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    モランボン楽団風の接待員楽団:ソヌ・ヒャンヒの話し、世界名曲 (2015年9月22日)

    中国の先生にサプライズで延吉の北朝鮮レストランに連れて行っていただいた。普通の中国レストランに行くと思い、カメラを持参しなかった。レストランでの撮影は可であったにもかかわらず、撮影できなかったのは大変悔やまれる。ということで、申し訳ないのだが、ここでは文字だけでの紹介となってしまう。

    実は、8月にも延吉を訪れ、例によって、北朝鮮系の柳京ホテルに宿泊した。ここでもショーがあり、時間の関係で1度だけ見た。8月ということもあり、韓国からの白頭山観光目的の旅行者で超満員。申し訳ないのだが、あまりよい雰囲気ではなかった。また、韓国人旅行者がいたからかどうかは分からないが、歌う歌は「啓蒙期歌謡」系ばかり。革命的な「新しく出た歌」など出る雰囲気すらなかった。

    ところが、今回行ったレストランは凄かった。私が到着したときには既に「公演」は始まっていたのだが、なんと電子バイオリンを持った奏者が、ソヌ・ヒャンヒよろしくブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」を独奏していた。動きから何から、明らかに「モランボン楽団」のコピー。それが終わったら、なんと白い軍服風の衣装を着た3人組が出てきた。ここまでコピーをするのかと驚いた。そして、歌ったのが「パルコルム」。北朝鮮レストランはそこそこ行っているが、「パルコルム」は初めて聞いた。軍服風の衣装を着ていない「俳優」も合流し、大合唱。席で一緒に歌っていると、「俳優」とチラチラ目が合う。変な奴がいると思ったのであろう。数曲入り、最後は「金日成将軍の歌」。これもレストランでは初めて聞いた。感動の坩堝の中、一緒に歌っていると、また「俳優たち(複数)」がチラチラと見ている。確かに、喜んで歌っているオッサンは私だけ。

    9月になると白頭山観光がなくなるので、レストランにいたのは中国人(ほとんどが朝鮮族)であった。朝鮮族のグループは、「社長」の誕生パーティをやっていたようだ。ここからまた、おもしろいことが起こった。一人の朝鮮族のオッサンが「サクソフォーンを自分が演奏したい」と。演奏するために支払った費用はいくらかは知らないが、結局演奏を始めた(ちなみに、このレストランで「俳優」とデュエットするには1曲100元。50元ぐらいなら記念にデュエットも悪くないが、100元(約2000円)は高すぎる)。

    この朝鮮族オッサン、「接待員楽団」のギター、ベース、ドラムをバックにサックスで演奏を始めた。普通に聞いて、とても上手く感じた(私にはその程度しか評価能力はない)。演奏した曲は、カーペンターズなどの西側の曲ばかり。オッサンのサックス演奏も上手かったのだが、なんと「接待員楽団」がバックでしっかりとオッサンのサックスに合わせている。オッサンとの打ち合わせは演奏曲目だけのようだったが、西側の曲を次から次へとオッサンのサックスに合わせて演奏してしまうのには驚いた。どこで覚えたのであろうか。曲目をメモすれば良かったと後悔している。もちろん、「社長」の誕生日に贈る「ハッピーバースデー」も含まれていた。

    さて、演奏が終わり、会場が少し静かになったので、後ろに立ってビールをついでくれていた「俳優」から「接待員」に変身したドンムに話しかけた。このレストランの特徴なのか、料理をたくさん注文したからなのかは分からないが、このドンム、フレンドリーに話しに応じてくれた(後者であるとすれば、資本主義をしっかりと学習しているということになる)。

    以下、ドンムとの話の一部。

    川口:「柳京ホテルの楽団と水準が違いますね。驚きました」
    ドンム:「そんなことはありません。柳京の俳優も上手ですよ」
    川口:「バイオリンを使って演奏するのは初めて見ましたよ。他の公演はギター中心です」
    ドンム:「そうですか。バイオリンを使うところもありますよ」
    川口:「バイオリンを弾いていた俳優はソヌ・ヒャンヒみたいですね」
    ドンム:「・・・」(この、・・・がちょっと不思議な空気だったので)
    川口:「最近、モランボン楽団の公演がありましたね」
    ドンム:「そうですか?」
    川口:「元帥様がキューバ代表団と一緒に観覧された公演です」
    ドンム:「それなら報道で見ました」(どうやらあの「朝鮮記録映画」は「革命活動」を紹介するもので、我々のように「モランボン楽団」にはあまり注目していなかったのかもしれない。)
    川口:「私のように朝鮮音楽を愛する(拙ブログでコメントを下さる方のような)日本人の間で話題になっているのですが、あの公演にソヌ・ヒャンヒは出ていましたか?」
    ドンム:「出ていなかったと思います」

    考えすぎなのかもしれないが、ソヌ・ヒャンヒという名前への微妙な反応と「出ていなかった」という答えが気になるところである。このドンム、中国2年目なので、本国事情はテレビなどを通じてしか知らないのかもしれないが、どうなのだろうか。

    西側の曲をサックスのオッサンと演奏したことについて、

    川口:「資本主義国の退廃的な曲も演奏するのですね」
    ドンム:「世界名曲ですよ」

    例によって、「世界名曲」という説明であったが、カーペンターズは、さすがに本国ではまだ「世界名曲リスト」に入っていないのではないだろうか。もちろん、お金を払えば「世界名曲」として何でも演奏するというのも、資本主義を学習した結果ではある。

    以上は会話の一部であるが、このドンムとは色々と「イルカ館」の話や「馬息嶺スキー場」の話しもした。こうした部分については、いずれまたどこかで紹介することにする。

    <追記>
    失念したレストランの名前を中国の先生に教えていただいた。「千年白雪会館」、北朝鮮の「白雪会社」が中国企業と合弁で運営しているレストランということである。ご招待いただいたので幾ら払ったのかは分からないが、多分、時間を合わせて行けば(19時少し前)、冷麺とビール(このレストランには、延吉の「氷川ビール」がある。偽物は絶対ないので、これがお勧め)で「公演」は十分に楽しめると思う。白頭山観光の韓国人がいない時期(寒くなってから)行くのがお勧め。

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    No title

    このおじさんですが,ソヌヒャンヒを知らないというわけはないと思います。ソヌヒャンヒに触れるのは,やはりタブーなのでしょうか。どうも最近のモランボンが読めません。

    接待員ドンムです

    いえいえ、オジサンとは話していません。ソヌ・ヒャンヒについて話をしたのは、北朝鮮から来ている「接待員」の女性です。ソヌ・ヒャンヒはもちろん知っていましたが(「出ていなかった」と言っているのですから)、反応が微妙でした。

    > このおじさんですが,ソヌヒャンヒを知らないというわけはないと思います。ソヌヒャンヒに触れるのは,やはりタブーなのでしょうか。どうも最近のモランボンが読めません。
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
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    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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