「朝鮮人民具最高司令官金正恩同志が3.8国際婦女節記念銀河水音楽会【女性は花だね】を観覧された」(2012年3月9日「労働新聞」)
金正恩さんが音楽会を鑑賞したというニュースだ。
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-09-0001&chAction=L
このニュースにはあまり注目しなかったが、このニュースを報じた「中央日報日本語版」の記事「28歳の金正恩の前で歌を歌う81歳の北朝鮮軍幹部」で引っかかった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120310-00000010-cnippou-kr
この記事によると、「81歳の呉克烈(オ・グクリョル)国防委員会副委員長も家族と一緒に金正恩(28歳)の前に立った。」とのことであるが、労働新聞の記事や「朝鮮中央TV」での報道を見ても、呉克烈さんが「歌った」とは必ずしも解釈できない。
というのは、呉克烈さんの前に李リョンハさんという党中央委員会第一副部長が「夫婦二重唱」を歌ったとされているが、第一副部長というのは相対的に高い地位であるとはいえ、どの委員会の第一副部長かも分からないばかりか、金正日葬儀委員会の名簿にも名前が挙がっていない。ただ、昨年10月に金正日さんが銀河水演奏会に行ったときは同行して多様で、同行者として名前を報じられている。この状況からして、李リョンハさんというのは、音楽系の幹部ではないのであろうか。また、金ウォンフン人民軍総政治局組織担当副局長も「夫婦二重唱」を歌ったとされている。
一方、呉克烈さんについては、きちんと読むと、「呉克烈国防委員会副委員長の家族が歌う重唱」となっているし、「労働新聞」の記事冒頭の主要同行者紹介に呉克烈さんの名前は出ていない。同序列24位の金正角さんを紹介しておきながら、序列29位の呉克烈さんを同行者として紹介もせず、歌だけ歌わせるということはあるまい。ちなみに、夫婦で歌を歌った2名は、葬儀委員会の名簿に名前が見当たらない人々である。(ただし、金ウォンフンさんに対しては、最近昇格人事があった)
「労働新聞」を読んでの私の判断は、呉克烈さんの家族が重唱をしたということで、高齢のご本人は歌っていないということである。韓国の新聞としては、「高齢者にまで歌わせた」という方が衝撃的なのかもしれないが、少し冷静になって欲しい。
「夫婦二重唱」を歌った2名も、恐らく年齢的には金正恩さんより上であろう。ただ、彼らが銀河水公演の終わりの部分でステージに上がり歌ったのは「中央日報」が言うように、「忠誠競争」の一環なのだろうか。単に、党中央に近い人々で、歌が好きな夫婦や家族がいたと考えた方が普通ではないのか。歌好きの朝鮮民族であれば、金正恩さんの前で歌うという光栄以前に、ステージで歌うという喜びが大きいであろう。また、過去記事にも書いたが、軍部隊訪問時に兵士にカラオケを歌わせてとても嬉しそうな顔をしている金正恩さんを見ると、純粋な、カラオケ好きなのであろう。
本当は、自分がステージに上がって歌いたいところなのだろうが、さすがに最高司令官がオープンな場所でそこまではできないということであろう。
<追記: 2012年3月13日 23:14>
You Tubeを見ていたら、この音楽会の動画があった。
http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&list=UUknqqNd3-joIjWzf1Jn4oVQ&index=7&feature=plcp
「労働新聞」記事による私の判断は間違っていた。呉克烈さんは、子供や孫と共にステージの上に上がり確かに歌っている。ただ、歌を歌わせるためにひきずりだしたというよりも、人民軍の英雄として、幸せな家庭を築いて暮らすおじいさんとして、ステージに上がらせたといった方が良いのではないだろうか。
また、別記事で話題にした李春姫アナウンサーがステージで踊る場面もある。この動画、金正恩さんが嬉しそうな顔をしながら聞いている場面もたびたび映し出されるので、始めから終わりまで見る必要があるが、ともかく2時間近い長編である。
<追記2: 2012年3月14日 06:47>
動画から上に書いた内容との関連場面をいくつか切り出した。まず、李リョンハさん。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
動画の中では、歌手が会場を回りながら、李リョンハ夫妻をステージに連れてきている。李リョンハさんは、以外とすんなりとステージに上がったものの、歌はあまりうまくなかった。
