「カード式積算電力計と電気節約」:北朝鮮で世帯別電力計導入、電気料制度 (2016年3月6日 「朝鮮中央TV」)
15日の「朝鮮中央TV」を見ていたら、「科学技術常識」というシリーズ番組で、「カード式積算電力計と電気節約」を放送していた。韓国・統一部DBで調べたところ、初回放送は2016年3月6日にあった。

Source: KCTV, 2015/03/06
北朝鮮における一般世帯に対する電力管理については、過去記事の中で「青少年映画」に出てきた場面を使いながら紹介したことがある。
http://dprknow.blog.fc2.com/blog-entry-755.html
この映画の中では、アパートに住んでいる主婦が「ヒューズが切れたのかしら。また分組のブレーカーが上がったみたいよ」と言っているように、電力は「分祖」単位で監理されており、世帯別ではないようだ。
この「科学技術常識」番組では、この「カード式積算電力計」のメリットを「電力消費の科学性を保障し、多くの電気を節約できるようにする」と紹介している。
電力計の形態は、「青少年映画」の中に出てくるものと類似しているが、ボタンの位置や表示が異なっている。製造しているのは、やはり「平壌電気器具合営会社」のように見える。

Source: KCTV, 2015/03/06
電力は、「生産量=消費量」であることが望ましいとした上で、生産量よりも消費量が多い場合とその反対のケースの問題点を紹介している。
電力消費量がが生産量よりも多い場合は周波数が低下し、「周波数が10Hzほど低下したときに電力損失量は、生産量の30~40%にもなる」と紹介している。

Source: KCTV, 2015/03/06
電力消費が生産を上回ると周波数が低下するという仕組みは考えたことがなかったが、中部電力の資料を読んでいたら同じことが書かれていた。一定レベル以上の周波数低下があると発電機が自動停止し、停電に至るそうである。

Source: 中部電力、「貯められない電気を安定的に供給するために」 p.7、http://ba.chuden.jp/assets/pdf/vol2_closeup.pdf
一方、消費量が生産量より少ないと「電力生産よりも消費量が少なくても、電力系統に否定的な影響を与える」と紹介している。これは、「電力利用の効果性が落ちるので、よくありません」とナレーションでも言っているように、発電に使われる一次エネルギーが無駄になるということを意味しているのであろう。

Source: KCTV, 2015/03/06
そして「電力生産と消費の均衡を維持することは、生産された電気をより効果的に使いながら、より多くの電気を節約するための重要な方法となります」と続けている。
そのために、「カード式積算電力計」が活躍するという。まず、「カード式積算電力計」の「瞬時過負荷遮断機能」が役立つと説明する。日本では世帯毎にブレーカーが設置されており、契約電力量を超過すればブレーカーが落ちる仕組みになっており、日本で考えれば普通のことである。拙宅は機械式のブレーカーであるが、電子ブレーカーなるものもあり、北朝鮮の「カード式積算電力計」とは逆に、一時的に契約電力を上回っても使えるという代物のようである。

Source: KCTV, 2015/03/06
ただ、「カード式積算電力計」は拙宅の機械式ブレーカーよりも利口で、消費電力が一定以下(日本では契約電力)になれば、自動的に電力供給が再開する仕組みになっている。
ナレーションは、「過去、一部の世帯で容量が大きい電気製品を一度に使用して、電力系統に莫大な損失を与えた現象を防げます」と言っている。
そして最後に、「カード式積算電力計が広く導入されれば、各家庭で電気をどの時間にどれほど使ったのかにより、電気使用料金をそれぞれ支払うようになります」とし、「そうなれば、各家庭では、電気を最も多く消費する18時から23時の間は、必要な電気製品だけを使うようになり、その他の電気製品は、この時間を除いた他の時間に使うようになります」と言っている。このナレーションは興味深い。
つまり、これまでは「青少年映画」に出てきたように、アパート全体に電力計が1つしかなかったので、各世帯、電力料金は均等に支払っており、たくさん使った者勝ちの状況があったが、世帯別に「カード式積算電力計」を取り付けることで、使った分だけ支払うという日本では当たり前の電気料金制度が導入されるだけではなく、「どの時間にどれほど使ったのかにより」と言っているので、深夜電力料金のような料金体系が導入されるのかもしれない。そして、カードに付いてるICチップに全てのデータが記録され、検針員は、ICチップのデータを回収しながら電気料金を請求するというシステムになるのかもしれない。

Source: KCTV, 2015/03/06
北朝鮮では、世界的な潮流となっているLED照明など省電力製品の導入を進めて省電力化をしているものの、同時に経済成長で家電製品の数が増え、一方で電力供給量を思うように増やせないというジレンマに陥っているのだと思う。そのような状況の中で、需給のバランスをシステムと経済制度両面から追求していこうという取り組みだと思う。
集団主義的な電力消費から個人主義的な電力消費への流れも、市場経済化進行の表れなのかもしれない。

