「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話」:国連人権理事会の「調査報告書」と「人権決議」に反発、北朝鮮を擁護した国、北朝鮮公式見解「公開処刑はある」 (2015年9月23日 「朝鮮中央通信」)
2015年9月21日に開催された第30回国連人権理事会における北朝鮮の人権問題に関するパネルディスカッションでの議論に反発する「外務省スポークスマン談話」を北朝鮮が出した。
色々なことを主張しているが、要は「『集まり(パネルディスカッションを指す)』は、米国の対朝鮮敵対視政策の産物であり、人権を口実に我々の『制度転覆』を企てた不純な政治的謀略劇であったことを再び世界に示した」ということである。
パネルディスカッションでの議論でも、北朝鮮代表は「国連人権高等弁務官の声明に反対」し、「国連人権高等弁務官ソウル事務所設置は政治的挑発」であり、同事務所は「米国と敵対追従国」が設置した「敵対政策の道具」にすぎず、「国連人権高等弁務官事務所は、反北朝鮮の側に立ち、北朝鮮の信頼を失墜させ、現政権を転換することを目的としている」ものなので、「理事会の公正性と客観性の原則に反するものである」と主張している。
パネルディスカッションでは、日本も含む多くの国の代表が発言しており、そのほとんどは北朝鮮の人権侵害を非難している。
日本からは飯塚耕一郎氏(拉致被害者家族の会副会長)が参加しており、北朝鮮が拉致被害者情報を「悪用(misuse)」しており、「少なくとも・・・12人の拉致被害者」と「数百人の日本国民」や「それ以外の国の国民」の北朝鮮による拉致は「重要な国際問題」なので、「各国が一丸となって解決すべきだ」などと発言している。
レポートは斜め読みしただけなので見落としがあるかもしれないが、多くの北朝鮮非難発言の中で、北朝鮮の人権状況を擁護あるいは積極的に非難していない国は以下。
・キューバ:「キューバは、(北朝鮮の)体制転換に繋がる如何なる行動も支持しない。『普遍的・定期的なレビュー(UPR: Universal Periodic Review)』のようなメカニズムが対話を強化させる、この問題を扱うには最も適切な方法である」
・中国:「今年は六者会談開催から12周年を迎える年であり、全ての関係国は朝鮮半島情勢を危険にする如何なる行動も控えることを願う」
・ロシア:「人権理事会は政治化されたと烙印を押され、純粋な対話を北朝鮮と行うのではなく、(北朝鮮に対して)理事会は攻撃的な語調の度合いを高めている」
・ベネズエラ:「特定国を指定することは、如何なる国の人権状況を議論するのにも相応しい道ではない。UPRメカニズムこそが今後進むべき正しい道である」
・イラン:「人権問題の政治化に反対する。国連人権高等弁務官は、建設的な方法で北朝鮮と協議し、実際の人権状況の改善に貢献すべきである」
・ベラルーシ:「特定国を指定することに反対する。人権改善に貢献しないので、(人権問題を)政治化すべきではない。真の対話がなされるとき、(人権問題改善は)成功する」
・ラオス:「如何なる国の人権状況改善と人権保護は、協力の原則と関係国の完全な同意に基づく対話を原則とすべきである。人権の実現は、それぞれの国の脈絡に基づくべきである。国際社会は積極的に北朝鮮と協議することを求める」
・ミャンマー:「人権理事会が特定国を指定することに反対という立場を繰り返す。それは、(特定国の指定が)真の対話のための建設的な環境や関係国間の建設的な協力関係を作り出すものではないからである。理事会の業務は、ユニバーサル、普遍性、客観性、非主観の原則に基づくものでなければならない。
これらは北朝鮮をサポートしそうな国々ではあるが、それぞれの発言は必ずしも間違ってはいない。
UNHC, OHCHR, Human Rights Council holds panel discussion on the human rights situation in the Democratic People's Republic of Korea, http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=16475&LangID=E
いくつかの国が『普遍的・定期的なレビュー(UPR: Universal Periodic Review)』メカニズムを主張しているので、こちらについても確認してみた。一読しただけなので正しいかは分からないが、一方的に北朝鮮を非難するのではなく、彼らにも発言や弁明の機会を十分に与えつつ、北朝鮮に人権状況改善を要求し、北朝鮮は「同意する」事項については改善に努めるというメカニズムのようである。
イソップの「北風と太陽」ではないが、確かに攻撃をすればするほど、北朝鮮は反発を強める。その点、UPRは一方的な非難ではないので、北朝鮮も受け入れられるものは受け入れている。もちろん、それが本当に北朝鮮における人権状況の改善に繋がっているのかという疑問は残るが、何もやらないよりは良いことは間違いない。URPの報告を読むと、北朝鮮側からの説明は、どれそれという法律を制定し、状況の改善に努めているというものが多い。人権の話ではなく経済の話であったが、別記事に書いた延吉での国際フォーラムでも、中国人学者が北朝鮮における法律とその執行あるいは実際の運用の乖離について質問し、北朝鮮の学者を困らせていた。北朝鮮としては、それを誰もが納得するように実証することが課題である。
UPR報告書の中で「公開処刑」に関する質問が出されており、北朝鮮代表がそれに以下のように答えている。
「原則として、処刑は公開されていない。公開処刑は、犯した罪が極めて重大であるというように、例外的な場合にのみ行われる」
この発言は北朝鮮が公式的に「公開処刑の存在」を認めたものであるが、「犯した罪が極めて重大」ということからすれば、張成沢が「公式的に」公開処刑された可能性は十分にある。「罪の重大さ」の定義は不明であるが、その基準が低ければ低いほど、「例外的」にではあるものの、頻繁に公開処刑が行われているということになるのであろう。
