22日、「朝鮮中央TV」で「元帥様」が「軍需工業部門の生活必需品品評会」を視察した。軍需工業部門で働く労働者への生活必需品を自ら生産して供給する、さらには同部門以外の人民にも供給するということのようだ。軍事工業という再生産不可な部門で生活必需品生産を拡大するのであれば、良いことである。本来の意味(技術的な)でのスピルオーバー効果ではないが、生産ラインを変更・拡充することで民用製品をどんどん生産してもらいたいものである。
「録画報道」で紹介された写真を見る限りでは、バケツ、単純な家電製品(扇風機、卓上照明器具)、器、石油コンロ、玩具、乳母車など、ローテク製品ばかりではあるが、ローテクであるだけにいずれも「生活必需品」であることは間違いない。別記事に書いた朝鮮人民ファミリーが空港で乳母車を搭乗口に持ってくれるサービスを見て、「あんなこともやってくれるんだな」と驚いていたのを思いだした。

Source: KCTV, 2015/09/22放送

Source: KCTV, 2015/09/22放送
金正恩パパは、チュエ(ロッドマンによると元帥様の娘の名)の乳母車も押したのだろうか。

Source: KCTV, 2015/09/22放送
さて、上の写真にも写っているが、今回の視察には久しぶりに金ヨジョンが同行している。彼女がはっきりと写っている写真は、後ろ姿も含めて4枚あるが、1枚彼女が鏡の中に写っている写真がある。

Source: KCTV, 2015/09/22放送
これまでもあったように、彼女は「元帥様」の肩付近など、「元帥様」の近くに写っているのだが、上の写真では、例によって「元帥様」の方を見ずによそ見をしているように見える(彼女の立ち位置がよく分からないので、必ずしもそうとは限らないが)。鏡の中でよそ見をしている姿を敢えて出しているというのは、よそ見をするなという彼女に対する警鐘なのか、あるいはよそ見を許可する妹に対する特別待遇なのか、これまでは後者なのかと思っていたが、鏡の中ということからすると、前者のような気がしないでもない。粛清云々はないだろうが、「副部長同志」も少し気をつけた方がよいのかもしれない。
金ヨジョンの立ち位置ですが,またずいぶんと微妙なところに写っていますね.よそ見をするなという警告の意味…なるほど,そうとも言えるかもしれませんね.そこまで推察される映像分析のお力にはつくづく敬服いたします.乳母車という点もやはり教育重視の姿の表れだと思います.
コメントありがとうございます。「鏡の国のアリス」の如く写っていますね。本当に敢えて不思議な写真を採用している理由がよく分かりません。
教育重視の関係では、金日成総合大学の観光学科を観光学部に昇格したと同大学の先生が言っていました。観光重視をしているので、観光教育も重視ということですね。
> 金ヨジョンの立ち位置ですが,またずいぶんと微妙なところに写っていますね.よそ見をするなという警告の意味…なるほど,そうとも言えるかもしれませんね.そこまで推察される映像分析のお力にはつくづく敬服いたします.乳母車という点もやはり教育重視の姿の表れだと思います.
元帥の「軍需工業部門の生活必需品品評会」の視察ですが、何も国のトップが、ポリバケツ・フライパンなどの出来をチェックなんて!不思議な体制ですね。
話し変わりますが、先の羅先地方の水害視察がありました。そのなかに復旧住宅の俯瞰写真がありましたが、なにか中東の古代遺跡の発掘現場(失礼)のようでした。中東は、日干しレンガですが、こちらは、日干しブロックのようなものを積み上げていました。小屋組(屋根の骨組みを作る作業)作業をしているのが、海軍か海兵の連中でした。はじめて見ましたが、なにか素人が工事しているような感じでした。
北朝鮮では、建設部門はすべて、軍隊にあるのでしょうか?ダムからビルまで、軍服らしき制服組と、動員された素人で行われているようですが。(手練りのコンクリートなど、涙ものです。)
超高層ビルからスタジアムまで(新国立競技場は難易度高いですが)、どのような体制なんでしょうか?先生の知見をお願いいたします。
お世話になります。
建前上、北朝鮮は一族支配ではないので、元帥の妹がカメラ目線で写ったり、あまりに多く登場するのはまずいと考えているのではないでしょうか?
というより、これら一連の公開画像を選んでいるのは、金与正自身ではないでしょうか?
