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    「<TV連続劇>旺載山 第12部」:朝鮮の仏陀は金日成、花子は高英姫と同じ済州島出身 (2015年3月18日 「朝鮮中央TV」)

    テレビドラマ『旺載山』の第12部が昨夜放映された。ストーリーはクライマックスに向かいどんどん盛り上がってきている。今回も、ドラマの中で交わされた興味深い会話を紹介しておく。

    高貴な血を引く家系の娘の縁談が破綻し、その娘は家出をしてしまう。そしてたどり着いたのは山寺。「シム・チョルソン」は、娘の縁談相手である友人を助けるために、娘を連れ戻しに山寺に向かう。「シム・チョルソン」は、前夜、「石田」と「花子」に酔って仕組まれた、前出の高貴な家系の先祖の墓の盗掘事件に巻き込まれ、大怪我をしていた。

    高貴な血を引く家系の宗家の人々に袋だたきにされた「シム・チョルソン」(真ん中)。宗家の長の老人(杖を持っている)が「シム・チョルソン」を墓穴に生き埋めにすることを命じている。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    「シム・チョルソン」は盗掘とは無関係で、その事実を知らせて宗家間の争いを止めようとしただけなのだが、盗賊と勘違いされる。彼は、袋だたきにされるが、決して手を挙げようとはしない。これぞ民族を愛する真の革命家の姿ということである。「日帝」とは戦うが、朝鮮人には手を出さない。第12部まででは、革命のためには家族も捨て、殺人をもいとわない「共産主義革命、無産革命、マルクスレーニン主義」を掲げる「宗派」も登場しているが、その「宗派」のボスも「石田」の策略で苦境に陥っているものの、死んではいない。「シム・チョルソン」は、あくまでも「宗派」を接収していこうという考えである。

    話を戻して、怪我をした身で山寺までやって来た「シム・チョルソン」は、僧侶に家でした女性を家に帰してくれるよう頼む。この場面での会話である。

    チョルソン:「お坊様、木鐸で民衆の精神を叩いてはどうですか」
    僧侶:「何をいっておられる。人が仏堂で精進できるのは、仏教の世界に仏がおられるからです。朝鮮が独立偉業を成し遂げるためには、二千万の白衣同胞(朝鮮人)を独立に導く朝鮮の仏がいなければなりません」
    チョルソン:「ええ」
    僧侶:「ヨルバルというのは、極楽世界での幸福を意味する言葉だが、朝鮮を独立させ、民族をヨルバルに導く新しい仏がいなければ、皆、自分を捨てて従うのではないだろうか」
    チョルソン:「そのとおりです、お坊様。今、間島には倭敵(日本人の敵)を打ち砕き、数十万の関東軍をあたふたさせている朝鮮の大将軍が現れました」
    僧侶:「そうなのか。私が聞いた噂は嘘ではなかったんだな」
    チョルソン:「はい」
    僧侶:「それで、その人の年はいくつなんだ」
    チョルソン:「倭敵が名前を聞いただけで震え上がる金日成将軍様は、20代の若い将軍です」
    僧侶:「そうなのか。私は君の言葉を信じる。軍事に長け、民衆をヨルバルに導くその方こそが、朝鮮の釈迦であり、仏であられる」と、喜ぶ僧侶(下、写真)。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    まさか、金日成が「朝鮮の釈迦」に繋がるとは思わなかったが、北朝鮮で仏教がキリスト教ほど敵対視されていないということとも関連しているのかも知れない。平壌のキリスト教会は何度か紹介したことはあるが、映画やドラマの中に良いキリスト教の牧師や神父が出てきた記憶はない。見た限りでは、「米帝」の手先として朝鮮人を迫害する役柄ばかりである。

    昨日書いた記事に、「もしかすると、「花子」の出生の秘密がこれから出てくるのかもしれない」と書いたのだが、その予想が当たった。

    「シム・チョルソン」は、彼に一目惚れした「スミエ」に招かれて(「石田」が呼んでいると騙されて)、一緒に食事をすることになった。このドラマの中での「スミエ」の扱いは微妙で、一方では尻軽な「倭女」、もう一方では政略結婚により歌手として生きる自分の夢を壊された可愛そうな女ということになっている。後者は、彼女に同情的に設定されているのではなく、「石田」と「日帝」の極悪非道ぶりを強調するための設定なのであろう。下は、歌手として活躍していた頃の思い出を語る「スミエ」。
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    Source: KCTV, 2015/03/19放送