UNHRC, "Report of the Working Group on the Universal Periodic Review* Democratic People’s Republic of Korea", http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G14/072/22/PDF/G1407222.pdf?OpenElement
色々なことを主張しているが、要は「『集まり(パネルディスカッションを指す)』は、米国の対朝鮮敵対視政策の産物であり、人権を口実に我々の『制度転覆』を企てた不純な政治的謀略劇であったことを再び世界に示した」ということである。
パネルディスカッションでの議論でも、北朝鮮代表は「国連人権高等弁務官の声明に反対」し、「国連人権高等弁務官ソウル事務所設置は政治的挑発」であり、同事務所は「米国と敵対追従国」が設置した「敵対政策の道具」にすぎず、「国連人権高等弁務官事務所は、反北朝鮮の側に立ち、北朝鮮の信頼を失墜させ、現政権を転換することを目的としている」ものなので、「理事会の公正性と客観性の原則に反するものである」と主張している。
パネルディスカッションでは、日本も含む多くの国の代表が発言しており、そのほとんどは北朝鮮の人権侵害を非難している。
日本からは飯塚耕一郎氏(拉致被害者家族の会副会長)が参加しており、北朝鮮が拉致被害者情報を「悪用(misuse)」しており、「少なくとも・・・12人の拉致被害者」と「数百人の日本国民」や「それ以外の国の国民」の北朝鮮による拉致は「重要な国際問題」なので、「各国が一丸となって解決すべきだ」などと発言している。
レポートは斜め読みしただけなので見落としがあるかもしれないが、多くの北朝鮮非難発言の中で、北朝鮮の人権状況を擁護あるいは積極的に非難していない国は以下。
・キューバ:「キューバは、(北朝鮮の)体制転換に繋がる如何なる行動も支持しない。『普遍的・定期的なレビュー(UPR: Universal Periodic Review)』のようなメカニズムが対話を強化させる、この問題を扱うには最も適切な方法である」
・中国:「今年は六者会談開催から12周年を迎える年であり、全ての関係国は朝鮮半島情勢を危険にする如何なる行動も控えることを願う」
・ロシア:「人権理事会は政治化されたと烙印を押され、純粋な対話を北朝鮮と行うのではなく、(北朝鮮に対して)理事会は攻撃的な語調の度合いを高めている」
・ベネズエラ:「特定国を指定することは、如何なる国の人権状況を議論するのにも相応しい道ではない。UPRメカニズムこそが今後進むべき正しい道である」
・イラン:「人権問題の政治化に反対する。国連人権高等弁務官は、建設的な方法で北朝鮮と協議し、実際の人権状況の改善に貢献すべきである」
・ベラルーシ:「特定国を指定することに反対する。人権改善に貢献しないので、(人権問題を)政治化すべきではない。真の対話がなされるとき、(人権問題改善は)成功する」
・ラオス:「如何なる国の人権状況改善と人権保護は、協力の原則と関係国の完全な同意に基づく対話を原則とすべきである。人権の実現は、それぞれの国の脈絡に基づくべきである。国際社会は積極的に北朝鮮と協議することを求める」
・ミャンマー:「人権理事会が特定国を指定することに反対という立場を繰り返す。それは、(特定国の指定が)真の対話のための建設的な環境や関係国間の建設的な協力関係を作り出すものではないからである。理事会の業務は、ユニバーサル、普遍性、客観性、非主観の原則に基づくものでなければならない。
これらは北朝鮮をサポートしそうな国々ではあるが、それぞれの発言は必ずしも間違ってはいない。
UNHC, OHCHR, Human Rights Council holds panel discussion on the human rights situation in the Democratic People's Republic of Korea, http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=16475&LangID=E
いくつかの国が『普遍的・定期的なレビュー(UPR: Universal Periodic Review)』メカニズムを主張しているので、こちらについても確認してみた。一読しただけなので正しいかは分からないが、一方的に北朝鮮を非難するのではなく、彼らにも発言や弁明の機会を十分に与えつつ、北朝鮮に人権状況改善を要求し、北朝鮮は「同意する」事項については改善に努めるというメカニズムのようである。
イソップの「北風と太陽」ではないが、確かに攻撃をすればするほど、北朝鮮は反発を強める。その点、UPRは一方的な非難ではないので、北朝鮮も受け入れられるものは受け入れている。もちろん、それが本当に北朝鮮における人権状況の改善に繋がっているのかという疑問は残るが、何もやらないよりは良いことは間違いない。URPの報告を読むと、北朝鮮側からの説明は、どれそれという法律を制定し、状況の改善に努めているというものが多い。人権の話ではなく経済の話であったが、別記事に書いた延吉での国際フォーラムでも、中国人学者が北朝鮮における法律とその執行あるいは実際の運用の乖離について質問し、北朝鮮の学者を困らせていた。北朝鮮としては、それを誰もが納得するように実証することが課題である。
UPR報告書の中で「公開処刑」に関する質問が出されており、北朝鮮代表がそれに以下のように答えている。
「原則として、処刑は公開されていない。公開処刑は、犯した罪が極めて重大であるというように、例外的な場合にのみ行われる」
この発言は北朝鮮が公式的に「公開処刑の存在」を認めたものであるが、「犯した罪が極めて重大」ということからすれば、張成沢が「公式的に」公開処刑された可能性は十分にある。「罪の重大さ」の定義は不明であるが、その基準が低ければ低いほど、「例外的」にではあるものの、頻繁に公開処刑が行われているということになるのであろう。
UNHRC, "Report of the Working Group on the Universal Periodic Review* Democratic People’s Republic of Korea", http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G14/072/22/PDF/G1407222.pdf?OpenElement