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    「朝鮮労働党中央委員会第7回大会を前に全党員に70日戦闘を展開することを訴える」:再び「70日戦闘」、「<朝鮮記録映画>偉大な転換の1970年代」、2009年の「150日戦闘」も核・ミサイルの後、中米安保理制裁案合意 (2016年2月24日 「朝鮮中央TV」)

    24日、「朝鮮中央TV」と「朝鮮中央通信」で「労働党中央委員会」が朝鮮人民に送った「手紙」が公開された。その中で、「70日戦闘」という用語が使われおり、以下のような記事を書いたところ、貴重なコメントを頂いた。コメントへのお返事も兼ねて、もう少しこの「手紙」と「70日戦闘」について書いておくことにする。

    ************24日夜、書いた部分**************
    24日、「朝鮮中央TV」で、「70日戦闘」というスローガンを盛んに使っているが、いつから出た「戦闘」なのだろうか。「第7回党大会」が開催される5月1日まで70日だからなのだろうか(そもそも、「第7回党大会」が5月1日だったかは良く覚えていない)。『労働新聞』を検索しても出てこないので、今日からのスローガンなのだろう。金正恩時代の「XX日戦闘」はこれが初めてだと思うが。

    「朝鮮労働党中央委員会党第7回大会を前にし、全党員に70日戦闘を展開することを訴える」
    「조선로동당 중앙위원회 당 제7차대회를 앞두고 전체 당원들에게 70일전투를 벌릴것을 호소」というのがあった。
    *****************************************

    「70日戦闘」であるが、コメントでも頂いているように70年代に金正日の主導下で行われた増産運動である。昨日、「手紙」を紹介する番組の直後に「偉大な転換の1970年代」という「朝鮮記録映画」が放送されている。韓国統一部DBで確認すると、この映画は、毎年数回ずつ放送されており、2015年は2回であるが、2014年には6回も放送されている。これまでは、飛ばしてみていただけであったが、今回、しっかりと視聴してみたところ、いくつか興味深いことがあった。

    この「記録映画」は、金正日後継発表後、1970年代、彼の経済部門における成果を紹介するものである。

    「偉大な転換の1970年代」
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    「将軍様を党中央委員会政治委員会委員として推戴し、首領様の最も近くに頂いたことは、白頭の革命偉業が千万代に継承される世の中で最大の幸運でした」とナレーション。親子の写真がここで並ぶことになる。
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    1972年4月、万寿台に初めての金日成銅像が金正日により建立される。その後、74年に開城市など、次々と「首領様」の銅像が建立される。「元帥様」も継承後、直ぐにやった事業が「将軍様」の銅像建立であったが、改めて父さんと同じことをしたことが分かる。
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    また、「偉大な首領様の革命史跡地も続けざまに建立されました」と、この種の石碑が金正日により建立され始めたことを紹介している。これまでも気になっていたのだが、韓国メディアの日本語配信を見ると「史跡」ではなく「事跡」という漢字を使っている。日本メディアがそれをそのまま引用していたかどうかは良く覚えていないが、念のためuriminzokkiri「朝鮮語大辞典」で確認してみたところ、やはり「史跡」であった。韓国メディア(全てかどうかは未確認)が「事跡」という漢字を使っているのは、単なるエラーなのか、或いは意図的に「現地指導」の価値を落とすために使用しているのかは分からないが、拙ブログで使ってきた「史跡」は取りあえず正しいようである。
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    この「革命史跡標識碑」も「元帥様」に新たに建立されている。

    銅像や「標識碑」は、父親への忠誠心を示し孝行息子ぶりを表現するためのものであるということはよくいわれているが、加えて、お父さんやお祖父さんを「永世」させることで、自らの権威を正統化する目的もあるのではないかと思う。「錦繍山太陽宮殿」に「生前そのままの姿で」安置されている、お父さんもお祖父さんもその意味では銅像に通じる。やはり、お祖父さんとお父さんが「永遠に我々と共にいらっしゃ」ってこそ、現世の「元帥様」の権威が保たれるという構造がこの映画を見ていると分かる。しかし、その事業を始めたのは「元帥様」ではなく、「将軍様」であったわけであるが、そうしたアイディアを出したのは「首領様」だったのか「将軍様」だったのか。また、独創的なアイディアだったのか、何かを参考にしたのか、この辺りを知りたいところである。

