「共和国に不法入国して逮捕された米国ニューヨーク大学学生が記者と会見」:引用ながら「独裁者達」 (2015年9月25日 「朝鮮中央通信」)
25日、「朝鮮中央通信」が中国・丹東から北朝鮮に不法入国して逮捕された韓国系米国人大学生の記者会見の様子を報じた。
ソウルで7才まで暮らし、両親と共に米国に渡ったニューヨーク大学で経営学を学ぶ学生、チュ・ウォンムン(21)は、4月22日に丹東から北朝鮮に不法入国して逮捕された。入国目的は、「北朝鮮の実態が知りたくて」ということであったそうであるが、米国旅券を持っていれば、「北朝鮮を見る」だけなのであれば、不法入国しなくても北朝鮮にはいくらでも行けるはずである(韓国系米国旅券保持者の扱いの規定はあるのかもしれないが、北朝鮮を称賛したとして韓国から強制追放させられた韓国系米国旅券保持者の女性もいる)。
目的が純粋であったためか、この学生は、「金正恩元帥様」から「特恵」的な配慮をされ、金日成総合大学をはじめとした、ほとんどが一般観光客が行けるような場所を見学することができた。韓国系米国人にこのタイミングで発言をさせているのは、北朝鮮の「人権問題」に対する反論を間接的にするためであることは間違いない。しかしよく読むと、彼は部分的に興味深いことを言っている。
まず、学生は、「私が米国で生活している時、メディアと社会世論を通して、共和国について見聞きしたことによれば、共和国は『核兵器で武装した悪名高い好戦国』であり、『独裁者達』が権力維持のために人民を残忍に抑圧しながら、自分たちは豪華な生活をしている」とした上で、こうした「認識は間違っていた」と語っている。確かに、学生の言葉どおり、日本を含めた西側の北朝鮮に対する一般的な認識であろう。『労働新聞』HPの日付が変わっていないのでまだ分からないが、もしこの「朝鮮中央通信」の記事をそのまま転載し、上記の学生の言葉を掲載するとすれば、それはなかなか勇気のいることである。それは、朝鮮人民こそが「認識が間違っていた」のかどうか、一番よく分かっているからである。
金日成総合大学を訪れ、「電子図書館には、インターネットと局部網が使えるコンピュータが」あったと言っている。ここでいう「局部網」というのは何だろうか。インターネットで国外の情報も自由に取得できる状況であるならば、「局部網」は北朝鮮国内に限定されたネットワークを指すのかもしれない(あるいは、学内ネット)。
この学生は、「7月19日、地方主権機関の代議員を選挙する姿も見ら」れたという。北朝鮮の「選挙の歌」や投票スローガンから既に明らかになっていることではあるが、学生は「(選挙は)選挙者が誰某に反対したり、候補がお互いに競争をする場ではなく、人民が候補者を支持し、候補者は社会のために服務することを約束する場所であった」と述べている。スローガン等でも「賛成投票をしよう」と呼びかけているが、候補者が複数出てこない時点で我々の選挙の発想あるいは方式とは全く異なっていることが分かる。その系からすれば、国家の指導者たる「第1秘書」なり「第1委員長」が「推戴」され、100%賛成投票で選ばれるというシステムは分かる。「唯一指導体系」なので、「反対」はあり得ず、全ては「唯一」ということなのであろう。
北朝鮮が「孤立して、閉鎖された国」と言われており、「人民が外部世界について知らない」と言われていることについては、「平壌国際映画会館で、西側の日常生活を見せるインド芸術映画『TEZZ』を観覧し、中央テレビや録画機でロシア、中国、インドをはじめとした各国の映画を数多く見た」と語っている。ロシア(正確には、旧ソ連)や中国映画が、「朝鮮中央TV」で放映されていることは確認済みであるが、インド映画は「中央TV」では見たことがない。『TEZZ』を検索してみると、2012年に製作されたアクション映画のようだ。 インドは確かに西側ではあるが、なぜインドなのだろうか。映画の内容にも関わるのだろうが、このDVDを手に入れられたら、一度見てみたいと思う。
さらに、「人民大学習堂では、米国人作家、マーク・トゥエインが書いた小説『ハックルベリー・フィンの冒険』も見た」と言っている。この小説は「世界名作」のカテゴリーに入れられているのだろうから、それがあったとしても不思議な話ではない。もちろん、「世界名作」カテゴリーの存在を知らない西側の一般人にとっては、「米国作家の!」という驚きとなるので、それを狙ったものなのであろう。
と、記事を書き終えて投稿しようと思ったところ、26日付けの『労働新聞』に関連記事が出ていた。しかし、予想どおりというべきか、上に書いた内容は一切書かれていない。後日、「朝鮮中央TV」で「記者会見」の様子が放送されるのかが見物である。

