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    10月19日の「青峰楽団公演」、当日放送中止に、軍事象号昇格と叙勲、「元帥様」の指導力、軍と党の葛藤? (2015年10月26日 「朝鮮中央TV」)

    コメントで韓国・統一部の「北韓TV番組編成表」に記載された「青峰楽団公演」についての情報を頂いた。同編成表は、私もしばしば参照しており、最近、少し検索方法に変更があったような気がしている。

    コメントは、同「編成表」10月19日に「青峰楽団公演」が「10月18日の再放送」として出ているというご指摘であったが、確かに出ているものの放送はされていない。同「編成表」は、「朝鮮中央TV」が放送の最後に流す翌日の「放送順序」を基に作成されているようであるが、10月18日の「放送順序」では、「青峰楽団公演」の再放送が予告されていたのであろう。残念ながら、同日は、予告が始まった直後に録画が切れており、実際に確認はできない。

    しかし、19日15時00分(PST)から開始された「朝鮮中央TV」放送冒頭の「放送順序」予告では、20時40分(PST)から「青峰楽団公演」が放送されることになっている。
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    Source: KCTV, 2015/10/18 15時05分(PST)頃放送

    ところが、20時40分(PST)頃から放送されたのは「青峰楽団公演」ではなく、『私の教訓』という「朝鮮芸術映画」であった。『私の教訓』は、過去記事で紹介した記憶があるが、平壌の党幹部が山深い村に行き、地元の人民と共に働くという思想性が極めて高い映画である。
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    Source: KCTV, 2015/10/19 20時40分(PST)頃放送

    ということは、10月19日の放送開始時点では「青峰楽団」が予定されていたが、キャンセルされたということになる。17時30分(PST)頃放送された「この後の放送順序」を見ると、既に番組は変更されていることが分かる。北朝鮮では検閲に時間がかかるので、既に放送開始時点で番組が変更されていたにもかかわらず、放送開始直後の「今日の放送順序」には間に合わなかった可能性もあるが、17時半(PST)の「これ後の放送順序」には間に合ったということかもしれない。
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    Source: KCTV, 2015/10/19 17時30分(PST)頃放送

    拙ブログには、「1度しか放送されなかった」という事実からして、「青峰楽団」の「思想・精神的」位置の問題について書いており、それに関するたくさんのコメントも頂いているが、今回確認された時系列的なキャンセルの過程を見ると、意外と重大な問題となっているのかもしれない。

    予定されていたことかもしれないが、25日の「最高司令官命令」で「功勲国家合唱団」と『モランボン楽団」メンバーの軍事階級が格上げされ、さらに金ユギョンに「功勲俳優」勲章が授与されている。もちろん、デビューしたばかりに「青峰楽団」メンバーに対する叙勲がなくても問題はないが、「元帥様」が慌てて「青峰楽団」重視のスタンスから、「功勲合唱団・モランボン」に切り替えた感がないわけでもない。

    もしかすると、再び「青峰楽団」に対する「思想・精神的」問題が提起されたのかもしれない。他の団員を引き連れて夫人と共に観覧した「青峰楽団」が再び批判され、「元帥様」がスタンスを変えたとすると、「元帥様」の指導力・統率力に疑問符が付きかねない重大な問題である。軍部の「国家功勲・モランボン」派と改革的の一部党幹部の「青峰」派との対立の構図が描けるのかもしれない。たかが音楽ではあるが、それが政治であることは、先人の研究でも明らかにされているところである。

    先走った結論を出すべきではないことは分かっているが、「朝鮮中央TV」での放送中止の背景には、重大な問題があることは間違いない。

    <追記>
    既に頂いていたコメントであるが、18日の「明日の放送順序」では、20時50分(PST)から「青峰楽団」公演が始まることになっていたそうである。すると、19日朝の予告では、10分早まっていたことになる。予定されていた報道が一部なくなったからなのかもしれない。それが「青峰楽団」に関する報道であれば、なお興味深いところではある。

