「金正恩同志の特使、ロシア連邦訪問のために出発」:崔龍海党中央政治局常務委員会委員一行ロシアへ出発、トップで報道、朝露の思惑、崔龍海の位置、金正恩訪ロなるか、機体 (2014年11月17日 「朝鮮中央TV」)
17日、「朝鮮中央TV」の「20時報道」で、崔龍海一行が金正恩の特使としてロシアを訪問するとトップで報じた。崔龍海特使のロシア訪問については、14日夜の「20時報道」でも報じていたが、トップではなかった。14日と17日の報道順序を比較すると以下のとおりである。
14日
1.金正恩同志の革命活動ニュースを各国で報道
2.金正日同志回顧委員会がアンゴラで結成
3.敬愛する金正恩同志の特使がロシア連邦を訪問
17日
1.敬愛する金正恩同志の特使として崔龍海委員がロシアへ向け出発
2.金正恩同志の労作をネパール新聞が掲載
3.金正日追慕イラン・イスラム教連合団委員会がテヘランで結成
とこのような順序となっており、海外メディアが金正恩の「労作」を紹介したというニュースよりも先に報道している。
今回ロシアを訪問するのは、「金桂官第1外務次官、朝鮮人民軍の努光鉄副総参謀長、朝鮮労働党中央委員会の李永哲副部長、対外経済省の李光根次官」であり、金正恩の特使に加え、外務、人民軍、労働党、経済とワンセットそろっている。
「朝鮮中央通信」、「김정은동지의 특사 로씨야련방 방문을 위하여 출발」(日本語訳)、http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this
ロシアと米欧の間でウクライナ問題が発生してから、ロシアは急速に北朝鮮に再接近しているようだという記事は書いたが、公式的にこれほど大きなミッションを受け入れるのは金正恩体制発足以来初めてである。ロシアの対米欧関係で北朝鮮カードを有効に使うという目論見と、北朝鮮の中国への依存度を低下させようという目論見が一致したのであろう。羅先シリーズにも書いたと思うが、羅先港の埠頭の中では、ロシアが建設中の埠頭が最も新しく、動きが活発であった。
金正恩は、依然として海外訪問はできていない。本来であれば、中国を初訪問地として選択すべきところなのであろうが、その中国訪問が実現していない。北朝鮮は中国への働きかけは続けているのであろうが、中国側の事情で受け入れていないのであろう。中国としては、国レベルでの北朝鮮との関係を強化しなくても、地域レベル、東北三省と北朝鮮との経済関係だけで、北朝鮮の安定は取りあえず維持できるとみているのであろう。エボラウィルス遮断を理由中朝国境を10月末に閉じた北朝鮮が、その後、国境を明けたかどうかは確認していないが、エボラ予防と中国マネーの流入のバランスを考えると、長期間の国境閉鎖は北朝鮮にとって決して最善の選択とはいえない。
今回の訪朝で、年内の金正恩のロシア訪問が決まれば、これまで乏しかった彼の外交成果を出し、新年を迎えることができる。もちろん、ロシアを訪問しただけでは足りないので、経済的な協力をロシアから取り付ける、例えば、パイプラインを通してロシアから天然ガスや重油の供給を受ける取り決めなどができれば、これは経済的には大きな成果となる。もちろん、ロシアも国際的に核問題を抱えている北朝鮮とどうつきあうのか、ウクライナ問題とのバランスの中で微妙な選択が必要となってくるであろう。
北朝鮮は、こうした国際関係の微妙なバランスの中での駆け引きには非常に長けた国なので、今回もそれができるのかどうか。特に、お父さんの時代までできていたこの「わざ」を金正恩時代にもできるのか。崔龍海の同行者である金桂官はお父さんの時代からの外交官なので、交渉という意味では彼が活躍するのであろう。
それにしても、最近、崔龍海の株が上がっているような気がしてならない。黄炳瑞と人民軍総政治局長を交代した後、少し影が薄れたような時期もあったが、映像を見ている限り、黄炳瑞以上に金正恩との近さが強調されているような感じがしてならない。人民軍総政治局長の職から外して、忠誠心を高めさせたということなのかどうかは分からないが、黄炳瑞と崔龍海をお互いに牽制させ、第二の張成沢が出てこないようにしようということなのかもしれない。
訪ロ前に平壌空港に見送りに来た黄炳瑞とにこやかな感じで握手をする崔龍海。

Source: KCTV, 2014/11/17放送
特別機の前で記念撮影をする崔龍海一行。

Source: KCTV, 2014/11/17放送
金正恩専用機かは不明であるが、機種が同じで尾翼に人共旗が描かれているところからすると、「専用機」が貸し出されたのかもしれない。

