「北と南は高位級緊急接触の成果に基づき関係改善と統一の道に進まなければならない」:金養建が記者の質問に回答、南北和解ムード、北京での戦勝70周年記念式典に「元帥様」出席か (2015年8月27日 「朝鮮中央TV」)
8月27日、「朝鮮中央TV」で、金養建が「朝鮮中央通信社」記者の質問に答えた形で「北と南は高位級緊急接触の成果に基づき関係改善と統一の道に進まなければならない」という報道をした。「朝鮮中央通信」等にも出るであろうと待っていたのだが、接続不可になっているので、とりあえずテレビの音声からその内容を日本語にして起こしておく。
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周知のとおり、北と南は8月22日から24日まで、板門店で高位級緊急接触を持ち、最近造成された深刻な事態を収拾し、北南関係を改善するための諸般の問題を幅広く話し合ったことに基づき、「共同報道文」を発表した。
「共同報道文」には、北南間の武力衝突を防ぎ、緊張を緩和させ、北南関係の発展を図っていこうという双方の意思と立場が反映されている。
今回の接触をとおして、朝鮮半島はもちろん、東北アジア全体を混乱の坩堝に陥れる一触即発の危険が解消され、北南間の平和と安全、和解と協力のための劇的展開の契機が作られたことは、大変幸いなことである。
我々は、北と南が危険千万な危機状況の中で、向き合って座り、事態の深刻さについて共感し、真摯に話し合い、共同の課題について合意することで、北南関係における禍を福に転換させることができる画期的局面を切り開いたことについて嬉しく思う。
今、北と南が、予測することができない衝突で非難し合う険悪な事態を防ぎ、和解の手を握ったことについて国内外が一様に歓迎している。
北と南は、今回の接触で得られた合意の精神を大切にし、極端な危機を克服したことに留まるのではなく、北南関係を統一を施行する建設的な方向に前進させていかなければならない。
今回の接触が、危機の火を消すためだけとなっては、大きな意味がないと考える。北と南は、対話と協議を通じて、お互いの不信と対決を解消し、大胆に関係改善の道に進まなければならない。
「共同報道文」で合意したように、当局間の対話と協議を発展させ、お互いの関心事となっている問題を解決していき、様々な分野で交流と協力を活性化させていかなければならない。そのためには、北と南がやっと達成し、緩和の道に転向させた現情勢の流れをしっかりと維持、管理していくことが何よりも重要である。
今回のように、北と南が原因不明の事件に巻き込まれ、情勢を悪化させて極端な状況に向かうようなことはなくさなければならない。
事実、北と南は、そもそも今回のような非正常な事態に巻き込まれてはならなかった。双方は、今回の事態を教訓とし、北と南の間に複雑な問題が発生した際、理性と節度を失ってはならず、そのような事態が発生しないよう共に努力して行かなければならない。
北と南は、これ以上過去に縛られずに、民族の将来から考え、遠い未来を見詰めながら、関係改善と統一の道にお互いの手を取り合って進まなければならない。
北南関係の急速な発展を望まない勢力が存在するであろうから、我々はそうした勢力に対して注意しなければならない。そうした点から、北と南は、突発的な事態が発生しないようにすることに対して特段注目しなければならず、我々民族同士の理念をしっかりと固守していかなければならない。
祖国解放70周年となる意味深い今年、北南関係で大転換、大変革を達成し、自主統一の大通路を切り開こうという我々の立場は一貫している。我々は、今回の北南高位級緊急接触の精神に基づき、全ての朝鮮民族の志向と念願に合うよう、北南関係改善のために積極的に努力する。
朝鮮労働党政治局委員、党中央委員会秘書 金養建
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過去記事で紹介した黄炳瑞人民軍総政治局長のステートメントでは、南側を非難するトーンが感じられたが、今回の金養建のステートメントからはそれは感じられない。「北南合意」がなされたことについて、「大変幸いである」、「嬉しく思う」、「(国際社会が)歓迎している」と続けざまに評価している。このように「合意」を高く評価しているのは、南側に対するメッセージだけではなく、この「合意」に深く関わった「元帥様」への賛辞という側面もあるのであろう。
