中国の北朝鮮産石炭輸入一時停止は輸入割当量に達したから:中国外交部報道官 (2017年2月21日 「中国外交部」
21日に行われた中国外交部の定例記者会見で、中国の北朝鮮産石炭輸入一時停止措置に関する質問が出され、報道官が答弁した。
報道官は、「安保理決議2321は、2016年12月と2017年の北朝鮮からの石炭輸出に制限を加えている」と前置きした上で、「中国の関連部門の統計によると、中国による北朝鮮からの石炭輸入は概ね決議で設定された制限に達した。したがって、今年末まで石炭輸入を中止する公告を出した。・・・これは、中国が北朝鮮の核問題に対する責任ある姿勢と安保理決議を誠実に履行していることを示している」と述べている。
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<追記>
「中国による北朝鮮からの石炭輸入は概ね決議で設定された制限に達した」と訳したが、「達するものと推計された」訳した方が適切だった。こうしておけば、以下に書いた、「現時点では達していないが、このままのペースで輸入を続けると超過する」という意味で整合する。
****************
もし、報道官の発言通りであれば、2ヶ月にも満たない間に、中国は2017年割当量輸入したことになる。
Ministry of Foreign Affairs of the PRC, Foreign Ministry Spokesperson Geng Shuang's Regular Press Conference on February 21, 2017, http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/t1440264.shtml
数日前まで、各国から報告された数値が出ていなかった国連関連ページに、数値が出ていた。
2016年12月 2,001,634.429トン (総割当量の100%)
2017年1月 1,441,985.6 (総割当量の19.22647%) 報告国数 1 (中国と思われる)
2017年2月18日までにほぼ同量の石炭を中国が輸入したとしても、総割当量の40%にしか満たない。国連のページには金額が記載されていないので、金額ベースで400,870,018ドルを超過した可能性はあるが、いくらなんでも石炭の国際取引価格がそこまで急騰しているとは思えない。だとすると、中国外交部の報道官が言っている「概ね達した」というのは、安保理決議の割当総量ではなく、中国政府が予定していた輸入総量の可能性がある。
そうでなければ、このペースで輸入を続けると、5月には重量ベースで総割当量に達してしまうので、ここで一度輸入を「一時中止」し、しばらく後に残りの割当量を確認しつつ、輸入を再開するということなのかもしれない。
いずれにせよ、安保理決議を誠実に履行しているという姿勢を国際社会、特に米国に示しつつ、北朝鮮に当面の圧力を加える中国のこのやり方は上手い。
UNSC Subsidiary Organs, Procurement of DPRK coal by Member States, https://www.un.org/sc/suborg/en/sanctions/1718/procurement-of-dprk-coal-by-member-states
<追記2>
いつも、私が中国語の訳文で困っているとき、タイムリーに訳文を教えて頂く方からコメントを頂戴した。中国語は感じなので、眺めていれば、何となく意味は分かるものの、やはり正確な意味はきちんとご存じの方でなければ理解できない。本当に有難い。
その方のご指摘で気付いたのだが、中国外交部報道官は、「量と額」と前置きしておきながら、「額では」と言っている。ここは、見落としていたが、中国の推計では「金額的に安保理割当総額に近づいている」ということのようだ。
しかして、そんな額になっているのであろうか。上の安保理機関のHPを見ると、2016年12月分に関しては金額が明示されているが、2107年1月分に関しては金額が記されていない。そこで、2016年21月分を参考に1トン当たりの金額を出してみると、約91ドルになる。国際石炭取引価格を見ると、2016年9月辺りから急騰し始め、11月には100ドルを超えている。12月には若干落ちてはいるものの、依然として90ドル台にある。こうしたことからすると、12月分を91ドルと計算しているのは妥当である。申告書には総量と金額を記入するようになっているので、2016年12月分については、中国当局が国際取引価格を反映させて申告していることになる。
そして、2017年1月の総輸入量に1トン=91ドルを乗じてみると、輸入金額は131220635ドルとなり、2017年割当額の約33%となる。2月半ばまで石炭輸入を続けたとしても、多くても45~46%ぐらいであろうか。国際取引価格が、2017年初旬に2倍に跳ね上がっていれば、当年度の割当額を充足することになるが、さすがにそれはないのではないだろうか。
だとすると、中国が「金額的に」としている点については、依然として疑問が残る。
世界経済のネタ帳、石炭価格の推移、http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pcoalau.html
