「敬愛する金正恩同志が朝鮮労働党創建70周年に際し我が国を公式親善訪問している中国共産党代表団を接見された」:劉雲山「戦略的関係を新たな段階に」、金正恩「金正日総書記が在命中、朝中親善は両国人民の歴史的で、戦略的な選択と仰った」、金正恩訪中はあるのか、筆者の見込み違い (2015年10月10日 「朝鮮中央通信」)
10日、「朝鮮中央通信」が、金正恩が金己男、金養建らと共に中国共産党代表団を接見したと報じた。
中国代表団の出席者は、劉雲山の他、中国人民政治協商会議全国委員会副主席兼中国共産党中央委員会対外連絡部副部長の王家瑞、外交部常務副部長張業遂、中央外事弁公室常務副主任宋涛,中国人民解放軍総政治部副主任殷方龙,中央对外連絡部副部長刘洪才である(中国側の出席者名は、一部、「朝鮮中央通信」の中国語版からそのままコピーしているため、簡体字になっている)。
中国代表団は、金正恩に習近平からの親書を渡した。
以下、「朝鮮中央通信」が報じた劉雲山の接見の場での発言。
「金正恩同志が強盛国家建設闘争を陣頭で指揮されるお忙しい中、代表団を接見して下さったことについて感謝されながら、中国共産党中央委員会と習近平総書記同士の委任により、朝鮮労働党創建70周年を迎えている朝鮮労働党中央委員会と全ての朝鮮労働党党員、朝鮮人民を熱烈に祝賀する」
「朝鮮人民の偉大な首領金日成同志と金正日総秘書同志の領導の下、朝鮮労働党は朝鮮人民を導いて、重なる難関を切り抜け、国の独立と人民の幸福を達成し、朝鮮の社会主義革命と建設偉業で注目される成果を挙げた」
「中国共産党代表団は、血で結ばれた中朝両国の党と政府、人民の間の伝統的親善を代を継いで固守し輝かせ、政治、経済、軍事、文化など、全ての分野の親善協力関係を新たな高い段階へ全面的に発展させる使命を抱き、朝鮮を訪問した。栄光の伝統を持つ戦略的な中朝親善を変わりなく強固に発展させることは、中国の党と政府の確固不同な不変の方針である」
「中国の党と政府は、両党、両国の老世代領導者が親しく作り、育ててられた中朝親善関係を特に貴重に考えている。中国の党と政府は、朝鮮の党と政府と共に努力し、戦略的中朝親善を立派に守護し、立派に強固にし、立派に発展させ、両国と両国人民に幸福をもたらすために積極的に努力する」
「尊敬する金正恩第1秘書同志を首班とする朝鮮労働党の領導の下、朝鮮人民が社会主義強盛国家建設偉業遂行においてたゆまず新たなより大きな成果を達成することを心より願っている」
これに対し、金正恩は、
「中国共産党中央委員会と習近平総書記同志が、朝鮮労働党創建70周年慶祝行事に劉雲山同志を団長とする中国共産党代表団を送ってくれたことは、朝鮮労働党と社会主義強盛国家建設のために力強い闘争をしている我々の軍隊と人民に大きな鼓舞となる。代表団の我が国訪問を熱烈に歓迎し、習近平同志を総書記とする中国共産党中央領導集団と中国人民に熱い挨拶」を送った。
「中国共産党代表団の我が国訪問が、両党、両国間の立派な伝統を継承、発展させることに積極的に寄与する意義深い訪問となることを望む」
「朝中関係は、単純な隣国との関係ではなく、血で結ばれた親善の伝統に根を張る戦略的関係となってきた。金日成主席同士と金正日総書記同志が我々に残された最も大きな対外事業業績と遺産も朝中親善である」
「金正日総書記が在命中、朝中親善は両国人民の歴史的で、戦略的な選択と仰った。金正日総書記同志は、生涯の最後の時期にも朝中親善の強化発展のために、大きな労苦と心血を注がれた」
「伝統は、歴史の本屋教科書に記録されることで終わるのではなく、実践で継承し、輝かせなければならない。伝統的な朝中親善を代を継いでさらに強固にし発展させなければならないということは、我が党と人民の意志である」