次は、金ウォンフンさん。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
この人は、上に書いたように昨年10月にも金正日さんと演奏会に同行しているが、どうやら、この人というよりも奥さんと音楽との関係が強いのかもしれない。というのは、金ウォンフンさんの奥さんは、歌がとてもうまい。もしかすると、元プロ歌手だったのかもしれない。若くはないが、非常にいい声をしている。
そして、次は問題の呉克烈さん。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
呉さん自身は、歌も歌っているが、曲の途中、一人で詩の朗読をしている。呉克烈さんは、1988年2月に呉振宇人民武力部長(当時)と対立し、総参議長を突然解任されたが、金正日さんの後押しにより同年9月には党民間防衛副委員会部長に返り咲いている(詳細は、平井久志、『北朝鮮の指導体制と後継』、岩波書店、2011。pp.246-247)。こんなこともあったので、家族共々ステージに上がったと考えられないこともないのだが。
そして、踊る金春姫アナウンサー。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
この場面では、多くの夫婦が会場のあちこちで踊っている。金春姫さんも夫と思わしき男性と共に踊っている。そして、踊っている人々を見回しながら、金正恩さんはとても嬉しそうな顔をしている。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
依然として、この動画を通しで見たわけではないが、忠誠大会というよりも和気藹々とした感じである。時々、涙している朝鮮人民も映し出されるが、別に金正日さんの話で泣いているわけではなく、政治的メッセージは含まれていない「母」という詩を聞いて泣いている。亡くなった自分の母親を想い出しているのであろうか。
「ウリミンジョクキリ」さいとにも
http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=8748
としてこの動画が掲載されているようであるが、最近のサーバー状態では、700MB以上のこの動画をとてもダウンロードできる状態ではない。
通しで動画を見た後にでも、ここで演奏されている曲目などについて、もう少し記事を書いてみたい。
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-09-0001&chAction=L
このニュースにはあまり注目しなかったが、このニュースを報じた「中央日報日本語版」の記事「28歳の金正恩の前で歌を歌う81歳の北朝鮮軍幹部」で引っかかった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120310-00000010-cnippou-kr
この記事によると、「81歳の呉克烈(オ・グクリョル)国防委員会副委員長も家族と一緒に金正恩(28歳)の前に立った。」とのことであるが、労働新聞の記事や「朝鮮中央TV」での報道を見ても、呉克烈さんが「歌った」とは必ずしも解釈できない。
というのは、呉克烈さんの前に李リョンハさんという党中央委員会第一副部長が「夫婦二重唱」を歌ったとされているが、第一副部長というのは相対的に高い地位であるとはいえ、どの委員会の第一副部長かも分からないばかりか、金正日葬儀委員会の名簿にも名前が挙がっていない。ただ、昨年10月に金正日さんが銀河水演奏会に行ったときは同行して多様で、同行者として名前を報じられている。この状況からして、李リョンハさんというのは、音楽系の幹部ではないのであろうか。また、金ウォンフン人民軍総政治局組織担当副局長も「夫婦二重唱」を歌ったとされている。
一方、呉克烈さんについては、きちんと読むと、「呉克烈国防委員会副委員長の家族が歌う重唱」となっているし、「労働新聞」の記事冒頭の主要同行者紹介に呉克烈さんの名前は出ていない。同序列24位の金正角さんを紹介しておきながら、序列29位の呉克烈さんを同行者として紹介もせず、歌だけ歌わせるということはあるまい。ちなみに、夫婦で歌を歌った2名は、葬儀委員会の名簿に名前が見当たらない人々である。(ただし、金ウォンフンさんに対しては、最近昇格人事があった)
「労働新聞」を読んでの私の判断は、呉克烈さんの家族が重唱をしたということで、高齢のご本人は歌っていないということである。韓国の新聞としては、「高齢者にまで歌わせた」という方が衝撃的なのかもしれないが、少し冷静になって欲しい。