Source: 『労働新聞』、「공화국에 비법입국하였다가 단속된 미국 뉴욕대학 학생 기자들과 회견」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-09-26-0027
ソウルで7才まで暮らし、両親と共に米国に渡ったニューヨーク大学で経営学を学ぶ学生、チュ・ウォンムン(21)は、4月22日に丹東から北朝鮮に不法入国して逮捕された。入国目的は、「北朝鮮の実態が知りたくて」ということであったそうであるが、米国旅券を持っていれば、「北朝鮮を見る」だけなのであれば、不法入国しなくても北朝鮮にはいくらでも行けるはずである(韓国系米国旅券保持者の扱いの規定はあるのかもしれないが、北朝鮮を称賛したとして韓国から強制追放させられた韓国系米国旅券保持者の女性もいる)。
目的が純粋であったためか、この学生は、「金正恩元帥様」から「特恵」的な配慮をされ、金日成総合大学をはじめとした、ほとんどが一般観光客が行けるような場所を見学することができた。韓国系米国人にこのタイミングで発言をさせているのは、北朝鮮の「人権問題」に対する反論を間接的にするためであることは間違いない。しかしよく読むと、彼は部分的に興味深いことを言っている。
まず、学生は、「私が米国で生活している時、メディアと社会世論を通して、共和国について見聞きしたことによれば、共和国は『核兵器で武装した悪名高い好戦国』であり、『独裁者達』が権力維持のために人民を残忍に抑圧しながら、自分たちは豪華な生活をしている」とした上で、こうした「認識は間違っていた」と語っている。確かに、学生の言葉どおり、日本を含めた西側の北朝鮮に対する一般的な認識であろう。『労働新聞』HPの日付が変わっていないのでまだ分からないが、もしこの「朝鮮中央通信」の記事をそのまま転載し、上記の学生の言葉を掲載するとすれば、それはなかなか勇気のいることである。それは、朝鮮人民こそが「認識が間違っていた」のかどうか、一番よく分かっているからである。
金日成総合大学を訪れ、「電子図書館には、インターネットと局部網が使えるコンピュータが」あったと言っている。ここでいう「局部網」というのは何だろうか。インターネットで国外の情報も自由に取得できる状況であるならば、「局部網」は北朝鮮国内に限定されたネットワークを指すのかもしれない(あるいは、学内ネット)。
この学生は、「7月19日、地方主権機関の代議員を選挙する姿も見ら」れたという。北朝鮮の「選挙の歌」や投票スローガンから既に明らかになっていることではあるが、学生は「(選挙は)選挙者が誰某に反対したり、候補がお互いに競争をする場ではなく、人民が候補者を支持し、候補者は社会のために服務することを約束する場所であった」と述べている。スローガン等でも「賛成投票をしよう」と呼びかけているが、候補者が複数出てこない時点で我々の選挙の発想あるいは方式とは全く異なっていることが分かる。その系からすれば、国家の指導者たる「第1秘書」なり「第1委員長」が「推戴」され、100%賛成投票で選ばれるというシステムは分かる。「唯一指導体系」なので、「反対」はあり得ず、全ては「唯一」ということなのであろう。
北朝鮮が「孤立して、閉鎖された国」と言われており、「人民が外部世界について知らない」と言われていることについては、「平壌国際映画会館で、西側の日常生活を見せるインド芸術映画『TEZZ』を観覧し、中央テレビや録画機でロシア、中国、インドをはじめとした各国の映画を数多く見た」と語っている。ロシア(正確には、旧ソ連)や中国映画が、「朝鮮中央TV」で放映されていることは確認済みであるが、インド映画は「中央TV」では見たことがない。『TEZZ』を検索してみると、2012年に製作されたアクション映画のようだ。 インドは確かに西側ではあるが、なぜインドなのだろうか。映画の内容にも関わるのだろうが、このDVDを手に入れられたら、一度見てみたいと思う。
さらに、「人民大学習堂では、米国人作家、マーク・トゥエインが書いた小説『ハックルベリー・フィンの冒険』も見た」と言っている。この小説は「世界名作」のカテゴリーに入れられているのだろうから、それがあったとしても不思議な話ではない。もちろん、「世界名作」カテゴリーの存在を知らない西側の一般人にとっては、「米国作家の!」という驚きとなるので、それを狙ったものなのであろう。
と、記事を書き終えて投稿しようと思ったところ、26日付けの『労働新聞』に関連記事が出ていた。しかし、予想どおりというべきか、上に書いた内容は一切書かれていない。後日、「朝鮮中央TV」で「記者会見」の様子が放送されるのかが見物である。

Source: 『労働新聞』、「공화국에 비법입국하였다가 단속된 미국 뉴욕대학 학생 기자들과 회견」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-09-26-0027