「モランボン楽団」はどうなったのか? (2015年8月11日 「朝鮮中央TV」)
「青峰楽団」の記事には、たくさんのコメントを頂いた。いつもコメントを下さる方に深く感謝すると共に、これらの方々の北朝鮮音楽に対する深い造詣に敬意を表する。
まず、拙記事の訂正をしなければならないのだが、「金正恩楽団の組織宣布」という記述は誤りであった。思い込みとは恐ろしいもので、「軽音楽団」と「朝鮮中央通信」の記事に書かれていたものを勝手に「金正恩楽団」と読んでいたようだ。
「青峰楽団」については、過去記事で引用した7月28日の「朝鮮中央通信」記事以外では報道されていない。コメントで頂いているように、ラジオ放送で同楽団の曲を流しているようであるが、確認できた限りにおいては「朝鮮中央TV」ではその後、この曲は流していないようである(かなりおおざっぱな確認なので精度は低いが)。
「もう一つの楽団」、「新たな楽団」という「朝鮮中央通信」の記事で使われている表現についてもコメントを頂いた。実は、私もこれをどう読むのか迷った。「もう一つの新たな楽団」と続けて書かれていれば、「モランボン楽団」とは別に新しい楽団を作ったと解したのであるが、「もう一つの楽団」と「新たな楽団」が別の文の中で使われていたので、「一つの楽団が作られ解散し、新しい楽団が作られた」と読んだ。そのため、「モランボン楽団は解体された」のではないかと書いたのだが、今思えば拙速だったかもしれない(しかも、上記のように「金正恩楽団」という読み間違いが追い打ちを掛けた)。
では、「モランボン楽団」はどうなったのであろうか。「朝鮮中央TV」では、モランボン楽団の楽曲を流し続けている。同楽団に何かが起こったとしても、「元帥様」が「将軍様」の意を引き継いで創設し、称賛した楽団なので、張成沢のように消し去ることはできないであろう。また、同楽団の楽曲の放送を中止すれば、金正恩称賛ソングの「ほとんど」がなくなってしまうことにもなる。
「朝鮮中央TV」を7月上旬まで遡りながらおおざっぱではあるが見てみると、「モランボン楽団」の扱いについて興味深い変化が見られる。確認できた限りにおいては、7月15日までは「モランボン楽団の公演の中から」という同楽団の楽曲を数曲繋げて放送する番組を放送していた。
「モランボン楽団の公演の中から」(キャプチャーは7月9日の同番組)

Source: KCTV, 2015/07/09放送
この番組では、北朝鮮の風景などの合間に、モランボン楽団の演奏者や歌手の姿が写っている。(キャプチャーは7月9日の同番組)

Source: KCTV, 2015/07/09放送
ところが、7月19日を境に「モランボン楽団の公演の中から」という番組はなくなり、「モランボン楽団の音楽」という番組に変わっている。オープニングに使われる楽曲もデザインも同じなので見落としやすいが、番組名は明らかに変更されている。
「モランボン楽団の音楽」(キャプチャーは8月8日の同番組)

Source: KCTV, 2015/08/08放送
番組名称変更後に放送された楽曲までは未確認であるが、この番組では「モランボン楽団」の演奏風景は出てこず、北朝鮮の風景などが使われている。
7月上旬以前に遡り、「モランボン楽団」番組をきちんと確認していないので、「公演の中から」と「音楽」が並行して放送されていた可能性はもちろんある。しかし、7月28日の「朝鮮中央通信」報道のほぼ10日前(北朝鮮地方選挙当日)から演奏風景を出さない措置がなされたとすると、解体まではないにしても、同楽団に何らかの変化が起こった可能性はある。この辺り、確認には時間がかかりそうなので、少しずつ進めていこうと思う。
「モランボン重唱組」が「モランボン楽団」の歌手を指すものではないというコメントも頂いた。これについては、私の北朝鮮研究の短さと浅さから、何とも判断が付かない。
7月27日の「戦勝節」には、『金正恩将軍賛歌』との関連もあるのか、「モランボン楽団」も「青峰楽団」も登場しなかったが、今後、様々なオケージョンがあるので、どの楽団が登場するのか注視する必要がありそうだ。
<追記:9月8日>
韓国系メディアが「モランボン楽団」解散説を伝えている。根拠にしているのは、上で紹介している写真であるが、さらによく見ると、文字の後ろにある画面からも楽団員の姿が消されている。張成沢映像抹消ほどではないにしても、かなり徹底している。
Yonhap News Agency, N. Korea's all-female music band disappears from broadcasts, http://english.yonhapnews.co.kr/northkorea/2015/09/07/72/0401000000AEN20150907004400315F.html
上で使った動画と同じ動画であるが、キャプチャのタイミングを少し変えたもの。

