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    「<朝鮮記録映画>母なる党の懐(1)-我々の父-」:「学習帳」、李忠道、金正恩の手紙、金正恩ポロシャツ姿 (2014年6月10日 「朝鮮中央TV」)

    6月6日の「第68回朝鮮少年団創立記念日」を前に6月4日に「朝鮮中央TV」が「<朝鮮記録映画>母なる党の懐(1)-我々の父-」と題する番組を放送した。放送当日も他事をやりながらこの番組は見ていたのだが、使われる映像のほとんどが既に見たものだったので「新しく出た朝鮮記録映画」ということに気付かなかった。しかし、昨日(6月10日)にもこの番組は再放送されており、韓国統一部のデータを調べたところ「6月4日の再放送」と書かれており、10日放送分を初めから見直すことにした。

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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    上に書いたとおり、これまで紹介された動画が多いのであるが、おもしろい部分をキャプチャーして紹介していく。

    「元帥様」が「国家の重大事である後代教育事業に投資を惜しんではいけない」と「新しい教科書と学用品も準備して下さった」というナレーションとともに紹介される教科書と学用品。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    左のピンク色のものは「学習帳」である。日本の小学校・中学校でも学習帳が使われているが、その由来はどこまで遡るのであろうか。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    日本で学習帳といえば「ジャポニカ学習帳」が有名である。この学習帳を作っているのは「ショウワノート株式会社」という会社なのだが、この会社のHPを見ても学習帳の由来については書かれていない。「学習帳」自体は今では普通名詞なので(しかし、未確認)、それが北朝鮮で使われていても不思議ではないが、日本の植民地統治下でも存在したのであろうか。ちなみに、「ジャポニカ学習帳」は、1970年に発売されたという。

    ショウワノート株式会社HP、http://www.showa-note.co.jp/company/business/

    過去記事でも金正恩が飛行士夫婦の子供も名付け親になったと紹介したが、この番組ではその子も登場させながら、そのいきさつをより詳しく説明している。

    金正恩が名付け親になった李忠道(チュンド)という赤ちゃん。ナレーションでは触れていないが、歩行器は「党からの恩情に満ちた贈り物」なのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    金正恩に名付け親になってくれと頼む母親(人民軍飛行士)。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    「第1回飛行士大会」で名前を発表する金正恩。「代を継いで忠誠の情一途に進めという意味で忠道と命名しよう」と。子供の名前が本当に「忠道」なのかどうかは未確認であるが(「中央通信」などの中国語版に書いてあるのかもしれない)、意味からすればこの漢字が当てはまりそうである。おもしろいのは、北朝鮮で、少なくとも公式的には漢字を全廃しているにもかかわらず、「충정의 한길만 가라 (忠情の一つの道だけ行け)」(括弧内は上記ナレーションの直訳)という言葉から「忠道」に繋がる点である。「忠」はよいとしても、「길」が「道(도)」に繋がるのは漢字を介さずに「길も도もミチのことである」という教え方をしているのであろうか。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    金正恩に感謝をする夫婦。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    この種の逸話は事前に設定されているものなのか、それとも本当にその場の雰囲気で女性飛行士が頼んでしまったことなのかは興味深い部分である。お爺さんの時代からこの種の逸話はあるので、朝鮮人民が機会があればこういうことを気軽に頼んでも良いと思っているのか、それともそんなことは恐れ多くて出来ないのだが「特別許可」をもらってやっているのか。

    それとの関連で、朝鮮人民は「元帥様」にたくさんの手紙を送っているようである。番組では「元帥様」が「人民が差し上げる多くの手紙の中でも、子供が送る手紙をまず見て下さり、愛と情を込めて返信を必ず送って下さりました」と言っている。これもおもしろい話で、「返信を必ず」であるならば「特別許可」された人たちだけが送っていることになり、誰もが気軽に送っているのであれば、いくら「元帥様」でも時間的に全てに返信を出すことなど不可能である。