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    No title

    青峰楽団にかかる動き,どうも読めませんね…。
    放送予定がボツになったことは何らかの理由が当然あるわけでしょうが,いわゆる様子見なのかもしれませんね。功勲+モランボンへの称号授与により,さらにこれらの楽団の位置を高めるために,言葉は良くないですが二股状態をなくすとか。あと,やはり銀河水の二の舞を避けるためかもしれません。
    思想的な問題というのはあるにせよ,完全に楽団内で総和しきれていないという内部事情があるのでは…。

    放送

    コメントありがとうございます。

    「功勲・モランボン」ですが、「モランボン」単独公演を見たいですね。『見てみろというように』のような演奏をどれだけやるのか・・

    > 青峰楽団にかかる動き,どうも読めませんね…。
    > 放送予定がボツになったことは何らかの理由が当然あるわけでしょうが,いわゆる様子見なのかもしれませんね。功勲+モランボンへの称号授与により,さらにこれらの楽団の位置を高めるために,言葉は良くないですが二股状態をなくすとか。あと,やはり銀河水の二の舞を避けるためかもしれません。
    > 思想的な問題というのはあるにせよ,完全に楽団内で総和しきれていないという内部事情があるのでは…。

    混乱?「自己保全」

     古今東西を問わず、独裁体制下においては、必ず起こるころです。
     北朝鮮の、元帥独裁体制(かなり完成しているとおもいます)の場合も、元帥の下の取巻き連中(これはいつでも実に、無責任・無自覚・日和見・無能力(簡単に言えばバカ))の「自己保身」のなせるワザで、「思想・精神的」などの「高度な話」はそっちのけで、「ここで騒いでおけば、どっちにしても(どう元帥が判断しようとも)安全!安全第一!」という、「自己保身」の最たるものと考えております。どうでしょうか?
     (元帥もこんなバカを使わなくてはならないので、大変でしょう。我々の、身近にもありますが。)

    Re: 混乱?「自己保全」

    コメントありがとうございます。独裁者の取り巻きは、無能なイエスマンが集まりますね。だからこそ、独裁が可能となるわけですが、独裁者が利口であれば、自分は一歩引き下がり有能なイエスマンを集めます。その典型が、朴槿恵のお父さんで、陸軍少将出身の彼の能力だけではなしえない経済成長を導きました。その目的を達成するために「思想・精神的」に問題がある人々は弾圧しました(もちろん、思想的には北朝鮮とは真逆ですが、精神的に体制に従順ではないという意味では同じです)。

    有無を言わさず軍事クーデターで政権を奪取した朴槿恵のお父さんとは違い、「元帥様」は「白頭の血統」という流れの中でリーダーになった彼は、お父さんやお祖父さんを否定することはできないし、リーダーたる根拠は「白頭の血統」しかないので、ある意味、朴槿恵のお父さんよりも立場はずっと弱いのだと思います。そんな「元帥様」なので、無能なイエスマンの餌食になっている可能性はありますね。

    元帥様公式デビュー当時の記事に書いたと思いますが、彼が持つ伝家の宝刀は「思想」の解釈権ですから、「青峰」の「思想・精神状態が悪い」と言われても、お祖父さんやお父さんの「思想」を彼なりに解釈しながら、「일이없다(苦しゅうない)」といえるようになれば、「偉人」ということです。軍部のお年寄りが渋い顔をしても、無視できるかですね。

    >  古今東西を問わず、独裁体制下においては、必ず起こるころです。
    >  北朝鮮の、元帥独裁体制(かなり完成しているとおもいます)の場合も、元帥の下の取巻き連中(これはいつでも実に、無責任・無自覚・日和見・無能力(簡単に言えばバカ))の「自己保身」のなせるワザで、「思想・精神的」などの「高度な話」はそっちのけで、「ここで騒いでおけば、どっちにしても(どう元帥が判断しようとも)安全!安全第一!」という、「自己保身」の最たるものと考えております。どうでしょうか?
    >  (元帥もこんなバカを使わなくてはならないので、大変でしょう。我々の、身近にもありますが。)
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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