Source: KCTV, 2015/07/09放送
コメントでもモランボン楽団にいたアコーディオン奏者が「功勲国家合唱団」で演奏しているという情報を頂いているが、やはり解散なのだろうか。「青峰とモランボンのコラボ」で出した新曲情報もコメントで頂いているが、確認できた限りでは「朝鮮中央TV」では放送されていないし、北朝鮮系ウェブメディアにも掲載されていないようである。その後、ラジオでは流されているのであろうか。
<追記2>
コメントを頂き、返信を書いていたのだが、書いているうちに面白い話になったので、記事に反映させておくことにする。
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記事にも書いた通り、動画中の演奏風景だけではなく、オープニングの顔写真まで消されているのには、やはり何か意味があるのだと思います。音楽は継続放送しているので、連座粛清まではないと思うのですが、一部の団員に不祥事があった可能性はありますね。例えば、芸術人大会で壇上に上がったような人物(歌唱組の人物)が不祥事を起こしていれば、これは張成沢並みの映像抹消をすることでしょう。解散していないのであれば、しばらく冷却期間をおいてほとぼりを冷ましてから、問題となった団員を抜いた形で演奏風景放送再開をするのかもしれません。
「青峰楽団」その繋ぎ兼エクスキューズに使われるのではないでしょうか。上で「歌唱組」と書いたのは、敢えて「モランボン重唱組から」と報道しておき、一部歌手を「モランボン楽団」から離脱させたようにしておき、実際は、処分されているのかもしれません。教えいて頂いた動画を見ていても、「青峰楽団」は、結局あそこで歌っている5~6人の歌手のことを言っているような気がしてなりません。花火を打ち上げておき、敢えて「功勲国家合唱団」とロシアに派遣したのも、「モランボン楽団」から耳目を「青峰楽団」に向けさせるためなのかもしれませんね。
「青峰楽団」の奏者を見せないのも、発表した新曲の演奏は「モランボン楽団」がしているからなのかもしれません。そうなると、別の方がコメントで情報を下さった「モランボン楽団と青峰楽団のコラボ」の意味も分かります。
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まず、拙記事の訂正をしなければならないのだが、「金正恩楽団の組織宣布」という記述は誤りであった。思い込みとは恐ろしいもので、「軽音楽団」と「朝鮮中央通信」の記事に書かれていたものを勝手に「金正恩楽団」と読んでいたようだ。
「青峰楽団」については、過去記事で引用した7月28日の「朝鮮中央通信」記事以外では報道されていない。コメントで頂いているように、ラジオ放送で同楽団の曲を流しているようであるが、確認できた限りにおいては「朝鮮中央TV」ではその後、この曲は流していないようである(かなりおおざっぱな確認なので精度は低いが)。
「もう一つの楽団」、「新たな楽団」という「朝鮮中央通信」の記事で使われている表現についてもコメントを頂いた。実は、私もこれをどう読むのか迷った。「もう一つの新たな楽団」と続けて書かれていれば、「モランボン楽団」とは別に新しい楽団を作ったと解したのであるが、「もう一つの楽団」と「新たな楽団」が別の文の中で使われていたので、「一つの楽団が作られ解散し、新しい楽団が作られた」と読んだ。そのため、「モランボン楽団は解体された」のではないかと書いたのだが、今思えば拙速だったかもしれない(しかも、上記のように「金正恩楽団」という読み間違いが追い打ちを掛けた)。
では、「モランボン楽団」はどうなったのであろうか。「朝鮮中央TV」では、モランボン楽団の楽曲を流し続けている。同楽団に何かが起こったとしても、「元帥様」が「将軍様」の意を引き継いで創設し、称賛した楽団なので、張成沢のように消し去ることはできないであろう。また、同楽団の楽曲の放送を中止すれば、金正恩称賛ソングの「ほとんど」がなくなってしまうことにもなる。
「朝鮮中央TV」を7月上旬まで遡りながらおおざっぱではあるが見てみると、「モランボン楽団」の扱いについて興味深い変化が見られる。確認できた限りにおいては、7月15日までは「モランボン楽団の公演の中から」という同楽団の楽曲を数曲繋げて放送する番組を放送していた。
「モランボン楽団の公演の中から」(キャプチャーは7月9日の同番組)