いちおう、党宣伝 扇動部副部長ですから。
敢えて元帥の陰に徹する姿勢を見せつつ、存在感だけはアピールして。
鏡の中の彼女はまるでそれをうまく演出しているように思えます。
この辺りは金日成時代に党宣伝 扇動部部長だった金正日に似ていると思います。
案外、名プロデューサーなのかもしれません。
コメントありがとうございます。ポリバケツやフライパンなどの生活必需品が不足しているのが北朝鮮の現実だと思います。そのチェックを「元帥様」がする必要があるのかどうかですが、国内的には「元帥様」が人民生活向上に苦労しているという宣伝にはなりますし、仮にそういう意味があるにしても、そうした必需品が不足していればトップが自ら指導するということはあり得ると思います。世界には、そんなことに全く関心がないトップも多くいるというのが私の認識です。
もちろん、そんなに人民生活を向上したいのなら、「核ミサイル開発を止め、中国のように改革・開放しろ」という議論はありますが、体制維持を放棄しない限り、経済強国「南朝鮮」がいるので、とても困難だと思います。中国の会議で、中国の先生が「開放しろ」とさんざん言っていましたが、北朝鮮の先生の答えは「あなた方とは、生きている条件が違う」でした。外から見れば、「そんなアホな」という話なのでしょうが、北朝鮮の現実はそうではないわけですし、現状、その枠組みの中で「取りあえず」どうするのかを考えなければならないのだと思います。
羅先の水害被害復旧ですが、軍隊、突撃隊、地元人民が行っていると思います。「軍人建設者」は建設技術のノウハウをある程度持っていると思うのですが、それ以外は、取りあえず雨風をしのげる、寒さをしのげるという程度の建物を建設しているのだと思います。私には建築・建設に関する知識は全くありませんが、北朝鮮の「朝鮮芸術映画」などを見ていると、とにかく資材がないので、何でも使ってその代替品を作ろうとしています。羅先でもそれが現実なのではないでしょうか。
平壌の高層ビルやスタジアムのクオリティーについては分かりません。しかし、想像するに、重要建設事業なのでそれなりの資材が提供され、技術的担保もあるのではないかと思います。
> 元帥の「軍需工業部門の生活必需品品評会」の視察ですが、何も国のトップが、ポリバケツ・フライパンなどの出来をチェックなんて!不思議な体制ですね。
> 話し変わりますが、先の羅先地方の水害視察がありました。そのなかに復旧住宅の俯瞰写真がありましたが、なにか中東の古代遺跡の発掘現場(失礼)のようでした。中東は、日干しレンガですが、こちらは、日干しブロックのようなものを積み上げていました。小屋組(屋根の骨組みを作る作業)作業をしているのが、海軍か海兵の連中でした。はじめて見ましたが、なにか素人が工事しているような感じでした。
> 北朝鮮では、建設部門はすべて、軍隊にあるのでしょうか?ダムからビルまで、軍服らしき制服組と、動員された素人で行われているようですが。(手練りのコンクリートなど、涙ものです。)
> 超高層ビルからスタジアムまで(新国立競技場は難易度高いですが)、どのような体制なんでしょうか?先生の知見をお願いいたします。
コメントありがとうございます。公開映像を選んでいるのが金ヨジョンだという説は、韓国メディアによく書かれていますね。それにしても、鏡の中に自分を映して、よそ見をしているというのは何とも不思議というか不気味な感じがします。
ところで、「労働党宣伝扇動部副部長」というのは韓国情報でしょうか。「党副部長」までは北朝鮮の公式情報となっていますが、如何ですか。
> お世話になります。
>
> 建前上、北朝鮮は一族支配ではないので、元帥の妹がカメラ目線で写ったり、あまりに多く登場するのはまずいと考えているのではないでしょうか?
>
> というより、これら一連の公開画像を選んでいるのは、金与正自身ではないでしょうか?
> いちおう、党宣伝 扇動部副部長ですから。
>
> 敢えて元帥の陰に徹する姿勢を見せつつ、存在感だけはアピールして。
> 鏡の中の彼女はまるでそれをうまく演出しているように思えます。
>
> この辺りは金日成時代に党宣伝 扇動部部長だった金正日に似ていると思います。
>
> 案外、名プロデューサーなのかもしれません。
>元帥の陰に徹する姿勢を見せつつ、存在感だけはアピール
私も天馬5号さん説に一票。
同時に金ヨジョンが「余所見」しているとの日本の「友好人士」に如何に読むかの挑戦でもあるのではないでしょうか?
