記事にするのが遅れたが、7月29日、「火星14型2次試験発射成功」に関連し、トランプが中国批判のツイートをした。
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私は、中国に大変失望した。我々の愚かな過去の指導者は、中国に貿易で毎年何千億ドルも儲けさせておきながら・・・
Donald J. Trump認証済みアカウント @realDonaldTrump 7月29日
I am very disappointed in China. Our foolish past leaders have allowed them to make hundreds of billions of dollars a year in trade, yet...
・・・中国は北朝鮮問題について
何もせず、口先だけだ。我々は、このような状況が続くことをもう認めない。中国は問題を解決できるのに!
Donald J. Trump認証済みアカウント @realDonaldTrump 7月29日
...they do NOTHING for us with North Korea, just talk. We will no longer allow this to continue. China could easily solve this problem!
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一方、国連安保理米国大使ハーレイは、米国が招集した安保理会議で次のように言い放った。
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「北朝鮮への圧力を大きく強めないような安保理追加決議は価値がない」
"An additional Security Council resolution that does not significantly increase the international pressure on North Korea is of no value," she said.
「実際、北朝鮮の独裁者に対して国際社会が彼の安全保障上の脅威に対処する意思がないというメッセージを送るだけなので、何もしない方がましだ」
"In fact it is worse than nothing because it sends the message to the North Korean dictator that the international community is unwilling to seriously challenge him."
Source:
BBC, North Korea: US says 'no value' in UN security council meeting, http://www.bbc.com/news/world-asia-40768870
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安保理軽視とも言えるハーレーのこの発言は、米国が単独行動に出ることをちらつかせながら北朝鮮に圧力を蹴るためのブラフであろうが、北朝鮮は「4月の威嚇だけで終わったトランプ政権」見ているので、こうしたブラフが通じる可能性は低い。
その系で、トランプが安倍と電話会談をし、両者は「中国、ロシアをはじめ国際社会が圧力を高めていかなければならない。私たちもさらなる行動を取っていかなければならないとの認識で完全に一致した」という。
『JIJI.COM』、「中ロへ働き掛け強化=対北朝鮮「さらなる行動」―日米首脳一致」、https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170731-00000011-jij-pol
これもハーレー発言がブラフであることを裏付けるような話で、結局のところ、中国とロシアに頼る以外ないという現実を示している。
中国はというと、トランプのツイートを受けて『新華社』が次のような論評を出している。
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米国は対中貿易赤字と北朝鮮核問題の非難を止めるべきだ
US should stop blaming China for trade deficit, Korean nuclear issue
明らかに、中米関係は、世界で最も重要な二国間系であり、トランプ米国大統領もよく分かっている。しかし、かれは依然として、2つの無関係なことを結びつけながら、不当に中国を非難している。
Clearly, China-US relations are the world's most important bilateral relations and US President Donald Trump certainly knows this. Yet he still chooses to unfairly blame China for two unrelated issues.
彼のツイートで、トランプは米国の対中貿易赤字と朝鮮半島情勢を結びつけた。
In his latest tweets, Trump linked the US trade deficit with China to the situation on the Korean Peninsula.
「私は、中国に大変失望した。我々の愚かな過去の指導者は、中国に貿易で毎年何千億ドルも儲けさせておきながら、中国は北朝鮮問題について何もせず、口先だけだ」、「我々は、このような状況が続くことをもう認めない。中国は問題を解決できるのに!」と彼はツイートした。
"I am very disappointed in China. Our foolish past leaders have allowed them to make hundreds of billions of dollars a year in trade, yet they do NOTHING for us with North Korea, just talk," Trump wrote. "We will no longer allow this to continue. China could easily solve this problem!"
米国の指導者は、中国を非難する最近のツイートの中で少なくとも3つの間違いを犯している。
The US leader erred in at least three aspects in his most recent tweets blasting China.
第一に、中米感の貿易不均衡についてである。それはいくつかの要因、とりわけ米国向けの工業製品のほとんどが中国国内の工場で組み立てられているという事実に起因している。つまり、中国は生産ラインの最終段階であるがために、非難されているのである。
First, regarding the trade imbalance between China and the United States: It is the result of multiple factors, mostly attributed to the fact that China is the final assembly plant for most of the manufactured goods destined for the United States. That means China is taking the blame simply because it is the last stop of the production line.
中国は、米国に対する貿易赤字を継続させる意図がないこことは明確にしており、米国と積極的に協力しながら貿易均衡を取り戻す努力をしている。
China has made it clear that it does not intend to maintain a trade surplus with the United States and has been actively working with the US side to explore ways to restore the trade balance.
また、そうした非難は、貿易から両国が得る利益に何の価値もなく、米国は貿易の過程で搾取されているわけでもない。
Also, it is worth noting that both countries have benefited from bilateral trade and the United States is by no means being exploited in the process.
第二に、朝鮮半島の核問題は、数十年間にも及ぶ米国と北朝鮮の間の敵対関係によりもたらされたものである。
Second, on the Korean nuclear issue, the crux of the matter is the decades-long animosity between the United States and the Democratic People's Republic of Korea (DPRK).