「夫婦二重唱」を歌った2名も、恐らく年齢的には金正恩さんより上であろう。ただ、彼らが銀河水公演の終わりの部分でステージに上がり歌ったのは「中央日報」が言うように、「忠誠競争」の一環なのだろうか。単に、党中央に近い人々で、歌が好きな夫婦や家族がいたと考えた方が普通ではないのか。歌好きの朝鮮民族であれば、金正恩さんの前で歌うという光栄以前に、ステージで歌うという喜びが大きいであろう。また、過去記事にも書いたが、軍部隊訪問時に兵士にカラオケを歌わせてとても嬉しそうな顔をしている金正恩さんを見ると、純粋な、カラオケ好きなのであろう。
本当は、自分がステージに上がって歌いたいところなのだろうが、さすがに最高司令官がオープンな場所でそこまではできないということであろう。
<追記: 2012年3月13日 23:14>
You Tubeを見ていたら、この音楽会の動画があった。
http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&list=UUknqqNd3-joIjWzf1Jn4oVQ&index=7&feature=plcp
「労働新聞」記事による私の判断は間違っていた。呉克烈さんは、子供や孫と共にステージの上に上がり確かに歌っている。ただ、歌を歌わせるためにひきずりだしたというよりも、人民軍の英雄として、幸せな家庭を築いて暮らすおじいさんとして、ステージに上がらせたといった方が良いのではないだろうか。
また、別記事で話題にした李春姫アナウンサーがステージで踊る場面もある。この動画、金正恩さんが嬉しそうな顔をしながら聞いている場面もたびたび映し出されるので、始めから終わりまで見る必要があるが、ともかく2時間近い長編である。
<追記2: 2012年3月14日 06:47>
動画から上に書いた内容との関連場面をいくつか切り出した。まず、李リョンハさん。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
動画の中では、歌手が会場を回りながら、李リョンハ夫妻をステージに連れてきている。李リョンハさんは、以外とすんなりとステージに上がったものの、歌はあまりうまくなかった。
次は、金ウォンフンさん。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
この人は、上に書いたように昨年10月にも金正日さんと演奏会に同行しているが、どうやら、この人というよりも奥さんと音楽との関係が強いのかもしれない。というのは、金ウォンフンさんの奥さんは、歌がとてもうまい。もしかすると、元プロ歌手だったのかもしれない。若くはないが、非常にいい声をしている。
そして、次は問題の呉克烈さん。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
呉さん自身は、歌も歌っているが、曲の途中、一人で詩の朗読をしている。呉克烈さんは、1988年2月に呉振宇人民武力部長(当時)と対立し、総参議長を突然解任されたが、金正日さんの後押しにより同年9月には党民間防衛副委員会部長に返り咲いている(詳細は、平井久志、『北朝鮮の指導体制と後継』、岩波書店、2011。pp.246-247)。こんなこともあったので、家族共々ステージに上がったと考えられないこともないのだが。
そして、踊る金春姫アナウンサー。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
この場面では、多くの夫婦が会場のあちこちで踊っている。金春姫さんも夫と思わしき男性と共に踊っている。そして、踊っている人々を見回しながら、金正恩さんはとても嬉しそうな顔をしている。

Source: uriminzokkiri, You Tube, http://www.youtube.com/watch?v=DRgc9HOOEAM&context=C4db4f3eADvjVQa1PpcFOj3d50nl-a_9mUrIuunrLOJwsAhL00Sfk=
依然として、この動画を通しで見たわけではないが、忠誠大会というよりも和気藹々とした感じである。時々、涙している朝鮮人民も映し出されるが、別に金正日さんの話で泣いているわけではなく、政治的メッセージは含まれていない「母」という詩を聞いて泣いている。亡くなった自分の母親を想い出しているのであろうか。
「ウリミンジョクキリ」さいとにも
http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=8748
としてこの動画が掲載されているようであるが、最近のサーバー状態では、700MB以上のこの動画をとてもダウンロードできる状態ではない。
通しで動画を見た後にでも、ここで演奏されている曲目などについて、もう少し記事を書いてみたい。