    しかし、「元帥様」が未だにできていないのは「平壌のお母様(高英姫)」を「偉人」に持ち上げる事業である。幹部向けの非公開映画(といわれているもの)が流出したものはYouTubeで見たことがあるが、あれを一般人民が見るのはいつになるのだろうか。「記録映画」では、「70年代は」とナレーションしているだけなので、具体的に何年のことなのかは分からないが、「将軍様」は、金剛山の岩に「偉大な金日成同志の最も忠実な戦士であられた金正淑女史の革命偉勲で・・・」 などと刻んでいる。
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    そして、「1974年末に我々の将軍様が陣頭に立たれた70日戦闘は、創造と建設のにおける特出した領導力が世界を感嘆させた歴史的な大戦闘でした」とナレーション。「全党が動員され、70日戦闘を力強く展開しよう 党中央委員会及び政務院高級幹部と道党委員会高級秘書の協議会でした演説 1974年10月9日」と書かれている。
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    「<70日戦闘速度>強行軍戦闘指揮部」
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    そんな中、「経済扇動隊」が活躍する。「思想発動の偉大な武器である経済扇動。どの国の用語辞典にもない経済扇動は、将軍様の叡智から生まれ、70日戦闘を勝利へと後押しする我々式の思想戦でした」とナレーション。下は、「経済宣伝隊」が工場で「宣伝活動」をする様子。
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    「70日戦闘期間に国家の工業生産額は1.7倍に増加したので、この勝利は、人々の思想に火を付け、経済建設で奇跡をもたらした、実に将軍様の偉大な領導の高貴な結実でした」とナレーション。「元帥様」は、「70日戦闘」で「人々の思想に火を付け」、「工業生産額」を伸ばせるのかどうか。
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    Source: KCTV, 2016/02/24

    以上のように、コメントでもご指摘頂いたとおり、「70日戦闘」は金正日時代に行われたスローガンの再現である。その他の「XX日戦闘」についてであるが、「100日戦闘」は北朝鮮メディアで検索した限り見つけることができなかった。「150日戦闘」は、uriminzokkiriに「<150日戦闘>は強盛大国に向けた信号弾」という2009年7月20日付けの「訪北記」が掲載されていることが確認できる。記事が掲載され日かどうかは不明であるが、その頃が「戦闘が始まってから75日過ぎた折り返し地点」と書かれているので、「150日戦闘」は、5月初旬に開始されたということであろう。この辺り、当時の『労働新聞』でもあれば、確認できると思う。

    uriminzokkiri, 「《150일전투》는 강성대국 향한 신호탄」、http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=hana&no=50&pn=22

    今回の「70日戦闘」の中身であるが、「手紙」にも書いてはあるが、「朝鮮中央TV」のスローガン番組を見ると分かりやすく要約してある。追って、このスローガン番組に字幕を付けて、YouTubeにアップロードしておいた。
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    Source: YouTube, dprknow channel, https://youtu.be/VjaPt3mJLFM

    この記事を書いていたら、「安保理制裁決議で米中合意」というニュースが飛び込んできた。決議内容はまだ発表されていないが、中国メディアが「北朝鮮との貿易を50%削減する」としているという話もあるので、それが事実であるとすれば、「70日戦闘」で経済成果を出すのも厳しいものになっていく可能性がある。しかし、2009年も核・ミサイルをやっている年なので、今年の「70日戦闘」もそれと関連している可能性がある。というのも、「70日戦闘」の前提として「米国と追従勢力による・・・圧殺」を挙げており、「追従勢力」に中国が加われば、「圧殺」圧力がさらに強まるのは間違いない。そんな中、思想を引き締めて「70日戦闘」で乗り切りを考えているのかもしれない。

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    No title

    お世話になります。

    先日の公演でモランボン楽団が「高く翻れ我らが党旗」の2016年バージョンとでもいう曲を演奏していて、ロケット打ち上げ記念の曲としてはいささかそぐわないと思っていましたが、もともと党大会記念公演で演奏する予定だったのではないでしょうか?

    労働党創建70周年だった去年10月10日の100日前にも100日戦闘の指示が出ていたということですので初めてではないと思うのですが、厳密に100日ではないということらしいので、声明が出たのが今日だとしても今日から厳密に70日後が党大会の日ではないようです。
    韓国は5月7日と見ているようですが。

    昔は計画ノルマの短縮的な意味で〇〇日戦闘とか言っていたように思いますが、今日的な意味では、期日までに宣伝できる成果を出すための突貫的努力というより、単なるお祭り準備期間のように思えます。
    子供を含む人民がマスゲームやパレードの練習でつらい日々を送ることでしょう。

    自分の権力を誇示する為なのか、とにかく元帥様はお祭りばかりやっているように思えます。

    No title

    仰るとおり,恐らく24日から使われ始めた「70日戦闘」だと思います。あくまでも,今日(こんにち)の70日戦闘の意味合いが強いのでしょうね。このあたりも金日成時代とかぶります。74年10月~12月すなわち金正日が金日成の後継者となった直後に行った方法と同じ感じなのでしょうね。
    個人的には,当時の経済的戦闘&三大革命小組のカラーとの違い,つまり「金正恩色」がどのような分野で打ち出されているか,大変興味を持っています。
    先日のモランボン楽団公演で,一風違ったアレンジの曲「높이 날려라 우리의 당기」がありました。古くからある曲なのですが,「こんにちの」70日戦闘を暗示したように今となっては思えます。2012年10月1日付けの労働新聞でも 「《높이 날려라 우리의 당기》, 이 노래 힘차게 부르며 총공격전을 다그쳐나가자」とありますが,やはり70年代の動きと重なりますね。

