「ソウルのど真ん中に張り出された【ネズミ博】の絵」(2012年3月7日「朝鮮中央通信」)

Source: KCNA, http://www.kcna.kp/
こんな絵が「朝鮮中央通信」で配信された。同通信によると、「韓国日報」がソウル・チョン路のバス停に貼られていた「李明博逆徒を断罪する」絵だと伝えているということである。「韓国日報」にこの絵が掲載されたのかどうか、また掲載されたとしてどのような記事で掲載されたのかはまだ未確認である。
「朝鮮中央通信」の解説では、「逆徒がナチス式の制服を着て、拳を振り上げ、帽子にはナチスマークがある」、「餌を見つけた野獣のような貪欲のよだれであろうか」、「ネクタイにはスコップが描かれており、左腕の腕章には英文字でG(逆徒をネズミと揶揄している)が書かれている」としている。英語のG音は、朝鮮語のネズミを表す[쥐]に近い音である。
このところの北朝鮮報道を見ていると、李明博さんはいろいろな動物にされている。蔑称として一般的に南北で使われる「犬」からはじまり、「ネズミ」、そして今朝見た「朝鮮中央TV」の「20時報道」の中では「虫」と言われていた。
この絵は「朝鮮中央通信」のウェブサイトに掲載されたものであるが、「朝鮮中央TV」や「労働新聞」など国内向けのメディアには、これほど当人に似た絵は出てこないようである。スローガンの背景となる絵は、誰とも分からぬ人々が、朝鮮人民の銃で撃たれている様子などであるし、人民軍の訓練の標的も絵ではなく「李明博」などの文字である。
北朝鮮は、李明博「逆徒」の顔を朝鮮人民にさらしたくないのであろうか。
<追記:2012年3月8日 13:07>
「韓国日報」にこの絵についての記事が出ていた。
http://news.hankooki.com/ArticleView/ArticleView.php?url=society/201112/h2011120920580621950.htm&ver=v002
記事によると、在米韓国人作家が8日の夜1~3時の間にチョン路一帯にこの絵を500枚貼ったそうである。これに対し、警察は、「軽犯罪法違反(広告物無断貼附など)に該当し、風刺内容が冒涜罪と名誉毀損罪に該当するかも検討する」としているとのことである。
この在米韓国人作家は、ある大学のギャラリーでオバマ大統領や胡錦濤主席の風刺画も展示したそうで、張り出したことに対しては「芸術家としての作業活動であり、国連人権憲章19条にある表現の自由を正当に享受するもの」であると主張しているとのことである。
以前にも、YouTubeで公開された韓国人彫刻家の李明博さんの銅像を破壊する動画を北朝鮮メディアが取り上げたという記事を書いたが、今回もまた北朝鮮にうまく使われた形だ。
上に書いたように、この絵は「朝鮮中央通信」で海外向けに紹介されているだけであるが、こんな絵を500枚もソウルのど真ん中に貼り付けても南朝鮮人民が「微罪」だけで「公開処刑」にならないという事実を知れば、金正恩さんの写真冒涜で激怒している朝鮮人民はさぞかし驚くか不思議に思うことであろう。
<追記2:2012年3月9日 08:54>
「最高司令部スポークスマン宣言を受けての各界の反応」というシリーズで、軍人、会社員、市民、学生などの激怒の様子が連日伝えられている。今朝は、その(8)があった。そこで紹介される一つのシーンの中で、都市部に野戦病院のテントを立て、そこで今回の事態を受け人民軍に「復帰」した看護師や医師が怒っている。動画では、人を助けるべき彼らですら、李明博「逆徒」を殺すと怒っている。外科医という女性は、メスを手に持ちながら「このメスで逆徒一味を切り裂いてやりたい心情」と言っている。そして、その直後に医療用のハサミなど刃物が映し出される。
http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=8724
実は、この演出、工場などでも使われている。例えば、製鉄所では労働者が「逆徒を電気炉の中にたたき入れてやりたい」と発言した後に燃えたぎる電気炉が映し出される、石材加工工場では労働者が「李明博を切り裂いてやりたい」と発言した後に、石材を切断する回転のこぎりが大写しになる。
軍医のメスも同系の演出であろうが、さすがに医療従事者がメスで人殺しというのはいただけない。
この記事の中で、標的は「李明博」という文字だけであると書いたが、この動画では李明博という文字の下に顔が描かれている標的が登場した。ただ、この標的、顔の部分は打ち抜かれており、顔の様子は分からない。ただ、服装はいかにもヤンキー(ちなみに、「ヤンキー」はアメリカ人の意)っぽい。