北朝鮮の近隣国として、中国は朝鮮半島の非核化から遠のいていけくことは失うものが多いことを知っており、壊れやすい朝鮮半島の平和を維持し、問題の早期解決のために、中国は六者会談の開催を含む絶大な努力をしてきている。
As a neighbor of the DPRK, China knows well it has a lot to lose if the Korean Peninsula slides further away from denuclearization, so it has been making strenuous efforts, including organizing the Six Party Talks, to maintain the fragile calm on the peninsula and work toward an early solution to the problem.
第三に、米国が莫大な貿易赤字を、いわゆる「寛容に許している」ことに対して、北朝鮮の核問題の「早期解決」で報いるべきだというのは馬鹿げている。なぜなら、2つの問題は完全に異なる次元の問題であり、トレード・オフの関係にあると考えることはできないからである。
Third, it is absurd to suggest that China could repay the so-called US generosity of allowing a huge trade deficit by "easily resolving" the Korea nuclear issue, as the two issues are in completely different domains and can not be considered tradeoffs for each other.
中国は米国との貿易均衡を求めているし、朝鮮半島の恒久の平和を願っている。しかし、これらの目標を達成するために、中国政府は、米国の失敗を理由に中国に対する非難ばかり積み重ねない、もっと協力的なホワイトハウスのパートナーが必要なのである。
China wants balanced trade with the United States, and it also hopes for lasting peace on the Korean Peninsula. However, to realize these goals, Beijing needs a more cooperative partner in the White House, not one who piles blame on China for the United States' failures.
Global Times, Xinhua, US should stop blaming China for trade deficit, Korean nuclear issue, http://www.globaltimes.cn/content/1058841.shtml
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中国は、米国の要求を聞く様子は全くない。ロシアについては、ロシア政府のコメントはまだ確認していないが、中国とさほど変わらないであろう。
「4月の脅しだけ」からも分かるように、北朝鮮に対する軍事行動は「テーブルの上に乗せられている」と脅すのが精一杯、また北朝鮮に言わせると最低1度は「失敗した」とされる「斬首作戦」も結果としては軍事行動と同じ結果を招くことになるので、現実的ではない。
「斬首作戦」というと、しばしばバンカー・ミサイルで「元帥様」の隠れ場所を攻撃すればよいというような報道を見かけるが、バンカー・ミサイルだろうが何だろうが、ミサイル攻撃をすることは、軍事行動と何ら変わらない。逆に、「元帥様」のように頻繁に姿を現している人であれば、地上で「現地指導」をしている時に、普通のミサイルを撃ち込めば「斬首」することができる。しかしそれでは軍事攻撃と変わらないので、やるのであれば工作員を使った暗殺、しかも金正男暗殺以上に証拠を残さない暗殺作戦を遂行する必要がある。これは非常に困難であろうし、仮に成功しても北朝鮮は「下手人」を「米帝CIAと傀儡国情院」と決めつけるであろうから、軍事攻撃と結果は変わらない。唯一結果を変えるためには、「斬首」が行われたのと同時に、新たなリーダー、それも「白頭の血統」があり、朝鮮人民を納得させやすい人物が必要となるが、過去記事にも書いた通り、金正男も死亡し、現実的に「元帥様」を代替できる人物はいなくなった。
さすれば、米国に残された道は、北朝鮮との直接対話しかない。北朝鮮が、「多発的・連発的」にパワーアップされたミサイルを発射し続けているのも、「対話に応じることなく、放置しておけば、我々はどんどんミサイル能力を向上させていくぞ」というメッセージであろう。特に、短期間で2発の弾道ミサイルを打ち上げ、2回目に到達高度を高めているのは、実は、1度目の発射で敢えて「火星-14」型の能力を出し切らなかった可能性がある。Savelsberg先生が指摘しているように、2回目に発射した「火星-14」型が、1度目に発射した「火星-14」型の単なる「軽量化バージョン」であるのか、2段目の燃料を全て使った飛行パターンを選択したのであれば、なおさらその可能性は高まる。
トランプは、中国がやらないと言っている圧力の強化をこれ以上迫るのではなく、北朝鮮を対話のテーブルに引き出される仲介役を申し入れるべきである。米国がそのようなステップを踏んだ上で、北朝鮮が応じないのであれば、中国も米国の要求をある程度聞き入れ、北朝鮮との経済関係で圧力を強める可能性も充分にある。
金永南がイラン大統領の就任式に出席するために31日、イランに向けて出発したが、イランの核問題を巡る対米交渉の経験も聞いてくるのではないだろうか。イラン・モデルは、北朝鮮にはそのまま適用することはできないが、参考にはなるし、北朝鮮がもしそれに関心を示しているのであれば、それは良い兆候である。
イランへ向けての出発を前に、平壌空港で閲兵をする金永南。

Source: KCTV, 2017/07/31