    「元帥様」に手紙を書く子供。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    上の子供にかは不明であるが、金正恩の返信。「立派に育ちなさい。未来の主人公になりなさい。金正恩 2012.2.9」
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    それでも、たくさん返信はしているようである。ゴーストライターがいるのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    「元帥様」が子供病院を視察した際の動画におもしろいカットがあった。右端の軍人がカメラで撮影しているのは「元帥様」ではなく、夫人の方である。多数のカメラマンが正面にいるにもかかわらず、軍人が敢えて夫人を撮影しているのが奇妙である。軍人がカメラを持っているのは、このカットだけではないが。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    「徹夜をして全国の育児院、愛育院、初等及び中等学校の実態を確認する敬愛する元帥様」とナレーション。左に写っている白いもほは、冷蔵庫か金庫のように見える。金正恩の執務室にある金庫だとすると、さぞ重要な書類が入っているのであろう。しかし、そんなものを見せてしまっても良いのだろうか。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    そこで金正恩が「責任秘書同志」に送ったとされる手紙。よく見ると下の方は、加筆したり修正したりしてある。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    「喜びと幸せに溢れる園児の写真を見ると、本当に疲れても革命を最後までやり遂げなければならないという覚悟と新たな力が涌いてくる」と「元帥様」。ポロシャツ姿の「元帥様」は初公開だと思うが、お爺さんもお父さんもポロシャツで登場したこはなかったはずだ。襟を立てているのかはよく分からないが、立てているとすれば、ファッションに精通しているということになる。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    そして、幹部に送った手紙。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    「松島園国際青年団野営所」での誕生日会と思われるカット。後ろの壁には朝鮮語で「誕生日を祝賀します」、つまり日本語の「誕生日おめでとう」という言葉が書かれており、下には英語で「HAPPY BIRTHDAY TO YOU!」と書いてある。ロッドマンが金正恩にハッピーバースデーの歌を歌った記事に書いたかもしれないが、北朝鮮でも「誕生日おめでとう」という表現は韓国と変わらないようだ。しかし、英語でも書いてあるところがいかにも「国際青年団野営所」らしい。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    モランボン楽団が歌う「この世に羨むものはない」が流れる中、お爺さん、
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    お父さん、
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    そして、「元帥様」が登場する。「私たちの父である金正恩元帥様。私たちの家は党の懐。代々偉大な太陽を高く頂き、全国に子供たちの幸福な笑い声、喜びの歌声が・・・」
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

    「世代と世代を繋ぎ、限りなく響き渡ります」というナレーションと共に金ヨジョンを登場させる。「世代と世代を繋ぎ」とは金敬姫から金ヨジョンへということなのだろうか。お父さんの時代は終わったか ら金敬姫も終わり、今度は自分の妹の金ヨジョンということの暗示なのかもしれない。
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    Source: KCTV, 2014/06/10放送

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    子供報道強化週間

    いつもお世話になります。
    第68回朝鮮少年団創立記念日の金正恩訪問は労働新聞でも大きく扱われていましたね。
    旧共産圏では6月1日を「子供の日」に定めているところが多いですが、その例に漏れず北朝鮮でも2日を子供の日と定めていることもあってか、先週は「子供報道強化週間」だったらしく、中央TVでも子供が多く出てきます。6日は珍しく朝から放送していて、映画「少年近衛隊」をはじめ、一日中子供づくしでした。

    朝鮮少年団は軍のエリートの子弟にエリート教育をする幼年学校みたいですが、その充実ぶりには驚かされます。
    先日のキル・ヨンジョ飛行士の息子もここの出身なのでしょうか?
    「少年兵にかかる国際条約」により日本の自衛隊でも生徒隊(高校に準じる自衛隊の学校)が近年廃止されましたが、この国では旧日本軍の幼年学校的なものがまだ存在していて、軍の中核をなしているあたり、組織としての人民軍の強固さを感じます。

    この国は子供の教育費にどれくらいの予算をつぎ込んでいるのか気になるところです。

    大会でリ・ジュナも言っていましたが、いったいこの人はいつ寝ているのだろうというくらい精力的でフットワークの軽い元帥様は、まるで選挙期間中の日本の政治家のように連日あちこちを視察していますが、執務は徹夜してやっているのでしょうか?


    最近の報道で個人的に面白かったのは、農村での田植えの様子です。
    元帥様が田植えで忙しい農民の為に、生活用品の販売員を派遣してくれたり、農民が集まって漫才やら歌やら芸を披露して爆笑する様子が報道的には珍しかったと思います。

    No title

    保育とりわけ親がいないこどもへの愛情や
    幼稚園や小学校教育への「配慮」は,恐らく
    本気での取り組みだろうと思われます.
    ただ,この画面に出ている学習帳は,現在の
    学習帳とあまりデザイン的にはさほど違い
    がないなあと思いました.
    「学習帳」は日本では昭和40年代ぐらいに
    大ヒットしているわけですが,名詞としての
    学習帳という言葉はすでに昭和2年ごろには
    出ています.国内の特定の地域の学校で
    積極的に進められた生活綴り方運動との関連
    で,こどもが学習帳に日々の生活を綴る過程
    で用いられているはずです.もしかしたら,
    大正時代の終わりにも,用語として定着して
    いるのかもしれません.ですので,1910年代
    からの植民地時代,朝鮮半島でも普通の用語と
    して使われていたようです.ただ,どちらかと
    いうと「放学册」という休み期間の学習帳として
    の意味で使われたことが多かったようでもあります.