「原因不明の事件に巻き込まれ」ないようにし、「これ以上過去に縛られず」とも言っているが、これは、天安号事件により発動された「5.24措置」解除を求めているものであろう。「合意文」では、この点について触れられていないが、これまでも北朝鮮は「5.24措置」解除を南北関係改善の前提条件としてきたので、当然、「緊急接触」ではこの問題についても議論されたはずである。解除ついては、韓国世論の「合意」の評価如何であろう。
コメントにも書いたように、韓国大統領と国連事務総長が北京で開かれる戦勝70周年行事に軍事パレード参観も含めたフルスケジュールで参加することになったと報じられている。「元帥様」が出席するのか否かは明らかにされていないが、中国から求められていた核・ミサイル放棄と南北関係改善の二つの条件のうち、後者をある程度クリアしたと中国側に判断されれば、「元帥様」のサプライズ式典参加もあり得ると思う。式典には、ロシア大統領、韓国大統領、さらには国連事務総長までも参加することになっているので、北京で中国が仲介する形で、「元帥様」がこうしたリーダーと会見することになれば、中国外交は高く評価されることになる。それだけではなく、大使館関係者さえ出席させない日本、駐北京大使を出席させる米国を差し置いて、中国主導の東北アジア国際関係秩序構築の足がかりを作ることができることになるという側面もある。習近平は、式典後に米国を訪問しオバマと会談することが決まっているので、その成果を持って行けば、米国としても外面的にはそれを評価せざるを得ないであろう。
Sputnik日本、「中国外務省、プーチン大統領は9月の戦勝記念式典での最名誉ゲスト」、http://jp.sputniknews.com/politics/20150820/777609.html
Record China、「抗日戦勝70周年式典、北京の日本大使館関係者は欠席―中国紙」、http://www.recordchina.co.jp/a117583.html
問題は、「元帥様」が「オオタカ1号機」で北京に向けて飛び立つかであるが、モスクワほど遠くない地で、北朝鮮ともゆかりの深い戦勝70周年を祝賀し、加えて各国首脳と会見できるのであれば、失うものはないはずである。特に、南北和解ムードの中であれば、朴槿恵と握手をすることも全く「現情勢」に反するものではない。
このようなシナリオが現実となれば、「原因不明」の「(地雷爆発)事件」も大きなプロットの一部であったという気がしないでもない。

Source: KCTV, 2015/08/27放送
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周知のとおり、北と南は8月22日から24日まで、板門店で高位級緊急接触を持ち、最近造成された深刻な事態を収拾し、北南関係を改善するための諸般の問題を幅広く話し合ったことに基づき、「共同報道文」を発表した。
「共同報道文」には、北南間の武力衝突を防ぎ、緊張を緩和させ、北南関係の発展を図っていこうという双方の意思と立場が反映されている。
今回の接触をとおして、朝鮮半島はもちろん、東北アジア全体を混乱の坩堝に陥れる一触即発の危険が解消され、北南間の平和と安全、和解と協力のための劇的展開の契機が作られたことは、大変幸いなことである。
我々は、北と南が危険千万な危機状況の中で、向き合って座り、事態の深刻さについて共感し、真摯に話し合い、共同の課題について合意することで、北南関係における禍を福に転換させることができる画期的局面を切り開いたことについて嬉しく思う。
今、北と南が、予測することができない衝突で非難し合う険悪な事態を防ぎ、和解の手を握ったことについて国内外が一様に歓迎している。
北と南は、今回の接触で得られた合意の精神を大切にし、極端な危機を克服したことに留まるのではなく、北南関係を統一を施行する建設的な方向に前進させていかなければならない。
今回の接触が、危機の火を消すためだけとなっては、大きな意味がないと考える。北と南は、対話と協議を通じて、お互いの不信と対決を解消し、大胆に関係改善の道に進まなければならない。
「共同報道文」で合意したように、当局間の対話と協議を発展させ、お互いの関心事となっている問題を解決していき、様々な分野で交流と協力を活性化させていかなければならない。そのためには、北と南がやっと達成し、緩和の道に転向させた現情勢の流れをしっかりと維持、管理していくことが何よりも重要である。