「朝鮮と中国両国人民の共同の財である朝中親善の不敗の生活力が、双方の努力によりこれからもさらに力強く誇示されるだろうという確信を表明」
そして、
「金正恩同志は、お客さんと朝中両国関係の強化発展と相互の関心事に関する問題について意見を交換した」という。
もちろん、形式的には
「対話は一貫して親善的で和気藹々とした雰囲気の中で行われた」となっている。
さて、劉雲山の発言の中で気になる部分は、「全ての分野の親善協力関係を新たな高い段階へ全面的に発展させる使命を抱き、朝鮮を訪問した」、「戦略的中朝親善」という部分である。「新たな高い段階」にするためには、当然北朝鮮側の変化が必要であるわけで、それを「戦略的」に進めるのであれば、なおさらである。中国の頭の中では「戦略的」は「中朝関係」に限られるものではなく、北東アジア情勢、さらに広くは世界情勢まで含むものであることは間違いない。前者に限れば、基本的には朝鮮半島の「平和と安定」、つまりstatus quoを求めており、status quoの不安定要因となっている金正恩政権にもっと安定的になるよう求めるであろう。それには当然「核とミサイル」も含まれ、その裏側には「経済」がある。中朝関係では、「核・ミサイル」と「経済」がコインの表裏の関係となっている。
北朝鮮は、今回、ロケット発射も核実験も見送ったようだ。それが、中国代表団派遣の条件だったのだろうし、70周年行事直後にこれらを北朝鮮が実施すれば、中国の顔に泥を塗ることになる。お父さんも泥を塗ったことはあるが、今回は公に塗ることになるので、そんなことをすれば中国の怒りは当時の比ではないはずだ。
もちろん、北朝鮮も中国訪問団訪朝から得られる果実は計算しているはずで、まずは、「元帥様」の外交成果を朝鮮人民にアピールすることであろう。今回、北朝鮮が中国の要請を受けてロケット・ミサイル実験を見送り、それを中国側が評価するのであれば、年内の金正恩訪中の可能性も出てくる。これが実現すれば、「元帥様」の国内向けの株(外交成果)は一層上がる。
これに関して、「元帥様」もお父さんの例を挙げながら、「金正日総書記が在命中、朝中親善は両国人民の歴史的で、戦略的な選択と仰った」と言っている。自身も「戦略的な選択」ができるのか。そして、「伝統的な朝中親善を代を継いでさらに強固にし発展させ」ることができるのか。少なくとも、今、彼はそれをするよい機会だと思っているのであろう。
実は、今回の中国訪朝団は崔龍海への冷遇へのリベンジの対象になるのではないかと思っていた。昨夜書いた記事でも、ある意味、中国訪朝団の扱いが軽く感じられたので、「やはり」と思っていた。しかし、どうやらその見立ては見事に外れ、到着直後に「元帥様」が接見していたということであった。朴槿恵への厚遇、崔龍海への冷遇に北朝鮮は怒りを感じていたはずであるが、これが薬になったようだ。中国の「戦略」がこれまでのところでは、成功したということになる。
もちろん、一筋縄ではいかぬ北朝鮮であるから、中国から色々な約束を引き出すであろう。記事にはしなかったが、丹東に新義州との間で公益ができる「自由貿易地帯」が少し前に創設された。ここには、北朝鮮側から人々(どのような人々かは不明)がやって来て、中国商人と公益をする。交易額が大きくなると、免税の対象となるということである。新鴨緑江橋も活用できるというわけだ。
ともかく、周辺国にとっては、北朝鮮の安定は絶対である。日本の拉致被害者の帰国も、北朝鮮が安定していなければさらに難しくなるはずである。
年末にかけての中朝関係が注目される。
<追記>
中国訪問団のための宴会が開催され、崔龍海が演説した。
<追記2>
「朝鮮中央TV」が、「錦繍山太陽宮殿」参拝に続く、2つ目のニュースで「接見」を伝えている。