    Re: 子供報道強化週間

    コメントありがとうございます。「国際児童節」と「少年団創設記念日」との関連でたくさんの子供関連行事があり、その報道や特集が多いですね。「朝鮮中央TV」は、記念日には9時から放送をしており、ちなみに昨年の同日も9時からの放送でした。昨年の6月6日も金正恩のキノコ工場指導を伝える報道に続き、「父なる首領様、子供たちと一緒におられ」という「朝鮮記録映画」を放送していました。

    朝鮮少年団ですが、入団条件が今一つ良く分かりません。平壌に限らず全国各地で「入団式」をやっているので、平壌のエリートだけではないのですが、やはり「成分」の悪い親の子供は入団できないのでしょうね。キル・ヨンジョ飛行士の子供は間違いなく少年団出身だと思います。

    北朝鮮ですが、「万景台革命学院」のようなところでは、軍事教育に力を入れているのでしょうね。北朝鮮も「子供権利条約」を批准しているので、同条約が規定している「15歳未満の者を自国の軍隊に採用することを差し控える」ことが求められるのでしょうが、軍事訓練を行う組織が「軍隊」ではなく、「学校」ということになればすり抜けることは可能なのでしょう。ただし、北朝鮮映画を見ていても、アフリカで見られるような幼い兵士は出てこないので、ある程度の年齢にならないと前戦での戦闘には参加させなかったのではないでしょうか。「後方事業」には動員されたのでしょうが。

    国家予算に占める教育費ですが、北朝鮮レベルのGDPの国の中では突出して高いのではないかと思います(もちろん、実数は分かりません)。教育が思想教育であるという側面はもちろんありますが、韓国同様、儒教の国ですから教育を重視しているはずです。特に近年、教育を通じて科学技術を発展させるということを盛んに言っていますから、ますます教育のプライオリティーは高まっているのだと思います。それが、12年制義務教育実施ではないでしょうか。

    確かに、「元帥様」のフットワークは軽いですね。金正日と違い移動に航空機を使うようになったので、ますますフットワークが軽くなっているのではないかと思います。「徹夜」は実際にはしていないと思いますが、彼の年齢であれば夜更かしは得意なはずです(私も若い頃そうでした)。一方、早起きは苦手かもしれませんが。

    農村でやっているのは「経済宣伝活動」ですね。よく調べはいないのですが、金日成か金正日が「経済宣伝活動」について言及したのか始めた記念日が先月か今月にあったのではないかと思います。関連する「朝鮮記録映画」を放送していたのですが、まともに見ていません。漫才とか手品をやっていますが、朝鮮人民にとっては、大切な娯楽のようです。

    > いつもお世話になります。
    > 第68回朝鮮少年団創立記念日の金正恩訪問は労働新聞でも大きく扱われていましたね。
    > 旧共産圏では6月1日を「子供の日」に定めているところが多いですが、その例に漏れず北朝鮮でも2日を子供の日と定めていることもあってか、先週は「子供報道強化週間」だったらしく、中央TVでも子供が多く出てきます。6日は珍しく朝から放送していて、映画「少年近衛隊」をはじめ、一日中子供づくしでした。
    >
    > 朝鮮少年団は軍のエリートの子弟にエリート教育をする幼年学校みたいですが、その充実ぶりには驚かされます。
    > 先日のキル・ヨンジョ飛行士の息子もここの出身なのでしょうか?
    > 「少年兵にかかる国際条約」により日本の自衛隊でも生徒隊(高校に準じる自衛隊の学校)が近年廃止されましたが、この国では旧日本軍の幼年学校的なものがまだ存在していて、軍の中核をなしているあたり、組織としての人民軍の強固さを感じます。
    >
    > この国は子供の教育費にどれくらいの予算をつぎ込んでいるのか気になるところです。
    >
    > 大会でリ・ジュナも言っていましたが、いったいこの人はいつ寝ているのだろうというくらい精力的でフットワークの軽い元帥様は、まるで選挙期間中の日本の政治家のように連日あちこちを視察していますが、執務は徹夜してやっているのでしょうか?
    >
    >
    > 最近の報道で個人的に面白かったのは、農村での田植えの様子です。
    > 元帥様が田植えで忙しい農民の為に、生活用品の販売員を派遣してくれたり、農民が集まって漫才やら歌やら芸を披露して爆笑する様子が報道的には珍しかったと思います。

    学習帳

    コメントありがとうございます。別の方へのコメントにも書きましたが、教育には熱を注いでいるのだと思います。

    「学習帳」ですが、そんなに昔からあるのですか。であるならば、植民地統治下の朝鮮半島にも入っているはずですね。表紙のデザインはそんなに変わっていませんか。紙質などはどうなったのでしょうね。

    > 保育とりわけ親がいないこどもへの愛情や
    > 幼稚園や小学校教育への「配慮」は,恐らく
    > 本気での取り組みだろうと思われます.
    > ただ,この画面に出ている学習帳は,現在の
    > 学習帳とあまりデザイン的にはさほど違い
    > がないなあと思いました.
    > 「学習帳」は日本では昭和40年代ぐらいに
    > 大ヒットしているわけですが,名詞としての
    > 学習帳という言葉はすでに昭和2年ごろには
    > 出ています.国内の特定の地域の学校で
    > 積極的に進められた生活綴り方運動との関連
    > で,こどもが学習帳に日々の生活を綴る過程
    > で用いられているはずです.もしかしたら,
    > 大正時代の終わりにも,用語として定着して
    > いるのかもしれません.ですので,1910年代
    > からの植民地時代,朝鮮半島でも普通の用語と
    > して使われていたようです.ただ,どちらかと
    > いうと「放学册」という休み期間の学習帳として
    > の意味で使われたことが多かったようでもあります.
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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