Source: KCTV, 2015/03/06
北朝鮮における一般世帯に対する電力管理については、過去記事の中で「青少年映画」に出てきた場面を使いながら紹介したことがある。
http://dprknow.blog.fc2.com/blog-entry-755.html
この映画の中では、アパートに住んでいる主婦が「ヒューズが切れたのかしら。また分組のブレーカーが上がったみたいよ」と言っているように、電力は「分祖」単位で監理されており、世帯別ではないようだ。
この「科学技術常識」番組では、この「カード式積算電力計」のメリットを「電力消費の科学性を保障し、多くの電気を節約できるようにする」と紹介している。
電力計の形態は、「青少年映画」の中に出てくるものと類似しているが、ボタンの位置や表示が異なっている。製造しているのは、やはり「平壌電気器具合営会社」のように見える。

Source: KCTV, 2015/03/06
電力は、「生産量=消費量」であることが望ましいとした上で、生産量よりも消費量が多い場合とその反対のケースの問題点を紹介している。
電力消費量がが生産量よりも多い場合は周波数が低下し、「周波数が10Hzほど低下したときに電力損失量は、生産量の30~40%にもなる」と紹介している。

Source: KCTV, 2015/03/06
電力消費が生産を上回ると周波数が低下するという仕組みは考えたことがなかったが、中部電力の資料を読んでいたら同じことが書かれていた。一定レベル以上の周波数低下があると発電機が自動停止し、停電に至るそうである。

Source: 中部電力、「貯められない電気を安定的に供給するために」 p.7、http://ba.chuden.jp/assets/pdf/vol2_closeup.pdf
一方、消費量が生産量より少ないと「電力生産よりも消費量が少なくても、電力系統に否定的な影響を与える」と紹介している。これは、「電力利用の効果性が落ちるので、よくありません」とナレーションでも言っているように、発電に使われる一次エネルギーが無駄になるということを意味しているのであろう。

Source: KCTV, 2015/03/06
そして「電力生産と消費の均衡を維持することは、生産された電気をより効果的に使いながら、より多くの電気を節約するための重要な方法となります」と続けている。
そのために、「カード式積算電力計」が活躍するという。まず、「カード式積算電力計」の「瞬時過負荷遮断機能」が役立つと説明する。日本では世帯毎にブレーカーが設置されており、契約電力量を超過すればブレーカーが落ちる仕組みになっており、日本で考えれば普通のことである。拙宅は機械式のブレーカーであるが、電子ブレーカーなるものもあり、北朝鮮の「カード式積算電力計」とは逆に、一時的に契約電力を上回っても使えるという代物のようである。

Source: KCTV, 2015/03/06
ただ、「カード式積算電力計」は拙宅の機械式ブレーカーよりも利口で、消費電力が一定以下(日本では契約電力)になれば、自動的に電力供給が再開する仕組みになっている。
ナレーションは、「過去、一部の世帯で容量が大きい電気製品を一度に使用して、電力系統に莫大な損失を与えた現象を防げます」と言っている。
そして最後に、「カード式積算電力計が広く導入されれば、各家庭で電気をどの時間にどれほど使ったのかにより、電気使用料金をそれぞれ支払うようになります」とし、「そうなれば、各家庭では、電気を最も多く消費する18時から23時の間は、必要な電気製品だけを使うようになり、その他の電気製品は、この時間を除いた他の時間に使うようになります」と言っている。このナレーションは興味深い。
つまり、これまでは「青少年映画」に出てきたように、アパート全体に電力計が1つしかなかったので、各世帯、電力料金は均等に支払っており、たくさん使った者勝ちの状況があったが、世帯別に「カード式積算電力計」を取り付けることで、使った分だけ支払うという日本では当たり前の電気料金制度が導入されるだけではなく、「どの時間にどれほど使ったのかにより」と言っているので、深夜電力料金のような料金体系が導入されるのかもしれない。そして、カードに付いてるICチップに全てのデータが記録され、検針員は、ICチップのデータを回収しながら電気料金を請求するというシステムになるのかもしれない。

Source: KCTV, 2015/03/06
北朝鮮では、世界的な潮流となっているLED照明など省電力製品の導入を進めて省電力化をしているものの、同時に経済成長で家電製品の数が増え、一方で電力供給量を思うように増やせないというジレンマに陥っているのだと思う。そのような状況の中で、需給のバランスをシステムと経済制度両面から追求していこうという取り組みだと思う。
集団主義的な電力消費から個人主義的な電力消費への流れも、市場経済化進行の表れなのかもしれない。