    この場面で、またおもしろい会話がある。
    チョルソン:「ご主人様(石田)は本当に幸福な方です」
    スミエ:「なぜですか」
    チョルソン:「草原では花子お嬢様が太陽のように明るい光を放ち、家ではスミエ奥様が月のように暗闇を明るくしてくれますから」
    スミエ:「ええ、このスミエが人の光を反射する月程度の存在というのですか。花子が何だというのですか。私たちが助けなかったら餓死していた、あんな朝鮮クソ女が」
    チョルソン:「では、花子お嬢様はご主人様の本当の妹ではないのですか」
    スミエ:「お嬢様、何がお嬢様ですか。済州島で馬を育てていたようなクソ女が」

    「シム・チョルソン」は、その真実を解明するために、その夜、牧場で長く働いているソウルから来た老人に「花子」の素性について質問する。しかし、老人は「そのことに触れて殺された人がいる」と直ぐには話そうとしないが、チョルソンに促されて話し出す。

    老人:「この牧場に済州島から来た馬の世話人がいました。マ・ジノといい、年は私と同じぐらいでした。その年の晩春、花子お嬢様が牧場に初めてきた時、ジノは花子お嬢様を見てとても驚き、『済州島にいた、ウヘじゃないか』と尋ねました。私たちは、意味が分からず2人を見ているだけでした」
    チョルソン:「それで、花子はなんと言ったのですか」
    老人:「驚いた様子で彼をしばらく見ていて、『この人、おかしいんじゃない』と言って行ってしまいました。その夜、ジノは寝言で間違いなく済州島のウヘだと言っていました」
    チョルソン:「しかし、なぜ久しぶりに見た人を花子と断定できたのですか」
    老人:「多分、ジノは済州島にいたウヘのお母さんと錯覚したんだと思います。容姿がそっくりだと言っていました」

    さて、「花子」が済州島出身の朝鮮人だということが暴露されてきた。こう考えると、昨日の記事で紹介した朝鮮人を蔑み、朝鮮人であることを自嘲するような台詞も理解することができる。今後、「花子」がどのように扱われるのか、「日帝」の手先として死んでいくのか、朝鮮人であることを自覚して抗日武装闘争に加わるのか。あるいは、最後まで日本人として生きるも、自分の過去を悔いて、究極の場面で抗日武装闘争を助けて死ぬのか。予想としては、最後のパターンだと思う。

    過去記事の冒頭に、なぜ2007年に放映されて以来、放映がなかったのだろうかと書いた。「花子」の行く末を見なければならないし、済州島出身者はたくさんいるので即断できないが、高英姫との重複部分があるのかもしれない。高英姫の父は済州島出身の在日朝鮮人。高英姫はその子。もし、「花子」の父親が済州島から日本に渡った在日朝鮮人でというような設定なっていると、高英姫の過去と重なる部分が多い。

    もちろん、このドラマはドラマのために書き下ろされたものではなく、金チョンスの長編小説『旺載山』を原作としている。uriminzokkiriでこの原作小説ファイルを「検索」してみたが、出てこなかった。ただし、uriminzokkiriの検索機能は、しばしばきちんと検索してくれないことがあるので、もしかしたらあるのかもしれない。

    北朝鮮でのこの小説の扱いも含め、この辺りが興味深い。

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    漢字について

    いつも興味深く拝見しています。
    ところで、ワンジェサンは旺「戴」山ではなく、旺「載」山ではないですか?

    Re: 漢字について

    コメントありがとうございます。ご指摘の漢字の件、よく分かりません。日本語版のwikipediaでも混用されています(wikipediaならではなのかもしれませんが)。韓国語版のwikipediaには「載」が使われています。一番良いのは、北朝鮮の官営メディアの中国語版でどのような漢字を使っているのか調べることですが、3月6日の朝鮮語版の『労働新聞』には「ワンジェ山革命博物館」の記事が出ているものの、中国語には翻訳されていないようでした。もう少し、韓国側の公的サイトを検索してみると何か見つかるかもしれません。合わせて、中国朝鮮族の先生にも質問してみます。

    > いつも興味深く拝見しています。
    > ところで、ワンジェサンは旺「戴」山ではなく、旺「載」山ではないですか?
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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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