Source: KCTV, 2015/07/09放送
この番組では、北朝鮮の風景などの合間に、モランボン楽団の演奏者や歌手の姿が写っている。(キャプチャーは7月9日の同番組)

Source: KCTV, 2015/07/09放送
ところが、7月19日を境に「モランボン楽団の公演の中から」という番組はなくなり、「モランボン楽団の音楽」という番組に変わっている。オープニングに使われる楽曲もデザインも同じなので見落としやすいが、番組名は明らかに変更されている。
「モランボン楽団の音楽」(キャプチャーは8月8日の同番組)

Source: KCTV, 2015/08/08放送
番組名称変更後に放送された楽曲までは未確認であるが、この番組では「モランボン楽団」の演奏風景は出てこず、北朝鮮の風景などが使われている。
7月上旬以前に遡り、「モランボン楽団」番組をきちんと確認していないので、「公演の中から」と「音楽」が並行して放送されていた可能性はもちろんある。しかし、7月28日の「朝鮮中央通信」報道のほぼ10日前(北朝鮮地方選挙当日)から演奏風景を出さない措置がなされたとすると、解体まではないにしても、同楽団に何らかの変化が起こった可能性はある。この辺り、確認には時間がかかりそうなので、少しずつ進めていこうと思う。
「モランボン重唱組」が「モランボン楽団」の歌手を指すものではないというコメントも頂いた。これについては、私の北朝鮮研究の短さと浅さから、何とも判断が付かない。
7月27日の「戦勝節」には、『金正恩将軍賛歌』との関連もあるのか、「モランボン楽団」も「青峰楽団」も登場しなかったが、今後、様々なオケージョンがあるので、どの楽団が登場するのか注視する必要がありそうだ。
<追記:9月8日>
韓国系メディアが「モランボン楽団」解散説を伝えている。根拠にしているのは、上で紹介している写真であるが、さらによく見ると、文字の後ろにある画面からも楽団員の姿が消されている。張成沢映像抹消ほどではないにしても、かなり徹底している。
Yonhap News Agency, N. Korea's all-female music band disappears from broadcasts, http://english.yonhapnews.co.kr/northkorea/2015/09/07/72/0401000000AEN20150907004400315F.html
上で使った動画と同じ動画であるが、キャプチャのタイミングを少し変えたもの。

Source: KCTV, 2015/07/09放送
コメントでもモランボン楽団にいたアコーディオン奏者が「功勲国家合唱団」で演奏しているという情報を頂いているが、やはり解散なのだろうか。「青峰とモランボンのコラボ」で出した新曲情報もコメントで頂いているが、確認できた限りでは「朝鮮中央TV」では放送されていないし、北朝鮮系ウェブメディアにも掲載されていないようである。その後、ラジオでは流されているのであろうか。
<追記2>
コメントを頂き、返信を書いていたのだが、書いているうちに面白い話になったので、記事に反映させておくことにする。
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記事にも書いた通り、動画中の演奏風景だけではなく、オープニングの顔写真まで消されているのには、やはり何か意味があるのだと思います。音楽は継続放送しているので、連座粛清まではないと思うのですが、一部の団員に不祥事があった可能性はありますね。例えば、芸術人大会で壇上に上がったような人物(歌唱組の人物)が不祥事を起こしていれば、これは張成沢並みの映像抹消をすることでしょう。解散していないのであれば、しばらく冷却期間をおいてほとぼりを冷ましてから、問題となった団員を抜いた形で演奏風景放送再開をするのかもしれません。
「青峰楽団」その繋ぎ兼エクスキューズに使われるのではないでしょうか。上で「歌唱組」と書いたのは、敢えて「モランボン重唱組から」と報道しておき、一部歌手を「モランボン楽団」から離脱させたようにしておき、実際は、処分されているのかもしれません。教えいて頂いた動画を見ていても、「青峰楽団」は、結局あそこで歌っている5~6人の歌手のことを言っているような気がしてなりません。花火を打ち上げておき、敢えて「功勲国家合唱団」とロシアに派遣したのも、「モランボン楽団」から耳目を「青峰楽団」に向けさせるためなのかもしれませんね。
「青峰楽団」の奏者を見せないのも、発表した新曲の演奏は「モランボン楽団」がしているからなのかもしれません。そうなると、別の方がコメントで情報を下さった「モランボン楽団と青峰楽団のコラボ」の意味も分かります。
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