そもそも現地指導を仕切っているのは金ヨジョンであって、この手の仕切り役は周りに指示を与えたり警護に怠りが無いかをチェックするのが仕事で余所見は余所見に非ずなのです。
ただ一般的で無いのは裏方であるはずの彼女が正恩の次に目立っているというところで「もやサマ」の大江アナ的立場であるかのようです。
下二枚の写真は「余所見」ではなく「現場」の人々への気遣いであるのは明白でしょう。
http://blog-imgs-58-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20141127kimuyj1.jpg
http://blog-imgs-55-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20141128180858ff3.jpg
そしてこれ、
http://blog-imgs-58-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20141127kimyj3.jpg
正恩と談笑相手とのシンメトリーの間で、恰も支点であるかのようなの小さめ金ヨジョン。
今回の鏡の中の金ヨジョンも、
http://blog-imgs-82-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20150923kjuexptflv_000250000.jpg
正恩と背中合わせで、
この意図を読み取ると、
正恩には四つの目があり、二つは自分の目、もう二つがヨジョンの目で異なる方向を見られるということ、
あるいは背中合わせで敵と対峙する西部劇のガンマン、
あるいは敵の包囲に両方向へ刀を構えるサムライといったところでしょうか。
ヨジュンの小ささで主従関係を保持しつつも最大限に彼女の存在を誇示する。
それが可能な立ち位置に彼女が居るとの証しでしょう。
お世話になります。
>ところで、「労働党宣伝扇動部副部長」というのは韓国情報でしょうか。「党副部長」までは北朝鮮の公式情報となっていますが、如何ですか。
専ら朝鮮日報など韓国サイドの憶測情報ですが、あながち外れではないと思います。
この辺りも金正日の経歴からの推測ですが、この国の権力中枢入りは血縁ではなく、「功績と忠誠」によるものというのが建前なので、金正恩のカリスマ性を高めることがそれに該当すると考えれば、金与正の就くべきポストはまさに宣伝扇動部の責任者であり、実際にはそれ以上の権限を有しているかもしれませんが、だからこそ敢えて公表はせず、影の存在としているのだと思います。
金正日が宣伝扇動部にいた頃は、その存在や名前さえ公表されず、まだ「党中央」としてさえ登場していない黒子的存在でしたが、昨今公開されている記録映画などから、当時からかなりの権力を有していて、記録フィルムも多く残していて、将来への布石を打っていたことがうかがえます。
いずれ金与正主演で「絶世の愛国者」とか「偉大なる同志」みたいな記録映画が作られる日も来るかもしれません。
コメントありがとうございます。書かれていること納得しつつも、面白くて笑ってしまいました。特に「正恩には四つの目」が気に入りました。
少なくとも拙ブログで取り上げ、皆さんがコメントを下さり話題になっていることからすれば、「日本の友好人士」を巻き込むことについては成功しているのでしょうね。
> >元帥の陰に徹する姿勢を見せつつ、存在感だけはアピール
>
> 私も天馬5号さん説に一票。
> 同時に金ヨジョンが「余所見」しているとの日本の「友好人士」に如何に読むかの挑戦でもあるのではないでしょうか?
>
> そもそも現地指導を仕切っているのは金ヨジョンであって、この手の仕切り役は周りに指示を与えたり警護に怠りが無いかをチェックするのが仕事で余所見は余所見に非ずなのです。
> ただ一般的で無いのは裏方であるはずの彼女が正恩の次に目立っているというところで「もやサマ」の大江アナ的立場であるかのようです。
>
> 下二枚の写真は「余所見」ではなく「現場」の人々への気遣いであるのは明白でしょう。
>
http://blog-imgs-58-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20141127kimuyj1.jpg
>
http://blog-imgs-55-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20141128180858ff3.jpg
>
> そしてこれ、
>
http://blog-imgs-58-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20141127kimyj3.jpg
> 正恩と談笑相手とのシンメトリーの間で、恰も支点であるかのようなの小さめ金ヨジョン。
>
> 今回の鏡の中の金ヨジョンも、
>
http://blog-imgs-82-origin.fc2.com/d/p/r/dprknow/20150923kjuexptflv_000250000.jpg
> 正恩と背中合わせで、
> この意図を読み取ると、
>
> 正恩には四つの目があり、二つは自分の目、もう二つがヨジョンの目で異なる方向を見られるということ、
> あるいは背中合わせで敵と対峙する西部劇のガンマン、
> あるいは敵の包囲に両方向へ刀を構えるサムライといったところでしょうか。
>
> ヨジュンの小ささで主従関係を保持しつつも最大限に彼女の存在を誇示する。
> それが可能な立ち位置に彼女が居るとの証しでしょう。
コメントありがとうございます。金正日の件、最近も「金日成総合大学」在学中の彼を紹介する新しい「朝鮮記録映画」が放送されていますね。
私の短い北朝鮮研究の中では全くカバーされていないのですが、金敬姫がどのように登場して、事実上の失脚直前の地位まで上り詰めたのか。この辺りを調べてみると、今の金ヨジョンと繋がる部分があるのではないかと思っています。
> お世話になります。
>
> >ところで、「労働党宣伝扇動部副部長」というのは韓国情報でしょうか。「党副部長」までは北朝鮮の公式情報となっていますが、如何ですか。
>
> 専ら朝鮮日報など韓国サイドの憶測情報ですが、あながち外れではないと思います。
>
> この辺りも金正日の経歴からの推測ですが、この国の権力中枢入りは血縁ではなく、「功績と忠誠」によるものというのが建前なので、金正恩のカリスマ性を高めることがそれに該当すると考えれば、金与正の就くべきポストはまさに宣伝扇動部の責任者であり、実際にはそれ以上の権限を有しているかもしれませんが、だからこそ敢えて公表はせず、影の存在としているのだと思います。
>
> 金正日が宣伝扇動部にいた頃は、その存在や名前さえ公表されず、まだ「党中央」としてさえ登場していない黒子的存在でしたが、昨今公開されている記録映画などから、当時からかなりの権力を有していて、記録フィルムも多く残していて、将来への布石を打っていたことがうかがえます。
>
> いずれ金与正主演で「絶世の愛国者」とか「偉大なる同志」みたいな記録映画が作られる日も来るかもしれません。