Source: KCTV, 2015/10/10放送中

Source: KCTV, 2015/10/10放送中

Source: KCTV, 2015/10/10放送中

Source: KCTV, 2015/10/10放送中
<追記3>
崔龍海秘書、李昌根副部長などが、9日、中国代表団と会談したと「朝鮮中央通信」が同日付で報じた。「お互いの関心事の意見交換」をしたと。

Source: KCNA

Source: KCNA
中国代表団の出席者は、劉雲山の他、中国人民政治協商会議全国委員会副主席兼中国共産党中央委員会対外連絡部副部長の王家瑞、外交部常務副部長張業遂、中央外事弁公室常務副主任宋涛,中国人民解放軍総政治部副主任殷方龙,中央对外連絡部副部長刘洪才である(中国側の出席者名は、一部、「朝鮮中央通信」の中国語版からそのままコピーしているため、簡体字になっている)。
中国代表団は、金正恩に習近平からの親書を渡した。
以下、「朝鮮中央通信」が報じた劉雲山の接見の場での発言。
「金正恩同志が強盛国家建設闘争を陣頭で指揮されるお忙しい中、代表団を接見して下さったことについて感謝されながら、中国共産党中央委員会と習近平総書記同士の委任により、朝鮮労働党創建70周年を迎えている朝鮮労働党中央委員会と全ての朝鮮労働党党員、朝鮮人民を熱烈に祝賀する」
「朝鮮人民の偉大な首領金日成同志と金正日総秘書同志の領導の下、朝鮮労働党は朝鮮人民を導いて、重なる難関を切り抜け、国の独立と人民の幸福を達成し、朝鮮の社会主義革命と建設偉業で注目される成果を挙げた」
「中国共産党代表団は、血で結ばれた中朝両国の党と政府、人民の間の伝統的親善を代を継いで固守し輝かせ、政治、経済、軍事、文化など、全ての分野の親善協力関係を新たな高い段階へ全面的に発展させる使命を抱き、朝鮮を訪問した。栄光の伝統を持つ戦略的な中朝親善を変わりなく強固に発展させることは、中国の党と政府の確固不同な不変の方針である」
「中国の党と政府は、両党、両国の老世代領導者が親しく作り、育ててられた中朝親善関係を特に貴重に考えている。中国の党と政府は、朝鮮の党と政府と共に努力し、戦略的中朝親善を立派に守護し、立派に強固にし、立派に発展させ、両国と両国人民に幸福をもたらすために積極的に努力する」
「尊敬する金正恩第1秘書同志を首班とする朝鮮労働党の領導の下、朝鮮人民が社会主義強盛国家建設偉業遂行においてたゆまず新たなより大きな成果を達成することを心より願っている」
これに対し、金正恩は、
「中国共産党中央委員会と習近平総書記同志が、朝鮮労働党創建70周年慶祝行事に劉雲山同志を団長とする中国共産党代表団を送ってくれたことは、朝鮮労働党と社会主義強盛国家建設のために力強い闘争をしている我々の軍隊と人民に大きな鼓舞となる。代表団の我が国訪問を熱烈に歓迎し、習近平同志を総書記とする中国共産党中央領導集団と中国人民に熱い挨拶」を送った。
「中国共産党代表団の我が国訪問が、両党、両国間の立派な伝統を継承、発展させることに積極的に寄与する意義深い訪問となることを望む」
「朝中関係は、単純な隣国との関係ではなく、血で結ばれた親善の伝統に根を張る戦略的関係となってきた。金日成主席同士と金正日総書記同志が我々に残された最も大きな対外事業業績と遺産も朝中親善である」
「金正日総書記が在命中、朝中親善は両国人民の歴史的で、戦略的な選択と仰った。金正日総書記同志は、生涯の最後の時期にも朝中親善の強化発展のために、大きな労苦と心血を注がれた」
「伝統は、歴史の本屋教科書に記録されることで終わるのではなく、実践で継承し、輝かせなければならない。伝統的な朝中親善を代を継いでさらに強固にし発展させなければならないということは、我が党と人民の意志である」
「朝鮮と中国両国人民の共同の財である朝中親善の不敗の生活力が、双方の努力によりこれからもさらに力強く誇示されるだろうという確信を表明」
そして、
「金正恩同志は、お客さんと朝中両国関係の強化発展と相互の関心事に関する問題について意見を交換した」という。