報道官は、「安保理決議2321は、2016年12月と2017年の北朝鮮からの石炭輸出に制限を加えている」と前置きした上で、「中国の関連部門の統計によると、中国による北朝鮮からの石炭輸入は概ね決議で設定された制限に達した。したがって、今年末まで石炭輸入を中止する公告を出した。・・・これは、中国が北朝鮮の核問題に対する責任ある姿勢と安保理決議を誠実に履行していることを示している」と述べている。
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<追記>
「中国による北朝鮮からの石炭輸入は概ね決議で設定された制限に達した」と訳したが、「達するものと推計された」訳した方が適切だった。こうしておけば、以下に書いた、「現時点では達していないが、このままのペースで輸入を続けると超過する」という意味で整合する。
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もし、報道官の発言通りであれば、2ヶ月にも満たない間に、中国は2017年割当量輸入したことになる。
Ministry of Foreign Affairs of the PRC, Foreign Ministry Spokesperson Geng Shuang's Regular Press Conference on February 21, 2017, http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/t1440264.shtml
数日前まで、各国から報告された数値が出ていなかった国連関連ページに、数値が出ていた。
2016年12月 2,001,634.429トン (総割当量の100%)
2017年1月 1,441,985.6 (総割当量の19.22647%) 報告国数 1 (中国と思われる)
2017年2月18日までにほぼ同量の石炭を中国が輸入したとしても、総割当量の40%にしか満たない。国連のページには金額が記載されていないので、金額ベースで400,870,018ドルを超過した可能性はあるが、いくらなんでも石炭の国際取引価格がそこまで急騰しているとは思えない。だとすると、中国外交部の報道官が言っている「概ね達した」というのは、安保理決議の割当総量ではなく、中国政府が予定していた輸入総量の可能性がある。
そうでなければ、このペースで輸入を続けると、5月には重量ベースで総割当量に達してしまうので、ここで一度輸入を「一時中止」し、しばらく後に残りの割当量を確認しつつ、輸入を再開するということなのかもしれない。
いずれにせよ、安保理決議を誠実に履行しているという姿勢を国際社会、特に米国に示しつつ、北朝鮮に当面の圧力を加える中国のこのやり方は上手い。
UNSC Subsidiary Organs, Procurement of DPRK coal by Member States, https://www.un.org/sc/suborg/en/sanctions/1718/procurement-of-dprk-coal-by-member-states
<追記2>
いつも、私が中国語の訳文で困っているとき、タイムリーに訳文を教えて頂く方からコメントを頂戴した。中国語は感じなので、眺めていれば、何となく意味は分かるものの、やはり正確な意味はきちんとご存じの方でなければ理解できない。本当に有難い。
その方のご指摘で気付いたのだが、中国外交部報道官は、「量と額」と前置きしておきながら、「額では」と言っている。ここは、見落としていたが、中国の推計では「金額的に安保理割当総額に近づいている」ということのようだ。
しかして、そんな額になっているのであろうか。上の安保理機関のHPを見ると、2016年12月分に関しては金額が明示されているが、2107年1月分に関しては金額が記されていない。そこで、2016年21月分を参考に1トン当たりの金額を出してみると、約91ドルになる。国際石炭取引価格を見ると、2016年9月辺りから急騰し始め、11月には100ドルを超えている。12月には若干落ちてはいるものの、依然として90ドル台にある。こうしたことからすると、12月分を91ドルと計算しているのは妥当である。申告書には総量と金額を記入するようになっているので、2016年12月分については、中国当局が国際取引価格を反映させて申告していることになる。
そして、2017年1月の総輸入量に1トン=91ドルを乗じてみると、輸入金額は131220635ドルとなり、2017年割当額の約33%となる。2月半ばまで石炭輸入を続けたとしても、多くても45~46%ぐらいであろうか。国際取引価格が、2017年初旬に2倍に跳ね上がっていれば、当年度の割当額を充足することになるが、さすがにそれはないのではないだろうか。
だとすると、中国が「金額的に」としている点については、依然として疑問が残る。
世界経済のネタ帳、石炭価格の推移、http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pcoalau.html