今回のように、北と南が原因不明の事件に巻き込まれ、情勢を悪化させて極端な状況に向かうようなことはなくさなければならない。
事実、北と南は、そもそも今回のような非正常な事態に巻き込まれてはならなかった。双方は、今回の事態を教訓とし、北と南の間に複雑な問題が発生した際、理性と節度を失ってはならず、そのような事態が発生しないよう共に努力して行かなければならない。
北と南は、これ以上過去に縛られずに、民族の将来から考え、遠い未来を見詰めながら、関係改善と統一の道にお互いの手を取り合って進まなければならない。
北南関係の急速な発展を望まない勢力が存在するであろうから、我々はそうした勢力に対して注意しなければならない。そうした点から、北と南は、突発的な事態が発生しないようにすることに対して特段注目しなければならず、我々民族同士の理念をしっかりと固守していかなければならない。
祖国解放70周年となる意味深い今年、北南関係で大転換、大変革を達成し、自主統一の大通路を切り開こうという我々の立場は一貫している。我々は、今回の北南高位級緊急接触の精神に基づき、全ての朝鮮民族の志向と念願に合うよう、北南関係改善のために積極的に努力する。
朝鮮労働党政治局委員、党中央委員会秘書 金養建
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過去記事で紹介した黄炳瑞人民軍総政治局長のステートメントでは、南側を非難するトーンが感じられたが、今回の金養建のステートメントからはそれは感じられない。「北南合意」がなされたことについて、「大変幸いである」、「嬉しく思う」、「(国際社会が)歓迎している」と続けざまに評価している。このように「合意」を高く評価しているのは、南側に対するメッセージだけではなく、この「合意」に深く関わった「元帥様」への賛辞という側面もあるのであろう。
「原因不明の事件に巻き込まれ」ないようにし、「これ以上過去に縛られず」とも言っているが、これは、天安号事件により発動された「5.24措置」解除を求めているものであろう。「合意文」では、この点について触れられていないが、これまでも北朝鮮は「5.24措置」解除を南北関係改善の前提条件としてきたので、当然、「緊急接触」ではこの問題についても議論されたはずである。解除ついては、韓国世論の「合意」の評価如何であろう。
コメントにも書いたように、韓国大統領と国連事務総長が北京で開かれる戦勝70周年行事に軍事パレード参観も含めたフルスケジュールで参加することになったと報じられている。「元帥様」が出席するのか否かは明らかにされていないが、中国から求められていた核・ミサイル放棄と南北関係改善の二つの条件のうち、後者をある程度クリアしたと中国側に判断されれば、「元帥様」のサプライズ式典参加もあり得ると思う。式典には、ロシア大統領、韓国大統領、さらには国連事務総長までも参加することになっているので、北京で中国が仲介する形で、「元帥様」がこうしたリーダーと会見することになれば、中国外交は高く評価されることになる。それだけではなく、大使館関係者さえ出席させない日本、駐北京大使を出席させる米国を差し置いて、中国主導の東北アジア国際関係秩序構築の足がかりを作ることができることになるという側面もある。習近平は、式典後に米国を訪問しオバマと会談することが決まっているので、その成果を持って行けば、米国としても外面的にはそれを評価せざるを得ないであろう。
Sputnik日本、「中国外務省、プーチン大統領は9月の戦勝記念式典での最名誉ゲスト」、http://jp.sputniknews.com/politics/20150820/777609.html
Record China、「抗日戦勝70周年式典、北京の日本大使館関係者は欠席―中国紙」、http://www.recordchina.co.jp/a117583.html
問題は、「元帥様」が「オオタカ1号機」で北京に向けて飛び立つかであるが、モスクワほど遠くない地で、北朝鮮ともゆかりの深い戦勝70周年を祝賀し、加えて各国首脳と会見できるのであれば、失うものはないはずである。特に、南北和解ムードの中であれば、朴槿恵と握手をすることも全く「現情勢」に反するものではない。
このようなシナリオが現実となれば、「原因不明」の「(地雷爆発)事件」も大きなプロットの一部であったという気がしないでもない。

Source: KCTV, 2015/08/27放送