もちろん、形式的には
「対話は一貫して親善的で和気藹々とした雰囲気の中で行われた」となっている。
さて、劉雲山の発言の中で気になる部分は、「全ての分野の親善協力関係を新たな高い段階へ全面的に発展させる使命を抱き、朝鮮を訪問した」、「戦略的中朝親善」という部分である。「新たな高い段階」にするためには、当然北朝鮮側の変化が必要であるわけで、それを「戦略的」に進めるのであれば、なおさらである。中国の頭の中では「戦略的」は「中朝関係」に限られるものではなく、北東アジア情勢、さらに広くは世界情勢まで含むものであることは間違いない。前者に限れば、基本的には朝鮮半島の「平和と安定」、つまりstatus quoを求めており、status quoの不安定要因となっている金正恩政権にもっと安定的になるよう求めるであろう。それには当然「核とミサイル」も含まれ、その裏側には「経済」がある。中朝関係では、「核・ミサイル」と「経済」がコインの表裏の関係となっている。
北朝鮮は、今回、ロケット発射も核実験も見送ったようだ。それが、中国代表団派遣の条件だったのだろうし、70周年行事直後にこれらを北朝鮮が実施すれば、中国の顔に泥を塗ることになる。お父さんも泥を塗ったことはあるが、今回は公に塗ることになるので、そんなことをすれば中国の怒りは当時の比ではないはずだ。
もちろん、北朝鮮も中国訪問団訪朝から得られる果実は計算しているはずで、まずは、「元帥様」の外交成果を朝鮮人民にアピールすることであろう。今回、北朝鮮が中国の要請を受けてロケット・ミサイル実験を見送り、それを中国側が評価するのであれば、年内の金正恩訪中の可能性も出てくる。これが実現すれば、「元帥様」の国内向けの株(外交成果)は一層上がる。
これに関して、「元帥様」もお父さんの例を挙げながら、「金正日総書記が在命中、朝中親善は両国人民の歴史的で、戦略的な選択と仰った」と言っている。自身も「戦略的な選択」ができるのか。そして、「伝統的な朝中親善を代を継いでさらに強固にし発展させ」ることができるのか。少なくとも、今、彼はそれをするよい機会だと思っているのであろう。
実は、今回の中国訪朝団は崔龍海への冷遇へのリベンジの対象になるのではないかと思っていた。昨夜書いた記事でも、ある意味、中国訪朝団の扱いが軽く感じられたので、「やはり」と思っていた。しかし、どうやらその見立ては見事に外れ、到着直後に「元帥様」が接見していたということであった。朴槿恵への厚遇、崔龍海への冷遇に北朝鮮は怒りを感じていたはずであるが、これが薬になったようだ。中国の「戦略」がこれまでのところでは、成功したということになる。
もちろん、一筋縄ではいかぬ北朝鮮であるから、中国から色々な約束を引き出すであろう。記事にはしなかったが、丹東に新義州との間で公益ができる「自由貿易地帯」が少し前に創設された。ここには、北朝鮮側から人々(どのような人々かは不明)がやって来て、中国商人と公益をする。交易額が大きくなると、免税の対象となるということである。新鴨緑江橋も活用できるというわけだ。
ともかく、周辺国にとっては、北朝鮮の安定は絶対である。日本の拉致被害者の帰国も、北朝鮮が安定していなければさらに難しくなるはずである。
年末にかけての中朝関係が注目される。
<追記>
中国訪問団のための宴会が開催され、崔龍海が演説した。
<追記2>
「朝鮮中央TV」が、「錦繍山太陽宮殿」参拝に続く、2つ目のニュースで「接見」を伝えている。

Source: KCTV, 2015/10/10放送中

Source: KCTV, 2015/10/10放送中

Source: KCTV, 2015/10/10放送中

Source: KCTV, 2015/10/10放送中
<追記3>
崔龍海秘書、李昌根副部長などが、9日、中国代表団と会談したと「朝鮮中央通信」が同日付で報じた。「お互いの関心事の意見交換」をしたと。

Source: KCNA

Source: KCNA