    No title

    すみません,追伸のようになってしまいますが,金正恩第一書記になってからは確かに初めての「XX日戦闘」だと思いますが,既に2009年5月14日からの「150日戦闘」は,金正恩が実質的に進めたものと言われていますので,そうなると「練習」→「本番,手腕発揮」のような感じでしょうか…。

    70日戦闘

    コメントありがとうございます。ご指摘の歌ですが、ロケット打ち上げよりも党大会で歌った方が良かった歌ではありますね。5月に2016新バージョン第2弾でも出してくれることに期待しましょう。

    記事にも書きましたが、「100日戦闘」に関する北朝鮮メディアの記事は見つけることができませんでした。しかし、10月10日で100日というのは、10X10のようでガセ臭いというか北朝鮮らしいというか微妙な感じがしますね。

    70日というのは、アバウトな数なのでしょうが、やはり「戦闘」が終わった当たりで党大会を開催するのではないかと思います。24日開始だとすると、5月3日が70日目になりますね(数え方が間違っていなければ)。

    性格ですが、盛んに「70日戦闘」を現場の労働者が口にする番組を放送していますから、「第7回党大会に向け」をバックアップするようなスローガンなのかもしれませんね。一応、「光明星-4」号祭りも一段落したので、次は「70日戦闘」で進んでいくのではないかと思います。

    「朝鮮記録映画」のことも少し記事に書きましたが、「短期間にノルマ達成=計画期間に増産」という図式ではないのかと思います。スローガン番組でもそれらしきことは言っているのですが、各部門で少しずつプレッシャーが違うところがおもしろいです。

    > お世話になります。
    >
    > 先日の公演でモランボン楽団が「高く翻れ我らが党旗」の2016年バージョンとでもいう曲を演奏していて、ロケット打ち上げ記念の曲としてはいささかそぐわないと思っていましたが、もともと党大会記念公演で演奏する予定だったのではないでしょうか?
    >
    > 労働党創建70周年だった去年10月10日の100日前にも100日戦闘の指示が出ていたということですので初めてではないと思うのですが、厳密に100日ではないということらしいので、声明が出たのが今日だとしても今日から厳密に70日後が党大会の日ではないようです。
    > 韓国は5月7日と見ているようですが。
    >
    > 昔は計画ノルマの短縮的な意味で〇〇日戦闘とか言っていたように思いますが、今日的な意味では、期日までに宣伝できる成果を出すための突貫的努力というより、単なるお祭り準備期間のように思えます。
    > 子供を含む人民がマスゲームやパレードの練習でつらい日々を送ることでしょう。
    >
    > 自分の権力を誇示する為なのか、とにかく元帥様はお祭りばかりやっているように思えます。

    党旗

    コメントありがとうございます。「70日戦闘」については、記事と他の方への返信のとおりですから、そちらをご参照頂ければ幸いです。

    「高くたなびけ我々の党旗」は、「総攻撃戦」の歌なのですね。「記録映画」を見ていると、「速度戦の歌が登場した」と言っています。しばしば耳にする曲なのですが、正確なタイトルが分かりません。「速度戦」で検索してみたのですが、出てきませんでした。ご存じでしたらご教授下さい。

    > 仰るとおり,恐らく24日から使われ始めた「70日戦闘」だと思います。あくまでも,今日(こんにち)の70日戦闘の意味合いが強いのでしょうね。このあたりも金日成時代とかぶります。74年10月~12月すなわち金正日が金日成の後継者となった直後に行った方法と同じ感じなのでしょうね。
    > 個人的には,当時の経済的戦闘&三大革命小組のカラーとの違い,つまり「金正恩色」がどのような分野で打ち出されているか,大変興味を持っています。
    > 先日のモランボン楽団公演で,一風違ったアレンジの曲「높이 날려라 우리의 당기」がありました。古くからある曲なのですが,「こんにちの」70日戦闘を暗示したように今となっては思えます。2012年10月1日付けの労働新聞でも 「《높이 날려라 우리의 당기》, 이 노래 힘차게 부르며 총공격전을 다그쳐나가자」とありますが,やはり70年代の動きと重なりますね。

    核・ミサイル

    こちらもありがとうございます。「150日戦闘」、記事にも書きましたようにuriminzokkiriに出ていました。金正恩の「練習」だったのかどうかは分かりませんが、核・ミサイルをやった年というところが興味深いです。

    > すみません,追伸のようになってしまいますが,金正恩第一書記になってからは確かに初めての「XX日戦闘」だと思いますが,既に2009年5月14日からの「150日戦闘」は,金正恩が実質的に進めたものと言われていますので,そうなると「練習」→「本番,手腕発揮」のような感じでしょうか…。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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