漏れなのか。昨日紹介した『平壌ゴルフ場」の動画に出てくる英単語のスペルミスもそうであるが、検閲体制が甘い。蛍光灯が点滅している部分も含め、地下鉄「試験乗車」部分は、追ってYouTubeに日本語字幕を付けてアップする予定である。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
一部にだけつり革がある車内。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
ドアもさして大きくなかった。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
<追記>
YouTubeに地下鉄試運転部分を日本語字幕を付けてアップロードしておいた。

Source: YouTube, dprknow channel, https://youtu.be/uIXV73WMy98
続いて、「元山靴工場」の「現地指導」の様子が紹介されており、「元帥様」は、「我々の力と技術で国産化された接着剤を開発することに関する問題」を解決するよう「強調」しており、接着剤は依然として輸入品に依存していることが分かる。
靴のデザインをチェックする「元帥様」。前に置かれているボトルに入っているのが、国産接着剤のプロトタイプなのかもしれない。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
最後は、「新たに改築された万景台学生少年宮殿」の「現地指導」の様子である。下の地図には済州島だけではなく、鬱陵島と「独島」もしっかりと含まれている。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
「2000人を収容できる劇場」を視察する「元帥様」。背景では「少年大将」の新作と思われる映画が流されている。こういう芸は細かいのに、地下鉄エスカレータはいただけない。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
駐車場と思いきや・・・

Source: KCTV, 2015/12/04放送
「自動車運転実習場も、学生が運転実習をしやすくするよううまく作った」と「元帥様」。

Source: KCTV, 2015/12/04放送
プロの運転手養成用ではないと思うが、マイカー時代はまだ先の話ではないだろうか。