<追記>
18日の「20時報道」は、「特使一行が17日にモスクワに到着した」と伝えた。時間については明らかにしていないので、韓国側の報道にあるように、一行が乗った飛行機が故障で平壌に引き返し、出発が遅れたのかどうかは分からない。空港には、「ロシア外務省関係者や在露北朝鮮大使か出迎えに来た」とのことである。ロシア側の報道もざっと調べてみたが、一行のその後の行動についてはまだ報じられていない。
14日
1.金正恩同志の革命活動ニュースを各国で報道
2.金正日同志回顧委員会がアンゴラで結成
3.敬愛する金正恩同志の特使がロシア連邦を訪問
17日
1.敬愛する金正恩同志の特使として崔龍海委員がロシアへ向け出発
2.金正恩同志の労作をネパール新聞が掲載
3.金正日追慕イラン・イスラム教連合団委員会がテヘランで結成
とこのような順序となっており、海外メディアが金正恩の「労作」を紹介したというニュースよりも先に報道している。
今回ロシアを訪問するのは、「金桂官第1外務次官、朝鮮人民軍の努光鉄副総参謀長、朝鮮労働党中央委員会の李永哲副部長、対外経済省の李光根次官」であり、金正恩の特使に加え、外務、人民軍、労働党、経済とワンセットそろっている。
「朝鮮中央通信」、「김정은동지의 특사 로씨야련방 방문을 위하여 출발」(日本語訳)、http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this
ロシアと米欧の間でウクライナ問題が発生してから、ロシアは急速に北朝鮮に再接近しているようだという記事は書いたが、公式的にこれほど大きなミッションを受け入れるのは金正恩体制発足以来初めてである。ロシアの対米欧関係で北朝鮮カードを有効に使うという目論見と、北朝鮮の中国への依存度を低下させようという目論見が一致したのであろう。羅先シリーズにも書いたと思うが、羅先港の埠頭の中では、ロシアが建設中の埠頭が最も新しく、動きが活発であった。
金正恩は、依然として海外訪問はできていない。本来であれば、中国を初訪問地として選択すべきところなのであろうが、その中国訪問が実現していない。北朝鮮は中国への働きかけは続けているのであろうが、中国側の事情で受け入れていないのであろう。中国としては、国レベルでの北朝鮮との関係を強化しなくても、地域レベル、東北三省と北朝鮮との経済関係だけで、北朝鮮の安定は取りあえず維持できるとみているのであろう。エボラウィルス遮断を理由中朝国境を10月末に閉じた北朝鮮が、その後、国境を明けたかどうかは確認していないが、エボラ予防と中国マネーの流入のバランスを考えると、長期間の国境閉鎖は北朝鮮にとって決して最善の選択とはいえない。
今回の訪朝で、年内の金正恩のロシア訪問が決まれば、これまで乏しかった彼の外交成果を出し、新年を迎えることができる。もちろん、ロシアを訪問しただけでは足りないので、経済的な協力をロシアから取り付ける、例えば、パイプラインを通してロシアから天然ガスや重油の供給を受ける取り決めなどができれば、これは経済的には大きな成果となる。もちろん、ロシアも国際的に核問題を抱えている北朝鮮とどうつきあうのか、ウクライナ問題とのバランスの中で微妙な選択が必要となってくるであろう。
北朝鮮は、こうした国際関係の微妙なバランスの中での駆け引きには非常に長けた国なので、今回もそれができるのかどうか。特に、お父さんの時代までできていたこの「わざ」を金正恩時代にもできるのか。崔龍海の同行者である金桂官はお父さんの時代からの外交官なので、交渉という意味では彼が活躍するのであろう。
それにしても、最近、崔龍海の株が上がっているような気がしてならない。黄炳瑞と人民軍総政治局長を交代した後、少し影が薄れたような時期もあったが、映像を見ている限り、黄炳瑞以上に金正恩との近さが強調されているような感じがしてならない。人民軍総政治局長の職から外して、忠誠心を高めさせたということなのかどうかは分からないが、黄炳瑞と崔龍海をお互いに牽制させ、第二の張成沢が出てこないようにしようということなのかもしれない。
訪ロ前に平壌空港に見送りに来た黄炳瑞とにこやかな感じで握手をする崔龍海。

Source: KCTV, 2014/11/17放送
特別機の前で記念撮影をする崔龍海一行。

Source: KCTV, 2014/11/17放送
金正恩専用機かは不明であるが、機種が同じで尾翼に人共旗が描かれているところからすると、「専用機」が貸し出されたのかもしれない。

<追記>
18日の「20時報道」は、「特使一行が17日にモスクワに到着した」と伝えた。時間については明らかにしていないので、韓国側の報道にあるように、一行が乗った飛行機が故障で平壌に引き返し、出発が遅れたのかどうかは分からない。空港には、「ロシア外務省関係者や在露北朝鮮大使か出迎えに来た」とのことである。ロシア側の報道もざっと調べてみたが、一行のその後の行動についてはまだ報じられていない。